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1stのリウマ  作者: 真咲静
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103/113

103.萎える

「は? もう捕まったの? 萎える。すっごく萎える」

 竜真は乗りに乗ったこのアドレナリン溢れる展開が急速に冷え込んだ気がした。

 部下、アオイからディアージャロウを拿捕したという報告が入ったのだ。

「まぁ、その他部下の殲滅もまだだし……ラウ、このまま表から商品の保護と手下共の殲滅をするよ。まったく、うちの奴らときたら、手順を皆おろそかにして――」

(それはリウマさんの部下だからじゃねぇ?)と心の中で呟いたリベラルラウである。

 なにせ竜真自身がこの(派手な襲撃)事態の発端なのだから、部下が色々と変でもおかしくはない。だが、「まぁ、最後に黒幕もいない物語はオチなしで、面白くないかもしれませんね」――俺としては面白かったですけど。

「はぁ、ラウに言われると切ないねー。じゃあ、皆様、気をつけて、殲滅行っちゃえ。商品は大事に保護。後は好きにして」

 あまりにも大雑把な指令であるが、リベラルラウの配下の間から二人の小柄な少年少女か出てきた。国王への使いをした二人である。

 リベラルラウはつい最近竜真の後ろに立っていた少年少女達だったと気がつく。

「はーい。いってきまぁーす」

「いってきまぁーす」

 両手に鎌を対に構えた二人はクスクスと笑いながら走り去る。

「ん。ラウ。すまない」

 自由な部下の様子になんとなく、つい口に出る。

「まぁ、うちには何の支障もないですから」

 ボス二人が足を止める中、その部下達は愉しそうに索敵しているのだった。



***



「で、あれだけ配下がうろうろしていても、依頼の探し人は僕が見つけてしまうわけだ。全く、それってなんて主人公ヒーロー補正なんだろうね」

 竜真が開けた隠し戸の奥には服を着ることを許されず、口をきけないように布を食まされ、自由を枷で封じられた少女四人。うち三人はヘルムート万屋に依頼されたお嬢様とその友人二人と特徴が合うが、後一人がわからない。

 姿を確認して一度扉を閉める。

 戸の手前の部屋は接待用か調教用か豪奢で巨大な寝台があり、寝台脇のフックや拘束具が更に部屋のいかがわしさを醸し出していた。

 竜真は寝台からシーツを剥ぎ取ると真ん中辺りに人の頭が一人分出る穴を等間隔に四つあけた。

「シーツは大きいし、四人の体を隠す分には大丈夫だよね」

 覆面外し、髪を茶に瞳を鳶色に変えてから「よし」と気合いを入れると竜真は戸を開け少女達の下へ向かう。

 少女達は入口の向かい側の壁に拘束されている。

「助けにきたよ」と、いつもより僅かに高い声で優しく声をかけた。

 四人はバレイラとロイの前に引き出され虐げられた後なので疲れ果てていて、ぐったりしていたのだが、見たことのない人物の登場に体を隠そうと身を捩るが、四人が四人、惚けたように竜真の顔を見つめた。

 少女達が自分の顔を夢中で見ている内に竜真はシーツを少女達の上にかけた。

「ごめんね。体を隠したいのは分かるけど、その腕の拘束具を壊したいから腕だけ伸ばしておいてね」と愛剣を引き抜くとそれぞれの腕の枷を取り払う。

「ここから頭出して四人一塊になるけど、皆に体公開するより良いでしょ」とシーツに空いた穴から頭を出すように指示を出した。

「さぁ、ここから出ようね。お家に帰ろう」

 竜真のその言葉にがちがちと体を震わせていた少女達が緊張を解いたのだった。


***


 商家の三人娘を送り届けギルドで報告を終えた竜真は最後の一人を送り届けるところだった。

 身元の紅砂の調査、ギルドの調査が結果が出る前に意外な人物から身元が明かされた。

「リオラナ嬢!? 」と服を着せてもらえた少女の名前をすっとんきょうな声でイナザが呼んだ。

 竜真を街中で見かけたものの、以前シンに咎められた記憶もあり、無視しようとしたのだが、竜真が連れている少女に驚き、つい声をあげてしまったのだった。

 その声に気がついた竜真はハッとまだ話しかけとはいけない期間だったと慌てて背を向けたイナザを捕まえた。

「殿下?」

 身元不詳の少女の正体は、イナザから放たれた一言で分かった。

「ベルツ侯爵令嬢がなぜリウマ殿と」

「――うん。なんでだろうね」

 そんな大物のご令嬢がなぜあんなところに居たんだろうねと竜真が覆面越しに頬をポリポリと引っ掻く。イナザはイナザでその組み合わせに不審一択の視線を竜真に向ける。

「お屋敷がどこにあるかわかる?」

「いや、知らん。だが、どこの誰だか名前が分かれば、リウマ殿の組織ですぐ判明するだろう」

「まあ、そうなんだろうけど。じゃあ、もう厳戒態勢解くからシンも合流してしまおうか。君はシンと合流でき次第、宿に行ってくれるかな。もうロイとバレイラも休んでいるはずだよ。それからベルツ侯爵の本邸の場所を調べて報告。」

 イナザに問うた結果、結局、送っていく場所が不明のため竜真は宿に戻ることを決めた。途中まではイナザに向かって言っていたが、最後の一言はどこか雑踏に消えていった。そして竜真は少女を促して竜真が王都で拠点にした宿へと向かった。

 竜真が去っていく後姿を見送って、イナザはシンとの合流地点へと急いだ。


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