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面ーオモテー:深海の勇者  作者: タナバタネコ
チョウチンの里
12/58

不気味な音楽の音が激しくなってきた。

フウセンだった女性も死の行進の後を追う。部屋をぐるぐる周り、オモテ達を囲う異形達。ビワもオモテも、死の行進を目にしてからまったく身体が動かない。音楽が頭の中でぐわんぐわん反響する。そのとき、たくさんの異形がオモテ達に襲いかかった。その爪で、その牙で、その矛で、体を切り裂かれる。怪我したところから自分の光が漏れ出た。オモテは初めて見る異形の姿から、体中を切りつけられる恐怖から恐慌状態に陥った。暴れて異形達を振り払うも、その腕は異形の体をすり抜けて触れることすらできなかった。オモテとビワは痛みで身をよじる。息があがる。何もできない。最後に出てきたフウセンから出た燃え光る女性が、フウセンウナギのような燃えさかる頭部を覆っていたフードのような口を大きく広げ、オモテ達を包み込もうとした。そのとき、オモテの服から白い魚が飛び出し、ビワの頭の上に乗る。そして、白い魚はビワに自身の光を強制的に吸わせた。


「・・・!!怖くない!!」


ビワに、なんでもできるような気になる高揚感が与えられた。ふっと恐怖状態が解除されたビワは、ありったけの力をこめて全身を発光させる。その光にかき消されるように、フウセンだった女性も異形達も消えていった。

肩で息をしつつ、ビワは深呼吸をしてからオモテの方を向いた。


「お主・・・」


そういえば名前を聞いていなかったとビワは気づいた。


「・・・」

「失礼、母の首飾りを渡してもらうぞ。」


発光を続けながら、ビワは今も震えるオモテの首元からオチョウの首飾りを探し取り、光らせた。

そのときになってビワは自身が光るのを止めた。同じタイミングで白い魚はオモテの元に戻っていった。


オモテは今見た光景が信じられなかった。あれは何か。一方的に切りつけられ、あと一歩で死ぬところだった。オモテとビワはしばらくその場から動けないでいた。

何時間経ったのか。こわばりが解けたオモテはビワに問いかけた。


「夜、とは何ですか。」


ビワは、疲れた顔で白い魚をぼーっと見ながら口を開いた。


「これは母上から聞いた話だ。夜は、暗い場所で現れる。だから、我ら光る能力のある種族は夜に強い。夜は見てはいけない。夜は巣くう。ワシも初めて見たが、夜は人の眼から現れるんだな。眼の闇がゲートである。一度夜を見てしまうと、今までは見ることができなかった夜の者を見ることができるようになる。夜に追いつかれると、眼から夜が出てくる。そして・・・おそらくその者も夜の者になる。」


「では、先ほどの最後の光輝いていた女性は・・・」

「多分、フウセンだ。」

「では、夜の者はみな元は同じ人ということですか?」

「わからない。でも、そうだと思う。何年も前から、ずっと、夜は拡大しているのだと思う。」

「・・・自分たちは夜を見た。またあれが現れることになるのですか・・・」

「・・・」


ビワが話を変える。オモテの首元にいる白い魚に顔を向ける。


「先ほどは精霊様に助けられました。本当にありがとうございました。」


白い魚はビワの頭の周りを一周し、オモテの首元に戻った。


「自分は何もできず、申し訳ない。」

「いや、拘束を解き助けに来てくれたじゃないか。ありがとう。」

「いえ・・・里の皆が心配しています。帰りましょう。」


オモテとビワは、首飾りを絶えず光らせながら死海をあとにした。

死海をぬけ、渓谷を進むオモテとビワ。

オモテは自分を責めていた。


「(まったく役に立てなかった。情けない。いくら最近モンスターを倒し慣れていたからって、油断していた。なんとかなるだろう、と。身体がまったく動かなかった。)」


姫様がいなければ、ビワが光らなかったら、今頃自分は死んでいただろう。

一方、ビワは興奮していた。自分が光ったことで夜が逃げていった。夜は怖いものではない、と。


「暗い顔をしているな。・・・えーっと」

「あぁ、自己紹介が遅れました。オモテです。」

「はは。見たところあまり歳は変わらないだろう?敬語にしなくてもいい。」

「いえ・・・、オチョウ様の娘様ではないですか。」

「気にするな!命はってくれたんだ。遠慮するなよ。」

「では・・・ビワ様も夜を前にも見たことがあるんですか?」

「ビ・ワ!」

「・・・ビワもあるんですか?」


オモテが呼び直すと、ビワは満足したようにフンスッと息を吐いてオモテの質問に答えた。


「少し敬語が気になるがまぁいいだろう。今回が初めてだ。だが、ワシの光は奴らを撃退する!何も怖がることはないさ!オモテ!」


二人は暗い道を進む。


「・・・ところで。オモテは里の者ではないよな。その面。見たことがない。前に母上が言っていた面鮹(めんだこ)族か?」

「はい。自分はオチョウ様にこの白い精霊様の正体を見てもらいに来たんです。」

「ふーん。なぜ?」

「詳しく話すと長くなりますけど・・・」

「かまわぬ!聞かせろよ!」


オモテはこれまでの経緯をビワに話した。里に魔物がやってきたこと。巫女姫ウーラ姫が襲われたこと。白い魚がウーラ姫の可能性があること。光に詳しいオチョウ様の意見を聞きに来たこと。白い魚には大きな2つの光が宿っていて、一方の光はウーラ様の可能性があること。


「・・・で、オチョウ様と話をしていたら死海に襲われたんです。」

「なるほどのぅ。」


ビワは顎をさすりながら話を聞いていた。


「しかも、今後は夜が襲ってくるかもしれない中、ウーラ様に光を捧げ続ける旅をする必要がある、と。」

「…」


痛いところをつかれたかのようにオモテの顔がゆがむ。


「お主、先ほど夜を前になーんもできなかったしなぁ?」


ビワがニヤニヤと意地の悪い顔をしながらオモテに顔を近づける。ビワの方が伸長10cm高いので、ビワは少しかがんでわざわざ顔をオモテの前に突き出した。


「…何が言いたいんですか。」

「喜べ!ワシ様が一緒について行ってやろう!」


オモテの顔の前ににっこりときれいに笑ったビワの顔があった。


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