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能力鑑定の光鉢

ごそごそと棚をあさり、婆はオモテの前にある書斎机の上に、ごとんっと大きな睡蓮鉢をのせて見せた。


「婆特製、能力鑑定の光鉢じゃ!」

「これが噂の・・・」


光鉢の中には、海の中にもかかわらず、金色に輝く水面がはられていた。


「ほほほ。長い年月をかけ、婆の光を水鉢にためたのだよ。この水面は光の海。さぁ、オモテや。光鉢を覗きこんでごらん」


オモテは言われたとおり、光鉢を覗きこんだ。

婆が光鉢に己の光の力を注ぎ入れる。すると、光鉢の水面が揺らめいた。


「ほらほら見えてきた。これがお前さんの情報じゃよ。」


光鉢の水面に文字が浮かび上がる。

________________________

▼オモテ

種族:面鮹(めんだこ)

光量:19

能力:面相

称号:光の導き

________________________


「これは・・・」

「光量は今まで身体に取り込んだ光の数じゃ。たくさん取り込んでいる者ほど体力や力がある。・・・おぬしは19歳か。特に強いわけでも弱いわけでもない数値みたいじゃの。・・・ははは。そう残念そうな顔をするでない。」


婆はさらに文章を読んでいく。


「『面相』は面鮹(めんだこ)族全員が共通でもつ能力じゃな。面鮹族は面に光を入れ込み、光の力を利用するじゃろう?じゃがオモテ、未だ面相の真価をひきだしてはおらんな。お主、面に光は貯めておるか?」

「魔物を倒したときに、多少・・・」

「よいよい。我ら面鮹族は面に貯めた光を操り、自分の力にすることができる。たくさんの光を魔物から解放し、これからも蓄え続けなさい。さて。もし、光を自身の力に変えるなら、どんな風に変えたい?」

「光を?」

「そうだ。得られるとしたら、どのような力がほしい?」


オモテは、深海光夜祭のときのことを思い出した。ずっと、自分の脚がもっと速ければ姫様を助けられたのに。と後悔していた。


「脚が・・・速くなりたいです。すぐ誰かを助けられるように。殺せるように。」


婆は同情をたたえた目でオモテを見つめる。


「・・・うむ。では、面の中に宿る光を感じ取ってみなさい。その後、脚に集めることを意識してみなさい。」


オモテは婆の話を聞き、目を閉じ、額に触れている面の中の光を探るように意識を向けた。

温かく、面に宿る光。今までこの光を動かそうとはしてこなかった。動かせるなんて思いもよらなかった。ゆっくりと動き始めた光を感じながら、額から体を通り、脚に集まるように意識を向ける。


「うむ。初めてにしては上出来だ。どれ、歩いてみなさい。」


オモテは目を開け、一歩歩いてみた。すると、地を蹴った瞬間、地から押されたように感じた。


「!地面から押されました!」


「ほっほ・・・地面から押されたか。あながち間違いではない。普段よりも脚の力が強くなったのだよ。お主が地を蹴り押す力が反作用により、地面から跳ね返る。勢いを殺さずそのまま移動できれば、より速く移動できるだろう。」


オモテは光を脚に巡らせて歩きながら、つぶやいた。


「面の光に、こんな使い方があっただなんて・・・」


「これぞ面鮹(めんだこ)族の秘術。本来は齢20を迎え、かつ、適正のある者のみが教わることだからの。知らなくても当然じゃ。」


オモテは歩みを止め、婆に聞く。脚に集めることをやめた光が、額の面に集まり戻るのを感じた。


「本来、力の使いどころを間違えないように十分教育してから教えるものだ。面の光は一時的に自分を強くする。面の光を使い続ければ、次第に体になじみ、歳以上の光量を体に宿すことができる。光を扱い慣れた者は武具すらも具現化するという。神にも匹敵する力じゃ。それゆえ、未熟な者には実力があるのだと錯覚させる。毒になる。面鮹族は幼い頃から厳しい騎士訓練を受け、自身を律する精神を養う教育を受けている。それはこの能力のためじゃ。油断は死を招く。周りの死もだ。努々、それを忘れるでない。」


婆は真剣な顔をしてオモテを見据える。

その眼光の鋭さに、オモテはごくりと生唾を飲み込んだ。


「・・・まぁ、最初は集中して光を集めるから、その分手元や他がおろそかになる。隙が生じやすいからよく自身の面と向き合い鍛錬することだの。」


婆はオモテから顔をすぃと離し、光鉢を覗きこむ。


「さて、次の項目じゃ。称号にいこう。」


オモテは婆の元に駆け寄り、一緒になって鉢を覗きこむ。

________________________

▼オモテ

種族:面鮹(めんだこ)

光量:19 + 4

能力:面相

称号:面を操る者

   光の導き

________________________


「・・・ふむ。身体に満ちる光の量が4増えたの!」

「こんなに簡単に光量が増えるのですか。」

「まだ身体になじんではおらんから、光を循環させる練習を忘れるでないぞ。先ほども言ったが、身体から面に戻ってしまうからの」


婆は次の項目に目を通す。


「それに称号に「面を操る者」が増えたようじゃ。面を操れる面鮹(めんだこ)族共通の称号じゃ。じゃが・・・光の導き。・・・これは儂も初めて見たよ。」

「そうなのですか?」

「光鉢は対象の光の力や状態を解析し、文字化したもの。どんな文章が出てくるかは儂にも予想はできないし、どんな能力なのかはわからぬ。これからお主自身が能力と称号を照らし合わせて理解していくのだ。」


「光の導き」・・・オモテが頭の中でこの言葉を反芻する。光、そういえば、この光鉢で白い魚を視て、ウーラ様と判断できないだろうか。そう思い、オモテは光鉢から婆へ顔を向けた。


「そうなのですね・・・。そうだ、この魚・・・ウーラ様の情報も見ることができないでしょうか?」

「ふむ!確かにやってみる価値はありそうだ。魚を覗きこませてみよ。」


オモテは頭の上にいた白い魚を優しく両手でつかみ、光鉢の上から覗きこませた。


「では見てみるぞ・・・」


婆が自身の光の力を流し入れ、再度光鉢を使う。

________________________

▼白い魚

種族:???

光量:???

能力:???

称号:???

   太陽のミコ

________________________


「「・・・???」」


二人は覗きこみながら、首をかしげる。


「ここまで何もわからないのは初めてじゃ・・・。じゃが、太陽のミコの称号があるな!ウーラは太陽をあがめる巫女であったから、やはりこの魚はウーラなのじゃろう!じゃが、???とは。なぜ情報が読み取れないのじゃ?」


婆は光鉢に光を流し入れることをやめ、ぶつぶつひとりで考え出した。

オモテは白い魚から両手を離し、解放した。魚はくるりと泳ぎ、オモテの頭の上に戻っていった。魚は我関せずといった様子で、そのまま頭の上でくつろぎはじめた。



明くる日、オモテが旅立つ日が来た。婆と族長が村の門まで見送りをしてくれた。


「では、気をつけてゆくが良い。お主に太陽の守護があらんことを。」


こうしてオモテと白い魚の冒険が始まったのであった。


最低週1更新していきたいと思います。

よろしくお願いします。

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