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面ーオモテー:深海の勇者  作者: タナバタネコ
ハタグルマの里
26/58

海神の眼鏡

ラカンはそう言うと、オモテの右手を虫眼鏡を持つ自分の右手の上に置いた。置いた瞬間、オモテの脳内に映像が流れ始める。


「あなたも。」


そう言って、ビワの左手もオモテの手の上に重ねさせた。

ビワの脳内にも同じ映像が流れる。


青と白の色からなる大変眩しい世界に、白く光る女と黒い男がいた。女は胸から下が無いようだった。二人の表情はぼんやりと焦点が合わず認識できない。白い女がその場に寝そべっている。黒い男が女の胸の部分を剣で突き刺した。そのとき、白い女の胸にびしりと亀裂が走り、周囲に光がはじき飛んだ。その光を女と男は2人で集め、白いふわふわした場所から青い下の階へ落とす様子が見えた。


「今のは・・・?」


オモテが質問した。ビワは何も言わず映像を見ている。


「今のは、光がどのようにして産まれるのかを映したものです。」

「え?」

「次、確認しますよ。」


ラカンがそう言った直後、別の場面に切り替わった。

暗い海中だった。激しく白い光が明滅している。一瞬、ものすごい速さでうねる白い物が見えた。遠くの方で何人かいるのが確認できる。場面が暗転する。次に見えたのは小さな手と床。床にウーラ姫の面が落ちてきた。その後、映像の視点がすいっと上へと上がると、面鮹(めんだこ)族の族長、オオダが見えた。


「族長!」


オオダはひどく驚いているようだった。後ろから慌てた婆がやってくるのが見えた。また場面が暗転する。

次に見えたのは鏡の前にいるウーラ姫の姿。自身を映しているようだった。映像はその後また暗転し、冒頭の男の姿が見えた。だがその場は暗く、冒頭の男が剣を振り上げるようすが見えた。そこでぶつっと映像が切れる。


ぴしり、と嫌な音が虫眼鏡からした。


「・・・なんと。海神の眼鏡が壊れてしまった。」

「今のは間違いなくウーラ姫だった!やはり、この魚はウーラ姫だった!」


オモテは興奮しながら叫ぶ。

白い魚はうるさい、とでも言うようにオモテから少し離れたところに泳いでいった。


「落ち着きなさい旅人。今の映像を振り返りますよ。」

「・・・はい、・・・はい。」


今度は目尻に涙を溜め頷くオモテ。


「まず最初。すべての光に共通して見られる映像でした。光の創世記。我らをつくる光はすべてあの女性から生まれているのです。しかし・・・」


ラカンはここで言葉が詰まった。

オモテは不思議に思いラカンの顔を見る。

ラカンの顔が少し赤く、瞳孔が見開いていた。


「しかし、いつもとようすが違いました。今までは女性の指や足先から光が出ていましたが、今回の映像はかなり御身を削った後のご様子。そして、削り取られた光も特大のものでした。」


ラカンはそうしゃべりながら、今の出来事をノートにメモ書いてゆく。


「続いての映像。これも初めてです。暗い海中映像なので、我々のいる深海でしょう。明滅する光。あれは見覚えがあります。まるで、そうまるで海の雷戦争の時に見た神の怒り・・・」

「(神の怒り?)」

「そのあと見えた白いうねる何かと人影。まさに雷戦争の最前線の映像では・・・?」

「多分そうだろうな。母上らしき人の姿が見えた。」


ビワも言葉を放つ。

ラカンの手と口は止まらない。ぶつぶつ早く話ながら、オモテ達がいることも忘れ書き起こしていく。


「続いて、幼い手と男。男がひどく驚いていた。」


ここで、ふっ、とラカンが顔を上げた。そして駆けていた眼鏡を正し、オモテとビワの方を向く。


「・・・失礼、つい自分の世界に入ってしまいました。母上らしき人が見えた。ですか?」


ビワが答える。


「ああ。ワシの母は海の雷戦争最前列におり、発光しつづけたと聞いておる。一人特徴ある髪を使い光っている人がいたから、確定だろう。」

「雷戦争の前線に立っていた発光する姫。あなたは幻光オチョウの御子か。なるほど・・・」


ラカンはがりがりとペンを走らせる。


「旅人、先ほど3番目の映像に映っていた男を族長、と呼びましたね?」


ラカンはオモテに質問する。オモテの脳裏に一瞬映像の族長の姿が写った。


「はい。あれは面鮹(めんだこ)族の現族長です。後から巫女長の婆の姿も。」

「ふむ・・・なぜ2人は慌てていたのか?その後、白い女性が鏡の前にいたね。」

「ウーラ姫です。」

「そうか。では、この精霊様は、もとはウーラ様ということで間違いないでしょう。」

「!!!」


オモテはまた喜びがわき上がった。専門家のお墨付きだ。


「その後、また暗転、舞台は変わり暗い世界に創造神の姿お一人だった。・・・ああ、創造神とは男性のことだよ。」


そう言って、ラカンは立ち上がり、石を削ってできた黒い石版の前に立った。貝や珊瑚を削ってできたチョークで書き始める。


「旅人、そもそも私たちは太陽の光で体が作られている。それは知っているね?」

「はい。」

「私たちはケガをしたり、死んだりしたとき、血と一緒に光が出る。血が残っても、光が体から抜けきると死んでしまう。光こそ私たちの正体である。」


ラカンは石版に映像で流れた男女を描いた。

「最初の映像で見られた女性の方こそ、我らが太陽である。」


カッとチョークで音を立てて女性を指し示し、オモテに説明する。


「その横にいた男性こそ、我らが創造神である。我らは太陽と創造神の二人から創られているのだよ。」


ラカンはその後、男から女へ矢印を書き加えた。


「創造神は太陽を削り、二人でこの海に光をまいている。」


ラカンはさらに横に一体魔物を描き加えた。


「私は、長年ずっと疑問に思っていた。太陽が削りきられることがのだろうかと。今回の映像は初めて胸部から上しか見えない太陽が映っていた。おそらくこの仮説は正解だ。我々の元に新しい光が降ってこなくなりずいぶんと経つ。今の光はもともと誰かが持っていた物だ。昔から太陽は魔王によって退けられたと思っていたが、もしかしたら太陽は削りきられたのでは無いか?」


そのとき、部屋にノックの音がした。


「今取り込み中だ!」



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