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1stのリウマ  作者: 真咲静
教育の旅が始まりました。
107/113

107.仕事は追いかけてくるもの

「で、リウマさんは何をしているの?」

「え? 何って書類仕事?」


 竜真が紙の束を捌きながら、後ろに佇む誰かに渡している。その誰かの手から次から次へと出ては消える人々の手に書類が渡っていく。

 夕飯を食べた後に、それぞれ寛いでいたのだが、竜真がいつの間にやら紙束を見ながら誰かに指示を出していた。竜真の側にいる人物がいつの間に一行に近づいていたのか、イナザはもちろん、三人にも分からなかった。

 そこでロイがたずねると、飄々と竜真は答えた。


「書類仕事?」

「そう。書類仕事。紅砂関係のね」

「いままでそんなことしてたの?」


 バレイラが首をかしげ、シンもたずねる。


「していたよ。ただ一人で見張りしている時とかだったから、皆気がつかなかったんだよね。今は皆で交替してたり、僕が一人で見張りすることないでしょ? そしたら、書類がたまっちゃってね。文字通り書類が追いかけてきたよ。はい。次……ん? あぁ! 彼は紅砂の事務担当アオイね」


 四人の視線が自分の後ろに集まったのをクスリと笑い、竜真は後ろで作業の指示を出しつつ、竜真の補佐をしている男を紹介した。

 肩甲骨当りまで伸びたまっすぐの髪を後ろに一つに結び、モノクルをした少し神経質そうな男だ。


「ご紹介にあずかりました。わたくし、紅砂のアオイと申します。お子様方、殿下。お初にお目にかかります。いつもアカイのどあほうがお世話になっております」


 四人の視線がどこまで本気で言っているのだろうかと竜真に視線を向けると、竜真は軽やかに笑い出した。


「大丈夫。全部本気で言ってるから」

「え?」

「わたくし、嘘が嫌いでしてね。この口から出ることは常に本当でございます」

「シン。驚きすぎ。ロイ、あまりコイツに興味もたないように。これでも三幹部の一人だよ。その内、シンの上司になるんじゃないかな」


 シンの紅砂入りはもう本決まりになっている。

 シンの顔が少し引き締まった。


「シン君。君の紅砂入り。楽しみにしていますよ。ではリウマ様。次の支部は学園になると思われます。ぜひとも一度お立ち寄りください」

「なるべく早めに支部に寄るようにするよ。書類に追いかけられるなんて勘弁だよ」


 竜真は最後の一部をアオイに渡すとアオイは一礼して森の闇に消えた。その見事な動きにお子様三人が釘付けになる。イナザは一人きょとんとしている。


「さて、そろそろ寝ようか。今日はシンとイナザだね」


 首を回して竜真は立ち上がった。バレイラとロイが竜真に従って、簡易テントに向かう。

 シンとイナザはそのまま、火の番をしながら一晩を過ごすのだった。


 ***


 イナザが王都を出てから二ヵ月半が過ぎた。

 旅はイナザを基準にして進み、明後日にはゼンディストにある魔術師ギルドの叡智の塔へと着くまでに近づいた。

 近場の町に入った一行は宿をとり、夕食をとる為に酒場へと向かっていた時だった。

 夕飯時だからか町中は帰宅する人、飲みに行く人などでそれなりに賑わっている。

 竜真には慣れた町であるのだが、竜真は首をかしげた。


「何かおかしい気がする」

「どうしたの?」

「ん? バレイラ。なんか、違和感があるんだよ」

「違和感ですか?」

「そう。違和感……シン。お願いがある。符丁は覚えてる?」

「覚えてます」

「学園に一足早く行って、紅砂の支部にこの町の情報を出すように伝えてくれる? 僕らは出店で適当に買って宿で食べよう」


 竜真の様子に四人に緊張感が走るが、顔だけはにこやかに楽しげに会話をしている。

 シンは頷くとその場から離れた。

 シンを除いた四人は近場の屋台へと近寄った。



 竜真の発言が実際のものとなるまで後数時間。





短いですが、投げます。

皆様。良いお年を!

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