陸の講義
「え・・・」
「ワシもできるぞ。」
ビワもビワアンコウを出す。
モラモラが目ん玉飛び出るんじゃないかというくらい目を開いてビワと見たことのない黒い魚を見た。そのままオモテの顔を見る。
「・・・」
オモテも黙ってメンダコを出した。
「す、すごい・・・何もないところから生物を生み出す・・・?」
「正確には生物ではありません。」
ラカンもシーラカンスを出し、モラモラに説明する。
「私達が住む深海は真っ暗で、うかつに移動することができません。どうにか連絡を取りたいというときに生み出された技術がこの伝達精霊を生むことだったのです。そうですね、わかりやすく言うと自分の体内に宿る光を使い、疑似精霊様を作り出しています。疑似精霊様に言葉や物を託し、旅人に一緒に運んでもらったり、海流に乗って無事届くことを祈ったりするのですよ。」
「そんなすごい技術が・・・わ、私にもできるでしょうか?」
「ええ。さほど難しい事ではありませんから。」
モラモラが少し咳払いをして話を続ける。
「んん・・・話が逸れましたね。さて、今日のテーマですが、『陸』について講義していきましょう。」
モラモラが黒板の前に立ち、海の絵を描きながら説明し始める。
「さて。まずは陸の話をする前に。皆さんがどれくらいこの世海の成り立ちを知っているのか確認しましょう。」
「はい!太陽様が光を海に散りばめて生物を創りました!」
オトヒメが元気に答える。
「ええその通り!・・・そういえば皆さんの自己紹介がまだでしたね。あなたは・・・」
「オトヒメです。」
「ビワ。」
「オモテです。」
「ありがとう。そう。太陽様が御身の光を削り、海を動かし、生き物が暮らせる環境を創り、最後に生物を創りました。では、死んだ生物はどうなりますか?」
これにオモテが答える。
「死んだ生物の光は天海に還ります。」
「よくできました。浅瀬の国では、死んだ生物の亡骸、光は深海の海の底へ。海の底で精霊様に生まれ変わり、深海から浅瀬、最後に太陽様のいる場所に行き、また光となって我々の元に還ってくるのです。」
「深海にはお月様がいる?」
ビワが質問する。
「はい。深海で死んだ者を慰め落ち着かせ、再び太陽の元に送り還してくださると言います。しかし、最近では太陽様の光や戻ってくる光が少なくなりました。さて、それは何故でしょうか?」
「魔王が現れ、陸地を消し、太陽を世海から閉め出したから。」
オモテが答えた。
「オモテ、『リク』について知っているのか?」
ビワが驚いたような顔でオモテを見る。
「ああ。『陸』にも生物が住んでいたが、魔王によりすべての生物が海へと逃げたと村の巫女長が教えてくれた。
オモテは深海光夜祭で耳にタコができるほど毎年聞かされていた、婆の昔話を思い出していた。
モラモラが海の絵の上に、陸地を描き、太陽と生物の絵を描き足す。海の中に沈む光と月の絵、精霊の絵、最後に魔王の絵を描き足した。
「素晴らしい。大正解です。では、黒板でまとめていきましょう。」
そう言ってから、モラモラは説明し始めた。
太陽は自身の光を削り、海、そして陸と呼ばれる海の上に出た砂の地を創った。生物が住める環境を作り上げた後、我々の祖先の魚などといった水生生物や陸で生きる生物が生まれた。生物は死んだ後、月の元で暮らし、精霊となって再び太陽の元に還る。光は『世界』を循環していた。しかし、魔王が現れ、陸地を消滅させた。
「陸地は今、太陽様が壊せない分厚い『氷の層』で覆われているのです。」
冷たく厚い『氷の層』はまず陸の生物の命を奪った。一部の陸で生きていた生物は海の中で生きられるように変化していったが、長い年月をかけて陸は生物が住める環境ではなくなっていった。
しかし、魔王の目を免れた陸地が存在した。それが『忘れらるる陸』。高い山と霧に囲われた盆地。そこに数少ない陸で生きる生物が残っているという。さらにその場所にはえている巨木の洞の中に、海とつながる砂浜と地底湖があった。
自分が生み出した生物が死にゆく姿に嘆いた太陽は、その盆地と地底湖に自らの身を少しずつ削り、光を海の底へと送り届けた。光は多くの生物の亡骸と混じり合い、新たな生物が生まれた。それが今日における我々である。




