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天界

「しかし、その陸地も魔王に知られ、魔物がそこから海へと来ていますがな。」

「そんな話、初めて聞きました。」


オモテがつぶやき、そのままモラモラに質問する。


「忘れらるる陸・・・そこに行けば太陽様に会えると言うことですか?」

「ええ。精霊様は浅瀬の国を出て、忘れらるる陸に行き、最後、陸地よりもさらに遙か上空に位置する太陽様のいる『天界』へと渡られると言われています。」


モラモラが黒板に『天界』の文字を書いた。


「天界・・・『天海』ではなく、『天界』?」


オモテがつぶやいた。


――『オモテ。お前はこの白い魚を天界まで連れて行くのだ。そこにお前の求める答えがあるだろう。』


オモテの頭の中にワダツミに言われた言葉が思い起こされた。天界に行けば、ウーラ様を元の姿に戻すことができるのかもしれない。


オモテのつぶやきにラカンが答える。


「天海は我々深海の国に生きる者が浅瀬の国を表すときに使う言葉です。天界や陸は海のない場所。我々は息をすることができない場所です。」

「息をすることができない?それでは行けぬではないか!」


ビワが顔をしかめる。


「ええ。だから知識のないものが行く事がないように、陸についての話はごく一部の者しか知られていないのです。」

「ですが、自分たちは陸に上がり、太陽様にこの精霊様を合わせる必要があるのです。」


オモテが自分の肩元にいる白い魚を優しく持ち、モラモラに見せた。

白い魚はじっとモラモラを見ている。


「ふむ。普通の精霊様でしたら勝手に天界へと旅立たれていきますが、精霊付きの方ですからな・・・。すぐに太陽様のところへ、となると確かにオモテさんが天界に行かないと行けないでしょう。」


「すぐに・・・じゃあなければいつかは行けるの?」


オトヒメがモラモラに質問する。

これにラカンが答える。


「はい。研究によると、精霊付きの方の精霊様はその取り付いた人や物が亡くなるか壊れるまでその場に居続けるという事がわかっています。」

「それって・・・」


誰も話さず、重たい沈黙が続いた。


「どうしたら今の自分でも陸に上がることができますか?」


オモテがモラモラとラカンの顔を見て聞いた。


「わかっていたら、私達も太陽様にお会いしているところです。」



陸に着いての講義が終わり、一同は別行動になった。ラカンとオモテはそのまま講義室に残り、オトヒメとビワは月の神殿に行くことになった。ハクゲイは忙しいようで、先に城に戻っていった。


「じゃあオモテ、話が終わったらお主も後から来いよな。」

「ああ。後から行く。」

「じゃあね!オモテさん。」


―――・・・

ビワとオトヒメは研究所職員の案内で太陽の神殿を通って、月の神殿に向かう。

太陽の神殿とは印象の違う、しんとした静けさをたたえた、こじんまりとした礼拝堂だった。

信者は誰もいなかった。太陽の光を浴びているサンゴやきれいな藻の花畑の中央に、高さ2mほどの女性を形取った白い像が置かれていた。


ビワが女神像に近づき、像を眺める。

ベールをかぶり、ヒトをその腕の中に抱きながら優しく見つめる女性の像だった。


「いい海ですね。深海の勇者達。月の神殿へようこそ。」


月の神殿の女神官が2人に近づく。年はいくつくらいだろうか。年をとったふくよかな女性だった。太陽の神殿の神官達はみな白い服を着ていたが、月の神殿の神官は黒い服を着ていた。


「いい海ですね。」

「いい海ですね。」


2人も挨拶を仕返す。


「私はこの月の神殿長を務めています、アカマンボウの人魚、マンダイといいます。」

「ビワだ。こちらはオトヒメという。」

「よろしくお願いします。」

「先ほど、太陽の神官から聞いて驚きましたよ。なんでも、深き慈愛の海にはお月様信仰がないだとか。ふふふ。面白いですね。」

「実はそうなのだ。お月様をワシらは知らぬ。ワシらはお月様について知りたくここに来た。」

「まぁ。」


マンダイは少し驚いた顔でビワを見る。


「まぁ、まぁ。あの神官の言うことは本当だったのですね。もちろん私が知っていることをお話ししますよ。」


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