約束の日③
門は必死にダイオウイカによって閉じられようとしていた。だが、クロモチは生き物ならなんでもいいのか、ダイオウイカでさえ消化吸収しようとまとわりついて門を閉じようとするのを邪魔していた。オモテはまず門にはまっているクロモチの塊を攻撃する。
「はじけ飛べ・・・!!!」
脳内で剣から出た光でクロモチがはじけるようにイメージをしながら、クロモチを突き刺す。オモテの剣が光り、オモテからクロモチに光が流れ込む。
クロモチの中で光が暴れ回り、クロモチをはじけ飛ばした。クロモチを倒すと急激に体のだるさが増した。倒したクロモチが吐き出した光は再びオモテの面が回収する。すると少しだるさが解消された。
「(自分の中の光が減ると一気に疲れるのか・・・!)」
今まで体を強化していた光は体内で循環させていたので使用してもなくなることはなかった。しかし、今回の戦法は剣を通じ光が体内から外へ出て行ってしまっていた。
クロモチに剣を突き刺し、はじけ飛ばし、光を回収する。そのサイクルをひたすら繰り返す。クロモチのとんだ破片がオモテにまとわりつく。まとわりついた先からオモテの体を溶かしにかかる。門に挟まっているクロモチの数が少なくなった。あと数匹、というところで、生き残ったダイオウイカが門を完全に閉じ、隙間にいたクロモチは潰されて死んだ。
海流の流れが落ち着いた。海流の流れが弱まったと気づいた住人は高台に逃げている。食われている住民や、食われた人を助けようと戦っている住民がいた。オモテが住民を助けにクロモチを狩る。
狩っている最中、ふと右横のマンホールの蓋が動いたのに気がついた。
「!」
マンホールの蓋が勢いよく吹き飛び、穴からおぞましい数のクロモチが飛びでてきた。天高く吹き飛んだクロモチは民家の屋根を突き破り、家の中の住民を襲う。家が倒壊する。
その日ハタグルマの里はクロモチで埋め尽くされた。
「くそ!!狩っても狩ってもキリがねぇ!!!!爆ゥ!!!!!!!」
ビワが派手にクロモチを吹き飛ばす。ビワは拳にオウムから巻き上げ・・・もらった光付与の魔道具、爆裂拳の効果の着いたグローブをはめていた。
「爆!!爆!!爆!!!!」
魔道具はそのはめられた魔石に宿る光がなくなるまでその効果を発揮することができる。魔石が色あせ、透明になると光がなくなったことを意味する。
何匹の魔物を狩ったことか。早くもグローブの魔石の色が薄くなり始めていた。
「・・・チッ!!」
そのとき。ずっとビワや住民を襲っていたクロモチが突然攻撃をやめ、門の前に移動し始めた。
「ん?なんだぁ?」
クロモチが門の前に集まる。
クロモチに遅れてビワとオモテは門の前に来た。
黒いヘドロの波になったクロモチの群れの中に、1人の女がいた。
「んぇ~?あなたたち?わっちの大切な魔物ちゃん達を殺してくれてるのぉ。」
「誰だ!」
オモテが相手に問う。
「んふふ。いいよぉ。今日は気分がいいから。教えてあげるわぁ。わっちはハタグルマ支部、死海の頭領のヌタだよ。いい海だね~!」
ヌタと名乗った女。不気味なほど丸くなった猫背で、長い黒い髪。身の丈に合っていないぶかぶかな着物を着た女だった。
「お前が死海のやつか。なぜハタグルマを襲った!」
ビワがヌタに問う。
ヌタは大きな目を細くし、大きな口をにんまりと曲げ笑いながらビワに答えた。
「そんなの光があるからだよぉ!光を捧げればみな天国へ行けるのよ。私は皆を救っているのぉ!」
「勝手にお前だけ捧げとけ!他の人を巻き込むんじゃねぇ!!」
「わっちは選ばれた人だからぁ。死ぬのが怖い人を救済してあげる使命があるのぉ。そうすればぁ、光ある地に行けるのよ。」
ヌタが体をのけぞらせ、恍惚とした顔で、大きな声で答える。
「こんなぁ!暗い深海ではなくてぇ!あの方達がいる天国へぇ!ねぇ!行きたいでしょ?行きたいよねぇ?」
ヌタががくんっと体前屈みに倒し、元の猫背に戻る。
「・・・だからぁ、とっとと死んで、生まれなおそ?こんな暗い世界。・・・地獄じゃない。」




