浅瀬の国
その後数日が過ぎ、ラカンに呼ばれて最初のワダツミと会った広間に通された。
「全員目が覚めたようで良かった。眩しくて目が開けられないことはないか?」
「はい。」
「大丈夫です!」
「問題ないの。」
「うむ。まもなく深海から続いてきた崖を登り切り、浅瀬の国の門にたどり着く。・・・さぁ、見てごらん。」
ワダツミに促され、3人はクジラの体内から透けて見える外の世界を見た。
目の前の崖がなくなり、開けた世界が広がる。
「わぁ・・・――――」
オトヒメが声にならない感動を口にする。
鮮やかなコバルトブルーの水の世界。地平線の遙か遠くまで見ることのできる光のある世界。深海とは違い、赤やピンク、水色、黄色とても鮮やかな珊瑚や海藻が生い茂っており、小さな艶やかな小魚が泳ぎ踊っていた。
遠くには太陽の門に似た大きな門が見える。
ワダツミが優しく3人に語りかけた。
「あの門の向こう側が浅瀬の国だ。ようこそ、深海の勇者達よ。」
ゆっくりと門が開く。ラカンに促され、オモテ達はクジラの体内から外の世界へと歩み出す。
クジラの体内にいたときよりも、外の光はずっと眩しく感じられた。
「(なぜ、世界がこんなにも明るいのだろう。)」
オモテがそう思っていることがわかったかのように、ラカンが話し出す。
「3人とも眩しそうですね。我々が暮らしている深海の世界よりも、太陽が近いから、絶えずその光が降り注いでいるらしいですよ。」
ビワがびっくりして答えた。
「光が、絶えず降り注ぐ?」
「太陽が浅瀬の国全体を照らしているのです。ただ、これでも光が弱い方なのですよ。」
「これでですか?」
オモテが質問した。
「魔王により世海から太陽が遠ざけられ、遠くからなんとか太陽が送った光が降り注がれていると太陽の研究所の者が言っていました。・・・さぁ。迎えが来ましたよ。」
ラカンの声にオモテは門に目をやる。門の前には沢山の人々がいた。なかでも一際体格のいい大きな男性がいるのが見えた。全員、足がない。いや、あるのだが、足の部分が魚の尾の形をしていた。
オモテ達はラカンを先頭に門をくぐる。
人々は眉をひそめひそひそと4人を見て何かささやいている。
「(歓迎されていないようだ。)」
ラカンが大きな男性の前にひざまずいた。
それを見て、オモテ達も同じようにひざまずく。
「お久しぶりです。浅瀬の国の王、ハクゲイ様。」
「よく来た。深海の賢者ラカン。浅瀬の国は貴殿の再訪を歓迎する。そして後ろの者達は?」
「深海より来た、太陽の手がかりをもつ者達です。太陽の研究所に連れて行く為に来ました。」
「そうか。面をあげよ。」
3人は顔をあげ、ハクゲイ王を見る。
その容姿はワダツミにそっくりだった。違いはワダツミが黒い衣をまとっていたのに対し、ハクゲイは白い衣に白いクジラの尾を持っているところだろうか。
「また死者の国から亡霊が来たのか?」
「見て、あのおぞましい尾鰭。2つに裂けているよ。」
「鱗もなくぶよぶよしていそうな鰭だね。イカの仲間か?」
「それにしては本数が足りなすぎる。ああ、不気味な!」
ビワが眉をひそめた。オトヒメも不安な顔をしていた。
「ん“ッ、ん”!」
ハクゲイ王が咳払いをした。おしゃべりをやめる住人達。
ラカンは涼しい顔をしていた。
「すまぬ。我ら浅瀬の者と深海の者は体のつくりが異なることを知らぬ者が多いのだ。」
「いえ、お気になさらず。」
「ラカン、太陽の研究所には明日行くがよい。今日は貴殿らを我がアトランティス城へと招待しよう。」
門から見える離れた場所に大きな白い巻き貝の宮殿がそびえ立っていた。
巨大なタツノオトシゴの馬車に乗り移動する一行。その様子を岩陰から覗く影があった。
「なんて面白い人たち!あの人達陸に上がる方法を知っているかなぁ?」
金色の尾をした少女はそうつぶやくと宮殿に向かった。




