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ウーラの行方

「―――で、その白い魚がウーラ様かもしれないって?」


昔話をみなに聞かせていた婆が、厳しい表情でオモテを見つめながら話しだした。

オモテは、ウーラの仮面を拾い、魔物の首をもぎとり、生きのびた民が避難していた広場の中央へ運び込んだ。


「魔物の腹を裂き、内容物を確かめましたが、ウーラ様のお体はどこにもありませんでした。ウーラ様はかまれた際に光となり、御身を仮面に移されたのではっ――――」


オモテがそう言い切る前に、族長がオモテの胸倉をつかんだ。


「言い残すことはそれだけか!!!?」


族長の怒号が響き渡る。そして、腰に携えている剣を引き抜き、オモテを今にも切ろうとする。


「族長!剣を納めください!」


どよっと周りが族長をおさめにかかる。


「離せ!!そんな魚が我が娘なわけあるか!ウーラはどこだ!!ウーラを探せーーーッ!!!!!」


族長が顔を真っ赤にして周りの兵に指示する。


「しぃずぅまぁれぇぇぇええい!!!!!!」


 面鮹(めんだこ)族の巫女長、婆の強い一声に、シンッとその場が静まりかえった。


「オモテ、オオダ族長この場にとどまれよ。兵士どもにはオモテが倒した魔物の腹の中を再度確認させよ。それ以外の者はおのおの家へ帰り、休むのじゃ。みな突然の魔物襲来で疲れておるだろう。」

「婆!!」

「オオダ、婆に任せよ。姫の居場所に心当たりがあるのだ。」



しばらくの時間が過ぎ、その場にはオモテ、婆、族長の3人が残されていた。


「・・・兵士どもの報告でも、確かにウーラは発見されなかったみたいだの。さて・・・話を戻すが、本当に姫の仮面から大きな光があふれ出て、この魚が出てきたのじゃな。」


オモテは姿勢良く、婆の目をまっすぐ見つめて答えた。


「はい。」

「ふぅむ・・・。オオダ、よく聞きなされ。我らが巫女姫のみに伝わる技があってな。我らがつくる面は特殊での。自身の光、いわゆる魂を面に宿すことができるのじゃ。」

「魂を・・・?」


族長は下を向いていた顔を婆の方へ向ける。


「命の在処を肉体から面に移す。寿命ではなく、巫女の命が危機にせまられたとき、魂が面に移される。この技は慣例の儀式で巫女姫就任時にやることなのじゃが、その結果が起こったことは婆の生涯をもってしてもない。が、オモテの話では、仮面にウーラの姿が浮かび上がったのだろう?だからの、この白い魚が巫女姫である、ということも十分に考えられる。」

「そんな・・・」


族長はとても信じられない。と眉間にしわを寄せ、顔を手で揉みほぐしながら唸った。


「仮に姫だったとして、姿がこのままずっと魚なのかどうかもわからない。それに、白い魚として姫の光が抜け出ているのに、未だ姫の面には光が宿っておる。これは・・・どういうことかの?―――詳しいことは、光に詳しい種族に教えを請うた方がよいかもしれん。」

「ぅうむ・・・婆が言うことだ・・・。そういうこともあるのだろう。光に詳しい者・・・チョウチンの里のものはどうだろうか。」

「そうじゃな。」


族長はよし!と膝に手をついて立ち上がった。


「よし!オモテ、お主に命令を下す。ここから姫の面と、白い魚とともに西に行き、チョウチンの里の里長、オチョウ殿に会いに行け。姫の最後の姿を見たのはお前しかおらん。詳細をオチョウ殿に話し、この白い魚が本当にウーラなのか判断をあおぐのだ。」


族長は姫の面からオモテの方に顔を向け、指示を出した。

オモテは深々と頭を下げながら命を承った。


「承知しました。」

「オチョウ殿には書簡を送っておく。・・・正直、まだ儂は混乱しておる。私の可愛い娘が、本当にこの魚なのか?・・・オモテ。お前の日々の仕事ぶりは聞いている。先程は取り乱して悪かった。道中何があるかわからん。魔物を倒したお前の腕は信じておるが、気をつけて行くのだぞ。」


扉の前まで移動しながら族長はオモテに指示を出す。


「承知しました。・・・族長、本当にこの白い魚・・・ウーラ様も連れて行ってもよいのですか?」

「・・・だが、実物を見せればより詳しいこともわかるだろう。それに、魚自身、お主とともに行きたいようだしな。」


白い魚はずっとオモテの頭の上から離れない。頭から下ろそうとしても、断固として下りないのだ。

婆も立ち上がる。


「よし。そうと決まればオモテや、一応お主の強さを確認しておくとしようか。」


そう言って、自分の部屋へとオモテを連れて行った。


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