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1stのリウマ  作者: 真咲静
神様達との接点が出来ました。
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23.ロドの禁呪(4)

ロドの禁呪編終わりぃ〜。

長かった…

ロドの警備隊詰所には、そうそうたる顔触れが揃っていた。

数字持ちが4人、内2人が1st、更に四元賢者がいる。

まるでこれから魔王と対峙するかのような顔触れ。

警備隊の隊長、副隊長は、あまりに荘厳な面子に踊る心臓がいつ口から飛び出すかと言う程に緊張を強いられていた。


「リウマさん、気にしないで下さいね。弟子に引導を渡すのも師匠の役目です。」


哀しげなディアータの背中をポンポンと叩き、アサムが竜真に首を振った。

竜真は頷くと会議の進行を促した。


「リリィシュを殺した今、ラウラーラの居場所は分からなくなってしまいました。」


明日にはまた1人の遺体が増える。

その前にラウラーラを倒すことが必要だ。


「いや、来る途中、ディアータ様とも話したのだが、不老不死はともかく、他2つは魔法陣の中心にいる必要がある。」


理知的な顔立ちのクリシュナが、不敵に笑い、竜真に安心を伝える。


「つまり、彼女は円の中心になる場所に居を構えている。ということですね。しかし、円の中心地は…建物がないのだが…」


ブロスはここ数日、ラウラーラと思われるローブを着た者を探していた。

町のあちらこちらと歩いたが、円の中心は路地になっていて、人が住んでることはない。

しばしの無言が場を支配した。

その時、警備隊の隊長がハッとして立ち上がった。


「…………っ!地下に遺蹟が。確か、この辺りに小部屋が何個かありました。出入口はここの地下牢にもありますので、そちらからお入りください。」


「ありがとう。隊長さん。警備隊とメノーラとニャルマーは住民の避難。賢者様方は陣の外側から別の陣を張り、導士はそれの補助、僕は…やっぱり、ラウラーラを殺してくるのは僕しかいないのか。」


方針は決まった。

隊長が話している最中に辺りを竜真が見回すと、皆頷いた。

ラウラーラの居場所さえわかっていれば、やることは決まっているのだ。


「リウマ、ラウラーラを殺した上で、私達の魔法陣の中心で最後の楔を打って欲しいのです。」


苦笑いした竜真に、ディアータは面倒ついでですがと最重要事項を告げる。


「楔ですか?」


「あなたの能力でしか出来ないのです。リウマになら分かるでしょう。」


四元素全てに属性がある竜真にしか出来ないことと告げるディアータに、竜真は重要局面がほぼ全て自分に関わるのだと、やはり苦笑いした。


「…方法はどのように」


「私達からの呪文を1つにまとめて中心地に打ち込むと言ったところでしょうか。詳しいことは秘伝なので、後程。」


やはり、この場では教えてくれないらしいと、竜真はあえて分かっていた感想を思い浮かべ、会議が終わりを告げる。


「賢者様方の魔法陣の配置が出来次第に、作戦決行となります。」

「では、住民達を陣の外へ避難させ始めます。」


「では、我々もさっさと仕上げてしまうかのぉ。」


竜真が立ち上がり、メノーラ、ニャルマーが退出するとアサムが笑いながら立ち上がった。



***



ラウラーラの目の前に、自分を主と慕ってきた少女の魔物よりも美しい存在がいた。

黒髪の美しい、新たな少女は可憐な笑みを浮かべて言った。


「リリィシュが素敵なことをしてるって教えてくれたから、来てみたの。」


ラウラーラはリリィシュよりも上位種が来たと笑みを浮かべた。

ブロスはリリィシュの手に掛かっただろう。

そして目の前にはリリィシュよりも上位種がいる。

儀式の成功がいとも簡単に思い描け、高笑いすら出てきそうだ。


「なれば、見ていておくれ。後1人の血を浴びねばならぬのよ。邪魔者さえ来なければ、赤い月ごとにしばらく儀式を続けたものを…念のために今日、禁呪を発動させるつもりよ。」


女は忌々しげにつぶやくも成功を確信し、口元には笑みが浮かんでいる。


「…後1人しか少女達は生きていないのだね。」


自分達が動いたことで、もう暫く生きていられたはずの少女達は死んでしまった。

目が焼けるように熱くなる。

こんなにも怒りに目が眩むのは、いつ以来だろうか。花咲くような笑みと可憐な声はすでに消え、上位種の少女の口から漏れた声は、ぎょっとする程に低くかった。


「ラウラーラ=ブリグスタ、貴様を禁呪使用の罪により、魔術士ギルドの四元賢者の名において断罪する。」


「な…」


防護呪文を唱える隙もなかった。

ラウラーラの命は、上位種だと思った少女が一瞬動いたかと思えたときには、既に潰えた。

ラウラーラには初動すら見えることなく、顔は驚きに崩れたまま、あまりに簡単に消え去ったのだった。

その生への執着とは反対に、あまりにも簡単に…




***




ジャラハラに通信させ、ディアータに説明を受けながら、竜真は禁呪の封印を行い、それから、生き残った者達を探すため、部屋から出た。

エンカウントする魔物を倒し、移動した先には、血の匂いと死の気配に満ちた部屋があり、中に入ると巨大な檻が2つ。檻には1人の少女と、また別の檻には2人の少年が居た。

それとは別に死体をまさぐる1人の男。

その男を一瞬にして切ると、竜真はラウラーラの部屋から持ち出した檻の鍵を使い、檻を開けた。

少年達はボロボロながら服を着ていたが、少女は裸だった。


「…助けが遅くなって済まない。」


その凄惨な現場に、竜真は生き残った3人に詫びた。


「あんたが来なかったら、俺らは死んでた。ただそれだけだ。…生き残りが居ただけでも良かったと思いな。俺はシン、横に居るのはロイ、あっちの女の子はバレイラだ。」


その場で最年長だと思われる少年は虚ろな目のまま答えた。


竜真は着ているワンピースを脱いで、少女の体を隠す為に着せた。


「短いズボンを穿いたのは正解だったな。」


「ふっ…美人な姉ちゃんだと思ったら、美人な兄ちゃんだったか。傑作だな…」


虚ろに笑うシンに、竜真は困ったような顔をする。


「お兄さんは美人なお兄さん過ぎて、顔を出して世間様を歩けないだよ。」


「奴隷商人に真っ先に売られる顔してるのも損だよな。」


竜真は目視で3人の肉体的なダメージを確認した。


「そうだね。でも、僕に目を付けた奴らなら、確実に返り討ちにしたよ。組織も散々壊滅させてきたけど、本当にうじゃうじゃいるんだよね。」


竜真は虚ろな視線で身動きしないバレイラを抱き上げると、少年達に声をかけた。


「シン、ここを出る。」


「…あぁ。―おい、ロイ。出るぞ。」


「…う…あ…ぁあ…」


「チッ…薬が効いてきたな。ロイ、しっかりしろ!生き残れたんだ。堕ちるな。」


「シン、どうした?」


竜真はバレイラを抱いたまま、シンの傍に行く。

シンはロイの肩に手を当てて揺すっていた。


「ロイが堕ちる―せっかく生き残れたのに…」


希望に訪れた絶望にシンは虚ろな目から悲しみを溢れさせていた。


「見せて、さっき薬がどうとか言ってたけど…」


竜真はシンにバレイラを預けて場所を譲らせた。


「サヤナヤの葉とブールの根を煮込んだ薬だとよ。リリィシュとかいうのが、俺らを堕とすために作ったとか言ってた。―くそ、ちっこい奴からロイみたいになっていった。最後には魔物になっちまって…」


「…ディアータ様、サヤナヤの葉とブールの根の薬に対する薬はありませんか?」


《………直ぐに戻ってきて下さい。薬を調剤します。》


「シン、バレイラを連れてくるんだ。俺はロイを運ぶ。」


筋肉質で細身の竜真が、やはり細身であるとしても、同じぐらいの身長のロイを軽く持ち上げるのを見て、信じられないとシンが呟く。


「こんな顔でチビで細くても、僕は1stだ。これぐらい軽いものさ。」


バチっとウインクをシンに飛ばして、軽やかに走りだす。

途中、エンカウントしてくるものをやはり軽くいなしていく姿をシンは信じられないものを見る目で追い掛けたのだった。




***



事件から1ヶ月経ち、賢者達は帰り、ブロスらも国へ帰った。

ロイの看病をディアータから命じられた竜真とミグ、ニャルマーがロドに残っていた。


「本当に君ら、僕に着いて来る気かい?」


シンとロイとバレイラが頷く。

15歳のシン、13歳のロイ、ロイと同じく13歳のバレイラ。

ロイは命は助かったが、髪と瞳は黒く変質してしまい、惨劇を経験したからはバレイラは声を失った。

シンは飄々として、竜真に答えた。


「俺らは孤児だから、親は居ない。きっとあんたなら、この状況の俺らを見捨てないと思うんだ。」


「やなこと言うね。…しかたない。君らに生きるすべを教えてあげる。―大変な目にあっても、後悔しないでね。」


覆面越しに笑う竜真の顔はそれはそれは可愛らしかろうとミグは明後日の方向を向き、ニャルマーは弟子を取るのですねと大絶賛し、シンは少し早まったかと持ち前の危険察知能力を発揮させていた。


新キャラ3名追加です。


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