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月の神殿

マンダイに連れられ、女神像がよく見える一番前の教会のベンチに3人は腰掛ける。


「さて、何から話しましょうか。」

「先ほどモラモラからお月様は生物が死んだ後、海の底にいるお月様の元で暮らし、精霊となって再び太陽の元に還って来ると言うことは聞いた。」

「あら、そうなのね。そう。お月様は我らの死後、光だけとなった我らを優しくゆっくり休ませてくれる女神様なのです。我らは精霊様となりまた次の生を受けるため、深い海のさらに奥底。海の一番底にいるお月様の元へ行くのですよ。」

「海の一番深いところにお月様はいるんですか?」


オトヒメが質問する。


「ええ。一番奥底にいて、すべての生物の死を受け止めてくださるのです。」

「マンダイ、夜について知っているかの?」

「はて・・・夜・・・。残念ながら夜については存じ上げないわ。どういうものなの?」

「そうか・・・。夜はヒトを殺すのだ。夜は、我ら生き物が魔王の手から逃げ、海に逃げ延びるより前から、海にいたという。夜は暗い場所で現れる。夜は見てはならぬ。一度見てしまうと、眼に巣くい、眼から夜が出てくる。一度夜を見てしまうと、今までは見ることができなかった夜の者を見ることができるようになる。夜に追いつかれると、眼から夜が出てきて次の夜の者になる。我ら鮟鱇(あんこう)族のように光る種族は暗闇を照らすことで夜を退けることができてきた。一族に伝わる夜に関する書に、『屈することなく光り続けよ。たちまち夜は光にかき消されるであろう。耐え抜くのだ。やがて夜をすべる月が現れる。』という言葉が記されていたのだ。」

「月・・・信仰がないはずの深き慈愛の海のお二方がここに来た理由は、夜にあるのですね。」


マンダイは女神像を見上げ、何か考えているようだった。


「これは・・・もしかしたら関係が無いかもしれませんが。ふとこれではないか。と関係するであろう物がこの神殿にはあるのです。少し待っていてくださいね。」


マンダイはそう言って、神殿長の部屋にある物を取りに行き、しばらくしてから2人のもとに戻ってきた。


「これです。ここ。」


そう言って、マンダイは1冊の本を広げ、あるページの絵を指し示した。


4枚の絵で構成されている時の進行を表すかのような絵だった。

1枚目は天界で生物に取り囲まれる抱き合っている男と女の絵。

2枚目は女が天界から海へ落ちる絵。

3枚目は海の底で泣きながら黒い骨で描かれた兵を天界へ送る女の絵。

4枚目は男によって海の底深くに閉じ込められる女の絵。


次のページをマンダイが開く。そこにはページいっぱい大きく描かれた5枚目の絵が描かれていた。


男が光を陸や海に注ぎ、光が生物に姿を変え、生物が死ぬと光になり、海の底から女が光を生物に変え天界に還す絵だった。


「これは、私達の見解では太陽様とお月様の歴史の絵だと考えています。決定的なのは最後の絵。太陽様が自身の光を削り、生物を生む。お月様は生物が死んだ後に残った光を精霊に変え、再び太陽の元に還す。まさに状況が一致している絵だと思いませんか?」


オトヒメが絵を見て大きく頷く。


「確かに、教えてもらった内容と似ていますね!」

「だが、」


ビワが眉をしかめる。


「だが、太陽は女神ではないのか?」

「うん。そこが私も気になった。」

「そうなのです。そこが我々の歴史や太陽の神殿の研究と異なる点なのです。」


ビワはハタグルマの里の精霊研究所で見た白い魚の記憶を思い出していた。そのとき見た映像は、青と白の色からなる眩しい世界に、白く光る女と黒い男がいて、女は胸から下が無かった。白い女がその場に寝そべっており、黒い男が女の胸の部分を剣で突き刺す。そのとき、白い女の胸から光がはじき飛ぶ。その光を女と男は2人で集め、白いふわふわした場所から青い下の階へ落とす様子だった。

その2人をラカンは太陽と創造神と呼んでいた。


「(太陽は海に閉じ込められているのか?太陽が海の底で月となり、光を創造神の元へ送っているのだろうか。だが、そうだとすると創造神はどうやって太陽を砕かずに光を削ることができているのだろうか。)」


「そして、私が見てほしいのはこの絵。」


マンダイが1ページ戻って3枚目の絵を指さす。


「お月様であろうお方が黒い死兵を天界にむけている絵です。兵が通った後はヒトが死に、黒い兵へと姿を変えていますね。まさに、ビワ様が言われた夜に似ていると思いませんか?」

「確かに、夜を見た者で追いつかれた者は夜になっちゃうんだよね。」

「確かに…それでは…」


夜は、太陽が生んだ兵ということなのだろうか?


『屈することなく光り続けよ。たちまち夜は光にかき消されるであろう。耐え抜くのだ。やがて夜をすべる月が現れる。』


ビワが考え込んでいるとき、月の神殿の扉を乱暴に開ける音が響いた。駆け込んできたのはラカンだった。


「大変だ!!オモテが攫われた!!」



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