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面ーオモテー:深海の勇者  作者: タナバタネコ
ハタグルマの里
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ハタグルマの里⑩

そこから何日過ぎたか。

竜宮城の地下のある部屋で、腐敗処理されたヌタの死体袋の前にビワとリュウグウが立つ。


「・・・こいつ、こんにゃく鍛冶屋に助けに行くときにテングノタチの名を言っていた。テングノタチとイサリビに相当な恨みがあったようだ。」

「・・・あの事件の遺族か。」

「あの優しかったテングノタチがな・・・今テングノタチは何をしているんだ?」

「兄上はもうこの里にはいないよ。使用人惨殺事件の後、太陽の門を通って天海に逃げた。」

「行方は追えないのか?」

「事件の時からぷつりと見えなくなったんだ。もう生きていないみたいに。そのときまでは見えていたんだけどね。」


ビワはヌタの死体袋を見た。本来あるはずの臓器や骨がない中身。からっぽの中身。


「・・・お主は夜を知っていたか?」

「存在は知っていたさ。見たのは初めてだけどね。・・・おぞましいものだ。」

「ああ。・・・夜について何を知っている?」

「夜を見るとその後も夜に魅入られる、夜を耐え抜いた先に月が現れる。ということだけだ。」

「・・・」

「夜についてはお前達鮟鱇(あんこう)族の方が詳しいだろう?」

「そうだが、何か新たな情報があるかも知れないだろう。」

「そうだなぁ・・・夜・・・月。――――・・・月といえば、」


そう言ってリュウグウはビワの顔を見た。


「ビワ、月の神殿は知っているか?」


ビワは少し目を見開いてリュウグウの方を見た。


「・・・知らん。何だそれは。」

「これはラカンが言っていたことだ。太陽の門を通った後、天海に太陽の研究所がある。そこで共同研究を行っていたとき、すれ違った者が言っていた言葉だそうだ。そのときは気にもとめなかったが、今になって気になり始めたらしい。まさに、“月”。同じ言葉だ。夜と関係がありそうじゃないか?」

「なるほど・・・。ありがとう。・・・なぁ、お前はどこまで見えているんだ?」


リュウグウはビワの顔をじっと見て口元だけうっすらと笑った。


――――――・・・


「というわけで、ラカンに会いに行くぞ。」

「急だな、ビワ。」


今オモテとビワはハタグルマの里の神殿にいた。被災した里の復旧を手伝っているところだ。

多くの者が死に、住むところも無く、孤児も増えた。オウムも物資支援に奔走しているらしい。

今も、オモテはこんにゃく鍛冶屋で少し鍛えられたため、建物の再建に必要なランタンや工具などを作り納品したところだった。


「ちょうど自分も、聞きそびれた話す精霊様のことを聞きたかったんだ。今行ってみようか。」


精霊研究所がある岩山の空洞内の階段を登る。今日も数匹の精霊様が海を泳ぎ飛んでいた。このハタグルマの里は精霊様の数が大変多い。


「・・・まさに太陽に近いところなんだな。」

「急にどうしたオモテ。」

「いや、・・・聖都は太陽に近いとされる場所なんだろ?特にこのハタグルマの里は精霊様が多いからさ。」

「そうだな。チョウチンの里もここまでの精霊様はいない。それだけ太陽に近いんだろうな。」


研究所の階段を登る。研究所の大きな望遠鏡が突き出ている場所にラカンの姿が見えた。


「ビワ、望遠鏡のところにラカンさんがいるぞ。」

「お、ほんとだ。・・・おーい!!!!!!!!!」


ビワがでかい声で叫んだ。


「おーい!!!!!!!!!ラカン!!!!!!!!!」


さすがシンガー。いい声が大きく、はっきりと飛んでいったようだ。ラカンがこちらに気づいたようで、小さく手を挙げた。


二人は受付に寄り、ラカンの元に案内された。そこは先ほど見た望遠鏡のところだった。


「やぁ、いい海だね。」


ラカンが望遠鏡から目を離し、二人に話しかけた。


「いい海ですね。」

「いい海だな。」


ラカンがビワの顔を見る。


「リュウグウ様から聞いているよ。月の神殿が気になっているようだね。」

「話が早いな。月について何か知っているか?」

「月か。神殿では無く?」

「ああ。ワシは夜を研究している鮟鱇(あんこう)族でな。夜を打ち倒す方法を探している。耐え抜けば、夜を統べる月が現れるそうだ。」

「ふむ、その話を最初に語った者は誰なんです?」


そう問いかけられたビワはきょとんとした顔をした。


「・・・そういえば、知らねぇな。」

「・・・信憑性がないのでは?」

「いや、鮟鱇(あんこう)族の研究書の中に出てきた言葉なんだが・・・うぬ・・・」

「夜を統べる“月”・・・」


ラカンがつぶやく。


「まぁ、確かに月の言葉は共通ですね。月とは何なのか、謎は深まるばかりです。」


そういいながら、ラカンはまた望遠鏡を覗いた。


「・・・何を見ているんですか?」


オモテがラカンに質問する。


「今、太陽の門を越えた精霊様の群れを観察しているのだ。・・・ああ、いらっしゃった。」


そう言って、ラカンは望遠鏡の側面についているボタンを押した。

カシャっと音が鳴る。

続けてラカンは何回かボタンを押し、カシャカシャと音を鳴らしていく。


「何をやっているんだ?」

「君たち、次の太陽の研究所行きに同行するかい?」

「「!」」



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