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1stのリウマ  作者: 真咲静
彼は1stのリウマです。
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1.1stのリウマ

ほのぼのですが、残酷な表現があるので、ご注意下さい。(11/11/3:加筆修正)

 陽に焼けた肌に小麦色の髪を短く刈り上げた男が昼の店の片付けに手を動かしていると扉が開いた。

 

「酒を」

 

 紅色の所々解れたボロい一枚布で目元と口元以外の頭部の全てを覆い隠した男が入ってきて、カウンター越しに冒険者達が集まる店のオーナーに酒を頼んだ。

 その男は男としては平均より小さめの身長と深紅の長剣、覆面で名を知られている冒険者で、酒場兼宿屋を営むこの店を拠点にしていた。

 

「お帰り。リウマ、半年ぶりだな」

 

「師匠、ご無沙汰してます。今回はサナラン半島を巡ってきました」

 

「ブジュルムとバナハスはやっぱりまずいのか?」

 

 サナラン半島はバナハス王国の最西端にあり、サナラン半島にあるマケロ鉱山は大陸随一の良質な魔石の宝庫で、ブジュルム王国はサナラン半島を狙い、バナハスとブジュルムの国境はいつもきな臭い状態だった。

 

「……多分、次はブジュルム国王による大規模出兵でしょうね。僕にもギルドを通して依頼が何件か来てますが、僕は戦場で兵器扱いは嫌です」

 

「ギルド最高位になるのも面倒だな」

 

 この場合ギルドとは冒険者ギルドの略称で、数多居る冒険者達はこのギルドを介して仕事を得て、日銭を稼いでいた。冒険者達は、それぞれランク付けられ、下からE、D、C、B、A、3rd、2nd、1stとなり、3rdからは数字持ちと言われて、数字持ちは全体の1割、中でも1stは現在ニ名のみ在籍している。

 覆面の男は1stの冒険者だった。

 

「何をおっしゃる師匠殿」

 

 そしてこの店のオーナーは元3rdとして、そこそこ名の知れた剣士だった。

 

「馬鹿言え、その師匠をニ年で踏みつけて行った奴が」

 

「そう言う訳で、師匠。家の鍵」

 

「どんな訳だ。まぁ良い、しばらくはシュミカに居るんだろ。なら手伝え」

 

「わかりました。準備してきます」

 

 軽口のやりとりの後に覆面の男は店を出て、オーナーは口元に小さな笑みを浮かべた。

 

 ***

 

 久しぶりの我が家は少しも埃っぽくなく、師匠であるヨルが留守中に掃除をしていてくれていたことを証明していた。男は覆面を外すと、伸びた髪を束ね、装備を外して、着替えるた。

 

「切らないとまずいかな。でも面倒だし括っておこうか」

 

 ここに来てから黒みが増した漆黒の髪は、肩胛骨のあたりまで伸びていた。魔法で一般的に多い鳶色に変えた瞳を素に戻すと同じく漆黒の瞳。今年で二十五歳になるにもかかわらず、しみ皺のない色白の肌に桃色の唇。

 覆面の下から現れたのは形容しがたいほどに見事なまでに美少女顔だった。

 

 緋色のリウマこと三島竜真みしまりゅうまは大学ニ年、二十歳の時の合コン帰りにいきなり異世界に落とされた。

 元の世界でもただの童顔だった(周りから見ると美少女顔の童顔)が、この世界では際立った童顔になってしまった(美少女にはかわりない)。

 何が際立つかと言えば、その髪と瞳の色だった。

 

 まず黒とは魔物の色であり、人間には出現しない色。そのため、この世界に来て初めて出会った人間、3rdのヨルに討伐されかかったことが師匠のヨルとの出会いだった。

 ヨルに言われて顔を隠し、ヨルの冒険に付き合いギルドに所属し各地を回った。

 竜真のランクがAになった時、ヨルはこの街、シュミカに店を構え、冒険者を引退したのだった。

 以来、竜真もこの街を拠点にして、冒険者として行動していた。

 冒険者と言っても、採掘・採集・採取、護衛や戦闘、遺跡等の発掘、様々な仕事がある中で竜真はそのどれもをこなす1st。

 特に遺跡では罠の解除は頭目クラス、古代文字の解読は魔術士ギルドのマスタークラスの為、遺跡発掘の依頼が名指しで舞い込むことが多くあった。

 基本的には一人で活動する単独冒険者である竜真は冒険者ギルド以外にも盗賊ギルド、魔術士ギルドと複数に登録している上に登録しているギルド全てで高ランクの変り者である。

 シュミカの端に小さな1軒家を建て、冒険に出る以外は冒険で手に入れた品や知識を整理しているか、ヨルの店〈夜更けのアリア〉を手伝っていた。

 

 

 

 ***

 

 

 

 シュミカの街に竜真が帰ってきたのは昼過ぎで、夜更けのアリアに手伝いに着た時には、早めの夕食を取りに来た者達で、店内は騒がしくなり始めていた所だった。

 覆面を着けた竜真が入ってきた瞬間、場の空気は一瞬の間緊張したが、覆面の口元に浮かんだ笑みと、ヨルの「待っていた」の一言に空気は元に戻る。

 

「これ、向こうの金髪の魔術士がいるテーブルに、それから、こっちはインテリそうな剣士がいるテーブルな」

 

 有に三人前はある大皿がニつ竜真の前にさし出されるが、片手に一皿ずつ軽々持ち上げると、それぞれのテーブルに持っていく。

 

「リウマ、お前も腹ごしらえしておけ」

 

 カウンターまで戻ってきた竜真の前に五人前になる大量の料理が広がった。

 

「このまま食べずに地獄時間突入かと思った」

 

「お前より鬼じゃない」

 

 目の前の料理を手を合わせて、お辞儀してから食べる。

 久しぶりに食べるヨルの料理は、また生きて帰ってきたのだなと、いつも通り、竜真を感傷的にさせた。

 今回は特に後味の悪い事件があっただけに、竜真は生きていることが、いかに大切なことなのかを改めて心に染み入らせた。

 

「やっぱり師匠の料理が一番だね。……二番はマチルダの血塗れモルグかなぁ」

 

「リウマ、それは誉めてないぞ。一番はともかく、二番はゲテモノ専門店じゃないか」

 

 ヨルは丁寧ながら吸い込む様な勢いで、料理を食べている弟子の感想に待ったをかける。

 マチルダの血塗れモルグは、シュミカの夜更けのアリアと同じく、冒険者の宿兼酒場の店で、主人のモルグが作る恐ろしいまでの真っ赤なゲテモノ料理達で入店する客を限定させていた。

 入る客は限定しているが、ヨルの弟子のようにコアなファンが居るため、潰れることはない。

 竜真を連れての旅途中に、竜真がどんなリアクションが見れるかと一度連れて行った所、マチルダに着く度に血塗れモルグでご飯を食べる羽目になり、モルグの料理が苦手なヨルは自業自得ながら、辛い思いをした経験がある。

 

「一番はいいとして、二番は他にないのかよ」

 

 脱力したヨルは次の竜真の言葉にぎょっとして凍り漬けになった。

 

「サマンの忍び亭やカロランの喜劇の過激屋とか、モラムの三つ葉のカダ亭なんかもいいね。」

 

 どれをとっても、冒険者内で有名なゲテモノ専門店だった。

 この後、営業中にヨルが「自分の店はゲテモノ専門店ではないよな?」と、客に聞いて回ったのは、それだけダメージが大きかったからだった。

 

 

 

 ***

 

 

「ご苦労さん。それじゃあ、今回の話を聞かせろよ」

 

 夕食の混み時が終わり、大半の客が出ていくか、ニ階の客室に戻った後、竜真をカウンター席に座らせて酒を出す。

 

「……今回はね。久しぶりに嫌悪感がしたよ」

 

 酒を呷って、竜真は切り出した。

 

「サマラン半島を歩いてきたのは、伝えたよね。サマラン半島にはブジュルム側から入ったんだけど、そこにシヨンって言う小さな村があったんだ。そこにはある風習があって、慣習として胎児を守り神と偽る人型の魔物に食わせていたんだ。ゾッとするよ」

 

「……」

 

 ヨルの目が見開かれた。

 魔物にもニ種類いる。獣型と人型。

 割合的には冒険者の数字持ちと人型は似たようなもので、総数は少ないが、人型の個人個人の絶対的な力は軽く国を滅ぼす。

 大概は人間に興味なく悠久の時を気ままに過ごすのだが、時折、暇潰しと称した遊びで国を滅ぼすようなことをやってのけるのだった。

 

「人型か……」

 

「完全なる人型。流石に手強かったけど、なんとか勝ったんだけどねまる三日動けなくなって、村人に助けられたんだけど、顔を見られて神様扱いされた。瞳の色を変える余裕がなくて、真っ黒のままだったから、祭り上げられて、それから二十日、新しく村をまとめあげて…」

 

 何かを思い出したのか、遠い眼差しであらぬ方向を眺める弟子を尻目に、ヨルはうんうんと頷いた。


「人型は顔がいいからな。確かに間違え」

 

 カッ! そんな音がした。

 ヨルの右頬をすれすれに飛んだナイフが壁に突き刺さった音だった。

 

「リウマハニンゲンダヨ」

 

「顔がどうかしましたか?」

 

「イエイエ」

 

 冷や汗を垂らしながら、弟子の顔を見るヨルはナイフを壁から抜いて竜真に返した。

 

「またナイフ投げが早くなったな。初動が全く見えなかった」

 

「師匠、それ以上衰えたら刺しますよ」

 

「……それは笑顔で言うセリフじゃないな。」

 

 顔全体は覆面で見えないが目元と口元で竜真が笑っているのはわかる。

 ヨルは自分の鍛練を一日のスケジュールに入れようと頭に浮かべたのだった。


ヨルは38歳ぐらいのわりとイケてるおじさんです。

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