浅瀬の国②
海の中を真下に落ちながら沈む。徐々に自分は姿を変え、暗い世海の中、赤い髪を持つ男はその日初めて地面に足を着け降り立った。
すでに放たれていた魔物が村の生き物を殺し光を回収している。自分もそこに加わった。
光を爪から出し、首を切る。心臓を突く。目をえぐる。生き物が出した光を自分の中に取り込む。他のモノのように魔物を産み出そうとしたが、出せなかった。これでは効率が悪い。だが、その分自分が多く狩ればいいだけだ。
「すべては、魔王様のために。」
――――・・・
オモテは薄暗い洞窟の中で目を覚ました。自分の体を動かすことができない。ぐったりとして1mmも動かない。
頭の中で、自分が体験したこともない記憶がフラッシュバックしていた。人々を殺す生々しい感触。この記憶はなんなのか。
自分の手や体の下の感触から察するに、オモテは見慣れたクロモチの魔物の固まりの上に寝そべっているようだった。
オモテが起きたのを感知したのか、クロモチの何匹かがぷるりと震えた。
すると、洞窟の奥から、ランタンの光がやってきた。あの女だ。
「やぁ。お目覚めかな?」
女がランタンを傍らに置きながら笑顔でオモテに聞く。
「なぁ。お前どうやって仲間を増やしたんだ。」
女がオモテの肩を手でゆっくりなでる。そこに白い魚はいなかった。
「魔物をつくる感じか?」
女がオモテに体を寄せ囁くように聞く。
「妾、同じ種族が欲しいんだ。他の生き物と同じように。この海に1人は寂しすぎる。そうだろう?」
反応のないオモテに、女はむっとした顔をする。
「なぁー。意地悪しないでこの姉様に教えてくれよー。」
「・・・姫様は、どこだ。」
女はにっこりと笑った。
脳内でまたぐちゅりという音がした。
――――・・・
村をいくつ潰したか、それは突然起こった。
自分の体の中に溜めた光が滾るマグマのようにうねりを上げた。大きな光が炉の中の火のように体の中で燃え上がり膨らむ。体が弾ける。そう感じたとき、自分の体が2つに引き裂かれ分裂した。
自分の体そっくりの分身。目の前に赤い髪色で頭頂部に小さいウサギの耳のような髪のハネが2本はえている黄色の眼をもつ分身がいた。
――――・・・
何度触手が頭を出たり入ったりしたのか。何日経ったのか。ゆっくりと、女が自分に会いに来るたびに、少しずつ自分が知らない記憶が呼び起こされていく。
「ごめんごめん『オモテ』。さすがに体が持たないようだから少し時間を空けようか。さ。これ食べて。」
女が見たことのない物をオモテの目の前に差し出す。名乗ってもいないのに、名前を把握されている。忌々しい。
「陸の果実だよ。リンゴって言うんだって。甘くておいしいよ。」
女はそう言うともうひとつリンゴを出し、見せつけるように己も食べた。毒は無いと言うことだろうか。
「それにしても、仲間を増やす方法が光を蓄えることだったなんて!妾が分裂しないのは光を蓄える容量が大きいからかな?」
オモテはじっと無言で女を見つめる。
「そんな顔で睨むなよ。もう、わかっているんだろう?」
――――お前も、魔物なのだから。
女がそう言った瞬間、オモテと女の間に白い魚が割り込んだ。
白い魚は体全体を発光させると、周囲に雷を落とした。その中の一本が女に直撃する。
「・・・おや、油断したね。」
女の腕が黒焦げになる。どうやら腕で雷を受け止めたようだった。
女が次に前を向いたとき、白い魚とオモテはそこにいなかった。
白い魚がオモテの頭の上に乗り、光を供給する。前にヌタと戦ったときのように、気付けを行った。
体力は底をついていたが、なんとか光を操り、足を動かすイメージをしてとにかく洞窟から逃げた。
深海のように暗い洞窟の底から、とにかく上を目指す。
暗い中、夜の気配がしていた。
「こんな時に・・・!!」




