夜への攻撃方法
瞬きをした。目を閉じて、次に目を開けたら3m先に1体の夜がいた。その夜は前に見た夜とは違うものだった。
全身細い布で巻かれていて、ずたぼろな死体のような夜だった。幸い歩く速さは遅い。それはふらふらとオモテ達に近づいてきていた。
オモテは剣を片手にもつ。ビワも拳にはめたグローブをしっかりはめ直す。ビワの武器は自身の拳だ。柔らかい体をしならせ、鞭のように速いスピードで相手を殴りまくる戦法だ。
まずビワが夜を殴りにかかった。
ビワの拳が夜にあたったとき、その拳が夜をすり抜けた。
「っ!だめだ!拳があたらねぇ!」
ビワはもう一度振り返り殴りかかろうとしたとき、目の前で夜がばっと腕を広げたのを見た。オモテが2人のすぐ側まで移動する。
「(抱きつかせるものか!)」
面から足へ光を移動させ、一瞬で間合いをつめ切り倒す。
しかし、オモテの刃は夜を切り裂かずすり抜けてしまった。
ビワが夜に羽交い締めにされてしまう。
「!!!放せ!!」
ビワがじたばた暴れる。
夜はその腕の力を強める。どうやらビワをへし折る気のようだ。
「!!!!明かりをつけるぞ!!」
オモテは提灯の明かりを灯す。
灯した瞬間、夜はシュワッとほどけて砂が舞うように消えていった。
ドサッと地面に尻餅をつくビワ。
「はぁッはぁッ」
「ビワ!大丈夫か!」
ビワは肩で息をしていた。
「はぁッ・・・あぁ・・・大丈夫だ。」
「よかった。夜は本当に物理攻撃が効かないな。」
「あぁ、母上の言っていたとおりだ。」
「有効手段は光で照らすことだけか・・・」
「それだオモテ!」
「え?」
「光が苦手なんだろ?じゃあ、光で攻撃すりゃあいい!」
名案だ!というようにビワがばっと立ち上がった。
「あ」
ビワがぴたっと動きを止める。
「だが、どうやって・・・?」
「それなら、なんとかなるかもしれない。」
「本当かオモテ?」
オモテは額の仮面に触れた。
「そういえば、前魔物と戦ったときに言いませんでした。自分たち面鮹族は面に光を貯め、その光を自分の力に変換できるのです。提灯をもらう前は面から光が出るようなイメージで、ライトにする使い方をしていました。今までやってみたことがありませんでしたが、もしかすると、光で攻撃するイメージをすれば。・・・倒せるかもしれない。」
「それだ!!!」
それからオモテとビワは光で攻撃する練習を始めた。
オモテは剣に面の光を流し込むイメージをしてみる。
「(光の移動を感じる。・・・面、首、肩、腕、手。・・・手までは光が移動するが、剣まで光が流れていかないな。)」
何度やっても光は剣に流れ込まなかった。
「・・・難しいな。面の光はあくまで自分の体までしか行き渡らせないのか?」
「そりゃあオモテ。他の物に光を入れるなんて、光付与だろ?おいそれと簡単にできることじゃねぇさ。」
「光付与?」
「んぁ?お主、光付与知らねぇのか?ほら、例えばこの提灯。」
ビワは腰につけている提灯を指さした。
「この提灯は誰でも作れるわけじゃない。魔物などから落ちる光は普通、勝手に海の天上に向かって行くだろ?光をその場に留めておくっていうのは難しいことだ。光の軌道を提灯の中でぐるぐる回り続けるように変えて、封じ込めの術を施してやらんと出て行っちまうらしい。」
それを聞いて、オモテは自分の面を見る。
「でも、自分の面は勝手に光を吸収してくれるのだが。」
ビワはそれを聞いて半目で答える。
「それはワシも知らん。面に特別な術でも施しているんじゃねぇのか?」
「特別な・・・」
オモテは面の作り方を思い出す。面鮹族の面は、10歳、20歳、30最と10年ごとに個人が珊瑚を削り作り出す。作ったあと、願いを込める。より健康で過ごせる10年でありますように、だとか。その後は・・・
「・・・そうだ、作った面は村の婆がいったん預かるんだ。その場で祈祷してもらって返却される。あの祈祷が光を集める付与をしているのかもな。」
「へぇ、付与の現場を見られるなんてラッキーだな。どんなふうに付与していた?」
「婆の体がほんのり光って、面に触れるだけだった。」
「ふむ・・・やっぱり見るだけじゃわからねぇのかな。」
「(いつも婆は思いをこめて面を触ると言っていた。面が皆を助けるように。と。)」
オモテは剣を取り出した。剣を見つめる。村の警備兵を任されたときに支給された剣。刃こぼれしている。幾度となく自分の身を守ってきた剣だ。オモテは剣に思いを込める。夜が切れるような剣になれ。ウーラ様を守れる剣になれ。
思いを込めながらオモテは手の平の光を剣に移動させてみる。だが、光は入らなかった。
その日からオモテ達は次の聖都に向けて歩いて目指しつつ、出てきた魔物と戦い、光付与を試みていた。ビワは、自分でもオモテみたいに光を使い身体強化できないか模索していた。
そもそも光を体のある場所に一点集中させるなんてことしたことがなかったから、その練習からだった。これがなかなか難しい。集中し続けないと、体中に光が拡散してしまう。
「(こんなこと普通にできているなんて。・・・オモテ、すごいやつだ。)」
ビワは集中しすぎて頭が痛くなったので、ぼーっとオモテの様子を見ながら考える。
ワシもオモテのように速く移動してみたい。それにいつも全身で発光してしまう。これが拳だけ光らせることができれば、夜に攻撃が通るのではないか。
チョウチンの里を出てかなりの月日が経った。ついに暗い深海の海の向こう側に、大きな明かりを見つけた。
「おい!オモテ!明かりだ!!!」
ビワはここ最近で一番テンションが上がる。
そして次に目に入った物を見てビワが叫んだ。
「見えた!ハタグルマの里だ!!!」
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