ハタグルマの里⑦
「ああ、多分、光鉢だ。」
「光鉢ぃ?なんだそれは。」
「なになに?わぁ、きれいな指輪!」
オモテは右手の中指に指輪をはめて、自分の光を流してみた。すると、指輪の石の表面に波紋が広がった。オモテの目の前に自分の情報が載った画面が浮かぶ。
________________________
▼オモテ
種族:面鮹族
光量:59
能力:面相
称号:面を操る者
光の導き
夜の幕開け
________________________
「おお!すごい光量が増えてる!」
「あ?なんだ突然。」
「独り言怖いよオモテさん!」
どうやらこの画面は周りの者には見えないらしかった。
「ああ、すみません。これは自分の情報を確認することができる指輪なのです。」
「はぁ?」
「ビワ、指輪に触れて光を流してみてくれないか?」
「おお。いいぜ。」
ビワはオモテの指輪に触れ、光を流した。
オモテの前に追加で1画面、ビワの目の前に画面が2つ現れた。
________________________
▼ビワ・アンコ・チョウチン
種族:鮟鱇族
光量:23
能力:閃光
称号:灯火
カリスマ
夜の幕開け
________________________
「何だこれは!!初めて見たぞ!!!!」
「おお、自分にも見えます。」
「ええ~、いいなぁ。オモテ様、このオウムにも後で触らせてくださいね。」
オウムとオトヒメには画面が見えていない。
この画面は指輪装着者と、光を流した者が見える画面らしかった。
「もちろんですオウムさん。」
「わ、私も触らせてっ触らせて!!」
「はは。オトヒメさん落ち着いてください。後で。」
ビワは真剣に画面を見つめていた。
「これはオモテとワシの情報なのだな!オモテ!能力と称号とは何か!」
「ええっと」
オモテは婆に受けた説明を思い出す。
『光鉢は対象の光の力や状態を解析し、文字化したもの。どんな文章が出てくるかは儂にも予想はできないし、どんな能力なのかはわからぬ。これからお主自身が能力と称号を照らし合わせて理解していくのだ。』
「・・・確か、これを作った面鮹族の巫女長、婆は、これは対象者の光の力や状態を分析する装置で、自分がどんな能力を持っているのかを知る助けをする装置だと言っていた。どんな文章が出てくるかは婆にも誰にもわからない。使用者が能力と称号を照らし合わせて自分の力を知る必要があるんだと。」
ビワは食い入るように情報を見る。
「種族はいいな。光量はこれまで自分が体に取り込んだ光の量だ。」
「ワシは23。オモテは・・・59!?」
「え!!オモテさんってそんな年上だったの!?」
オトヒメがびっくりして茶器を落としそうになった。
「いえ。自分は面鮹族です。面に溜めた光を自分の身に移すことができるのですよ。」
「光量の量はそのまま強さに匹敵する。面鮹族はずるだのぉ。」
ビワが指輪に光を流すのを止め、ため息をついてオモテをやじった。
「悔しかったら開発してみるんだな。」
「!言うじゃねぇか。」
「まぁ、自分が開発した物じゃないんだけどな。」
「・・・でも、その力が周りに知られれば面が奪われたり、利用されそうだね。」
オトヒメの発言に一瞬しんっとなった。
「・・・そうですね。もしかしたらそれが、面鮹族が珍しい種族と呼ばれる要因の一つかもしれませんね。」
「何か知っているのかオウム。」
「いえ、姫様。面鮹族は初めて世海を照らしたとされる一族である。という話は誰でも知っている話ですよね。」
「ああ。子供の頃よく聞いたおとぎ話だな。」
「そう。おとぎ話なのです。面鮹族の方はおとぎ話の中の種族ではないですか。」
ビワは目を細める。
オモテが話に割って入った。
「どういうことですか?」
「オモテ様、多くの人は面鮹族を見たことがないのです。」
そう言われて、オモテは確かに村の外に出ていく面鮹族はごく限られていたことを思い出した。
「確かに、自分たちの村はかなり他の村里からは離れていました。村人の多くの者も大抵村の中だけで生きていきますね。」
ビワはびっくりした声を上げた。
「はぁ?そりゃぁつまらなさすぎんか?」
「そもそも、村の外に行くという選択肢すら自分の中になかったな。村の外に行く者も変わり者っていう扱いだった。」
オトヒメも会話に混ざる。
「でも、他の種族の人とは交流しなかったの?」
「村に行商で別の種族の方が来ることがたまにありましたが、いずれも顔なじみの行商でした。それこそ鸚鵡貝の方々にはよくお世話になっていましたよ。」
「ええ!私の管轄ではありませんでしたが、確かオオベソ屋が担当でしたね。」
「そうそう、オオベソのじいさま。じいさまが持ってくる簪は村の娘達に人気だったよ。」
オモテとオウムでオオベソのじいさまの話が始まった。
「もうオオベソのじいさまも…」
「話がそれているぞ。オモテ、不思議に思わんか。面鮹族はワシたちが知る限り唯一光を体に無尽蔵に蓄えることができる種族だぞ。普通は年に1度光を1個だけしか蓄えることができない。光量は力に匹敵するから面鮹族はいい軍事力になる。指導者になる。・・・奴隷になる。保護対象になる。加えて初めて光付与をした一族だ。利用価値が高い。だが、今や誰も面鮹族を見たことがないくらい身近にいないのだ。過去、何か理由があって姿を消したか、隠れ住んでいるとしか思えぬ。」
確かに、ビワの言うとおりだ。子供も知るおとぎ話にも出てくるくらいの種族だ。もっと身近にいてもいい種族だと思う。だが、辺境の地にかたまり住んでいるのだから、昔何かあったに違いない。
「・・・確かに。だが、自分は過去何があったのか知らないんだ。」
「当事者の方が知らないなんて、よっぽど悪しきことがあったのでしょうか?」
オウムが悲しそうな顔をしてぽそっとつぶやいた。
「いや、自分がそういう話を聞く前に村を出てきてしまったのかもしれない。本来、この面の能力もある年齢に達し、かつ適正のある者にしか伝授されないと婆が言っていた。自分は緊急で面の能力だけ教わって村の外に出たから、まだ知らないことがあるのかもしれない。」
「ふむ。なるほどなぁ。」
「でも、この話は他言無用の方が良さそうですね!」
「ああ。オウム、オトヒメ、オモテの能力については他言無用だ。」
「そうですね。命の恩人様に何かあってはいけません。」
「ええ。今後とも仲良くしたいしね。」
その場にいる全員が力強く頷いた。
「皆さん・・・ありがとうございます。」




