ハタグルマの里②
二人は魔剣専門店を離れ、別の店を探しに歩き出した。
「・・・次だ次!でも収穫はあったなオモテ!剣に石つけて光付与すると魔剣になることがわかったじゃねぇか。」
「ああ、そうだな。」
オモテは腰に下げた剣を左手で触る。ずっと使ってきた剣である。次の物に買い換えることに気が乗らなかった。
そうこうしているうちに鍛冶屋についた。看板には『こんにゃく鍛冶屋』と書かれている。
二人は中に入った。
中は誰もいなかった。だが、店の奥から鋼を打つ音がする。
「すみませーん。」
オモテは店の奥に声をかける。
すると、奥から一人の女の子が出てきた。
「いらっしゃい!こんにゃく鍛冶屋です。」
出てきた女の子は黄桃色のショートカットで、耳の先が黒色をしていた。耳がクサウオやコンニャクウオに見られる扇のようなヒレをしており、首元はクサウオのヒレをリングにしたような首当てアーマーをしている目が青い小柄な子であった。
「刀を手入れしてもらいたいのです。」
「はい。では拝見しますよ。」
女の子がオモテから剣を預かる。
「ずいぶんと頑張ってきた子みたいだね。・・・刀身は何からできているの?」
「確か、ベルデアグア鉱石だったと思う。」
「おっけー。手入れに3日ほしいよ。」
ビワが会話に入ってくる。
「なぁ、普通の剣から魔剣に加工はできるのか?」
「そうだね・・・この剣は宝石がないから、つける加工をするか、剣自体に印をいれるかをしなくちゃあいけないね。」
「剣自体に印?」
オモテが質問した。
「ええ。効果が限定されてしまうけれど、刀身に彫りを入れるの。そこに光付与をすると魔剣になる。でも、すごい技術がいるから、ウチでできるのは彫りを入れることだけね。あとは付与術士に付与してもらわないと駄目だけれど。」
それを聞いてオモテは思い出した。そういえば、面は各々が好きな彫りを入れる。婆が面に光付与するとき、彫りが光っていた気がした。
「彫りをお願いしたい。」
「わかった。どんな彫りがいいとかある?どんな効果にしたいとか。」
そういって、女の子はカウンターの下からどすんと大きい分厚い本を出した。
女の子はぱらぱらめくる。どうやら様々な印模様が描かれており、それぞれ発揮する効力が異なるようだ。
「剣に自分の光が通るようになってほしいです。」
「自分の光を?」
女の子がめくる手を止める。
「うーん・・・」
うなりながら印を探す。
「・・・光を通して、どのように扱いたいの?」
女の子はオモテに問いかける。
「刀を好きなときに発光させたり、鋭さを上げられたりするといいです。」
「剣を発光?ランタンじゃ駄目なの?」
「駄目なんです。」
「発光の印ならあるけれど、それは印にこめた光が発光してくれるからあなたの光は込められないよ。」
そんな会話をしていると、オモテの首元にいた白い魚がすいっと泳ぎ出て、オモテの面をコツコツついばんだ。
「わっ!精霊様だ!」
「ウーラ様!」
白い魚は面をつつきつつ、女の子の頭の周りを回った。
「精霊様・・・もしかして面をみてもらいたいんじゃねぇか?」
ビワが指摘した。女の子がオモテの額あたりに掘られた模様を見る。
「それ、印?」
白い魚がつつくのをやめる。
「ああ、自分の村の慣習です。彫りを入れて、村の巫女様に祈祷してもらうと、面に能力が宿るのです。」
「それも面に光を貯めて、自分の力に変えることができるそうだ。なぁ鍛冶屋、これ光付与か?」
「よく見せてもらってもいい?」
オモテは面を外し、女の子に渡した。
ビワはオモテの顔を横から凝視する。
「(オモテの顔、初めて見た。)」
女の子は印を指でなぞる。
「・・・確かに、これは印として機能しているようですね。でも、こんな印初めて見ました。」
「それは自分が彫ったものです。」
「!へぇ。」
「でも、自分の村では決まった模様ではなく、各々が決めた模様を彫るのです。印といえるものでは・・・」
「面、光を貯める、もしかして、あなた様は面鮹族!?」
女の子は面から目を離し、バッと顔を上げてオモテを見る。
「あの伝説の!古に光を宿すことができる入れ物をつくり、暗い世海を初めて照らした一族!」
「は、」
「お会いできて光栄です!!鍛冶屋としてお会いしたい方々でした!!」
女の子はカウンターから身を乗り出しオモテに挨拶をする。
「私オトヒメといいます。鍛冶屋の端くれですが、ぜひお聞きしたいことが!!」
「あ、」
「この面はいったいどういう原理ですので!?面に光を貯めて自分の力にする?そんなものがこの深海に?すごい!!大発明!!」
カウンターから落ちるのではないか、というほど身を乗り出しオモテに詰め寄るオトヒメ。
見かねてビワが止めに入った。
「落ち着け鍛冶屋。」
「・・・はっ!!すみません!!!!」




