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作者: 雪狼

私は疾うに腐った。

22歳、世間の大人が励ます年頃。婚約者も居て正に順風満帆。だがしかし、これから先を生きていくには希望が足りない。新卒で入った会社を2ヶ月でクビになった。次の就職先も2ヶ月待たされた挙句、不合格だ。大学で得た技術や知識を全て否定され、もはや私が縋れる誇りも無い。それなのに、まだ自分の誇りを捨てきれずに、弟子入りを視野に動いてる。なんとも呆れたダメダメフリーターだ。奨学金の返済を抱え、婚約者との生活を支え「自分がしたいようにしなさい」嗚呼無理難題。私がしたい事は何だ。伝統工芸を学び、手に職が付いたと思いきや、全否定。「君の性格と腕じゃ木工無理だよ」嗚呼そんなの鼻から知ってる。故に、一般の会社に入った。嬉しいことに、自分の知識を買っていただき、それを活かしてくれると言っていただいた。しかしその機会は訪れず、有給を取ったら即クビ。嗚呼涙が出るほど笑ってしまう。

私は嘘をつくのが苦手で嫌いだ。小さい頃の私は虚言癖で多くの人を困らせ、私自身も行方知らず。それ以来素直に生きることに努めてきた。友達に毒を盛られようが、両親が離婚して、親父に殺されそうになっても努めてきた。だが、だがだ。大学を卒業してその素直さ、アイデンティティに首を絞められてる。有給の理由を聞かれ、素直に答えたらクビ。木工の会社の面接で素直に答えたら、自分が分かってない人を雇う気は無いと伝えられた。なんなら、前職が合わなかった理由も嘘をついてお客様を取るのが心苦しかったのである。

婚約者には「その素直さが好きよ」と言われている。嗚呼何とも有難いお言葉だ。否否、その素直さで、誰か救えたか?その素直さで、君を幸せにできるか?答えは否だ。素直に真っ当に人間として生きようと努めた結果!仕事はクビになり、再就職もままならず、日々生活するのがやっとだ。私は生きてていいのだろうかと思い上がった思考に至っている。私自身に生殺与奪の権利がある訳ないのに、生きることに疑問を抱いている。私には生きる資格も死ぬ資格もない、ただの無益な物なのに。

恥ずかしい人生を歩んできました。生を受けて22年。初めて親父に会ったのは齢五歳の頃。マトモに母親と話せたのは、高校3年の頃。初めて友達に毒を盛られたのは小6の頃。初めて親父に殺されかけたのは高校2年の頃。嘘つきは生まれてから、今日まで。荒唐無稽な嘘は小6まで。自分に価値を見いだせなくなったのは、小1から今日まで。私の記憶は古くて大学時代が鮮明に思い出せる。それ以前はもう淡い色。アイデンティティを探す為に潜る事は出来ず、断片を嘘で塗り固めて積み上げて私を作るしかない。それはもう生きてるんですか?

こんな事を婚約者にでも伝えたら離縁に、平手打ちじゃあすまないでしょうが、これが私なんです。非常に薄っぺらくて身もないのが私なんです。その癖鯖見たいに腐るのが早いのが私なんです。鯖の方が有益性高いのが、何とも言えないですがね。そんなクソみたいな私ですが、最後の責任として、婚約者だけはキチンと幸せにしてあげたい。こんなどうしようもない私も見つけてくれた、選んでくれた。それで幸せと言ってくれてる。何も無い私にはその言葉だけで、感無量なのです。これから私は、給料も出ない弟子入りを目指し、終いは独立をするでしょう。稼げるか不安でいっぱいでしょう。私にはその不安を解消するだけの腕も自信も正直無い。それでも言葉で何万回も君に気持ちも伝え続ける。しっかり向き合い続ける。それが僕から君に伝えれる唯一の誠意だ。

私は貴方だけの鯖になりたい。

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