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1stのリウマ  作者: 真咲静
神様達との接点が出来ました。
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10.鬼のレッスン

鬼が居たようです。

「かなり出来てるね。」


正解で回答用紙がかなり埋まっていたのに、竜真はにんまりと笑い、奈美恵は力尽きて、机に突っ伏した。

竜真のやり方は飴と鞭、いや、鞭と鞭と飴だっだ。

先ずは発音と基礎言語が書かれた言語表を渡され、2日後にテストするからと笑顔で言い切った竜真。

テスト結果が悪かった1回目の後、目が笑っていない満面の笑みと言う、怖い表情の竜真の手から顔すれすれにナイフが飛んだ。


「次は正解率90%が合格範囲だからね。」


2回目テスト範囲分は1回目テスト範囲分に上乗せされると言う形で行われ、冒頭に戻る。


「じゃあ、基礎言語はだいたいになったから、応用問題…と行きたいが、マナーとダンスも覚えてもらいたいし…」


『お…鬼だ。』


うるうると涙ぐむ少女に対して、そこそこ出来の良い生徒にニヤつく美少女顔の男。


「当たり前でしょ、僕は10日間で君を令嬢にするつもりなんだから。はい、日本語使ったからペナルティね。この階の廊下を綺麗な歩行で20往復。はい行った!」


日本語を使うことを禁止して、使ったらペナルティを科せられ、奈美恵はひぃひぃ言わされていた。


「ほら、背筋伸ばして、頭の上の本を落とすなよ。顔は笑顔。」


ミグはそれを見ながら、自分の資料整理していた。


「笑顔、口角を上げて、少し目を細める。歯を見せすぎるな。何度も言わせるなよ。」


「はいぃぃぃぃぃ。」


普通の日本人はドレスなんて着慣れていない。

奈美恵も勿論着慣れていない上に笑顔付きの美しい歩行はまさに拷問だった。


「ミグさん助けてぇ。」


「無理だ。」「無駄だ。」


ミグは竜真の気配で無理だと言い、竜真はミグは止めはしないことを知っていて無駄だと言う。


「そんなぁ〜。」


「ほら、眉がハの字になってるぞ。これが終わったら、シグルド様とダンスレッスン。後5往復だ。」


ダンスレッスンと聞いて、ミグはシグルドの執務室に向かう。

教師として雇って3日しか経っていないが、シグルドは竜真の怖さを身に染みて知っていた。

何故ならば、奈美恵に完璧な令嬢としての仕草を求めるならば、シグルドも完璧を目指して当然という姿勢の竜真にダンスの下手さを知られてしまったのだ。

おかげで、シグルドは奈美恵がダンスレッスンする時には共に鬼の扱きを受ける羽目になったのだった。


「はい、終了。タナリーさん、奈美恵に湯浴みさせて、ダンスレッスンの練習着着させてきて下さい。」


「かしこまりました。」


ちょうど、近くを通りかかったメイドのタナリーを呼びつけ、奈美恵を任せると、自分も着替えるために、与えられた部屋へと向かった。



***




完璧な美少女がそこに居た。

着替えてレッスン場に来た奈美恵は煌めく少女を…美少女顔の男、竜真を見て固まった。


『うわぁ…』


「ペナルティ…」


「何も言ってません。」


竜真の桜色の艶めく唇から出てくる恐怖の単語が呟かれそうになると、奈美恵は怯えて青い顔を横に振った。

シグルドとミグも入ってきたが、竜真を見て、驚きに固まる。

黒く艶めく肩を過ぎるぐらいの髪。

神が生け贄を求めるのなら、まず真っ先に名指しされそうな美貌。

勝ち気に光る濡れた瞳からは有無を言わせない威厳がある。

煌びやかな衣装に王冠が頭にあれば、誰もが女王陛下と頭を下げていたに違いなかった。


「…おい、ミグ。何故、お前まで固まる。」


「いや…何故スカートを穿いているんだ?」


「決まっている。奈美恵に完璧さを求めるには足裁きは勿論、ドレスの裾裁きまでたたき込む。そのためには女役も必要だからだ。ミグ、身長差はありすぎるが、相手役になってくれ。シグルド様と奈美恵は壁まで下がって、所作を見て覚えて。とりあえず、同じことを2回繰り返してやるから、そしたら、お2方には実践していただきます。」


そこまで言うと、竜真は可憐な笑みを作る。

そこに居るもの全てが魅了されてしまう笑みはミグを再び固まらせた。


「ミグ、動け。」


ウドの大木と化したミグに向かい、可憐な笑顔なのにどことなく怒気が含まれていると言う複雑な表情になった竜真がナイフを取り出したところで、ミグが動きだした。


「まずは入場から、ほら、入り口に行くぞ。」


さっさと歩きだした竜真の後をミグは慌てて追った。



***



「はい、2回目終了です。次、シグルド様、奈美恵、入り口へ。」


「「はい」」

返事はしたものの、2人は体が動かない。

目の前で行われた、妖精の舞踏会が奇跡的に見れてしまったかのようなお手本に心底酔わされてしまっていた。


「動け!」


竜真の冷たい声に父義娘共々、体を震わせて、そそくさと移動したのだった。


「入ってきて、そう。1歩1歩を丁寧に、顔は笑顔。奈美恵、かなり良くなった。」


こうして、時に誉められながら、ナイフを投げられそうになりつつ、鬼の授業は進んでいった。




***


「はい、お疲れ様でした。汗を流したら夕食の時間です。」


既にこの家のタイムテーブルを把握している竜真の口から終了が出ると、シグルドと奈美恵はぐったりとその場に座り込んだ。


「シグルド様、完璧に変な癖は治りましたね。これからのレッスンへの付き合いは2日に1回でいいですよ。…奈美恵はもう少しで及第点。」


「ありがとうございます。」


爽やかな笑みを浮かべ、奈美恵は喜んだ。

滅多に誉めない先生からの及第点は近いと言う言葉は純粋に嬉しいようだった。


竜真さん…どこからナイフを出すのでしょうか?

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