101.双子の配下
竜真達から遅れて二日後のこと。王太子ザグナラルは連れてきた部下の一人を残してロベルの王都に帰還した。弟の処遇を父王に報告すると、王は息子がリウマを師に持ったことに複雑そうな面持ちでため息をもらす。これらのことは二人の胸に止めて第二王子は処罰されたと発表することにしようと決めた時だった。
「陛下と殿下にお手紙配達です」
国王ザグルブレムは椅子から立ち上がり、ザグナラルは剣に手をかけ振り向いた。
「何者!」
それはただそこにヘラヘラした笑顔で立っていた。
王城のしかも王の執務室と言う警備が厳しい場所の内に入り込んで、礼の形をとるでもなく、ただ立っていた。
「ボス……じゃないや、リウマ様からの伝言です。リウマ様お怒りでちょっと王国内にゴタゴタ起こすからヨロシクネだそうです。第二妃様の首が飛ぶかもしれないけど、その代わり国内の大掃除込みだから許してって言ってました。じゃあ伝えたから……そうそうコレ手紙ね」と国王と王子相手にあまりに軽い言い回しに手紙は投げつけると言う暴挙。手紙に王と王子二人の視線が手紙に向かった一瞬の隙に、その不審者は去っていった。
「……父上」
「何も言うな」そう述べた国王は口端だけを歪ませ、執務机の中に隠していた酒瓶を取り出す。
「と、言いたいところだが少し付き合え。たまには父と子と言う肩肘はらない付き合いもよかろう。……国王だろうが、飲まなければやってられんこともある」と、グラスも机の中から取り出して、酒をくみ、息子に差し出す。
親子共々何かに疲れたように視線を合わせて苦笑した。
***
「お仕事おーしまい」
王城の真ん中、一番高い塔の先端にそれらは居た。
「シーちゃんお帰り」
「クーちゃんただいま」
同じ顔した彼らは左右対称な同じ意匠の服を着て、ハイタッチしている。
「変態の密偵の動きは?」
「うんとね、変態さんの部下は今ね、居ないみたいなの。クーちゃん、どー思う?ボスに報告したほがいいかなぁー」
「したほーが良いとおもーよぉー」
「んー。いってくるねぇ。配達の件とアレの件もいってくるからぁ」
「ほーい」
城の天辺で軽いやり取りをしたのち、片割れはあっという間に姿を消した。
それを知る者は誰も居ない。
***
「ラウ、来てくれ」
竜真に呼ばれてリベラルラウが寄る。
「王様から許可貰ったから。そろそろ動くよ」
竜真の手元にある書状にはこの国の腐敗を制圧させるだけのネタがある。
言質を取ったとは言いがたいが、シロイから王へ当てた手紙の配達完了の報告も受けている。
「とりあえず、王様と王太子様に役人、騎士団内の掃除をさせるかな。僕らは……襲撃でもしようか?」
「あいつらのアジトは?」
そんな気軽に買い物に行くかのように軽く言わないで欲しいとリベラルラウは思いつつも、側で控えていたガイナックに準備をするように顎で促す。
「そうだねぇ。今なら六〇人ぐらいが居るかなぁ。とりあえずマッピングは終わってるからどこからでも攻め込めるよ。紅砂からは僕、アカイぐらいかな?後はそちらで」
「ちなみにその二人で戦闘力はどのぐらい見積もってる?」
「ざっと六〇人ぐらいだよ」
「変態だな。リウマさん達だけで仕事がおわっちまう」
「やだなぁ。奴と同類にしないでくれる?でもアカイ自体で冒険者ギルドで2ndはいけると思うし。人質云々はアカイにさっさと救出させるさ」
つまりは竜真だけがリベラルラウらとともに行動すると言うことらしい。
「君らにはひたすら陽動してほしい。僕がやりやすいように」
やりやすいが殺りやすいと聞こえたのは気のせいか。
ギルドの大首領ともすれば、人間の闇、汚い部分なんぞ精一杯見てきたはずだが、竜真の様子にリベラルラウは足が竦みそうなほど、恐怖を感じていた。