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ライラを君に  作者: ルカ
2023年
4/10

向日葵の花言葉


2023年8月某日


うだるような暑さの中、俺は喫茶店でかき氷を食べていた。


夏はやっぱこれだよなぁ、と昔ながらのかき氷につかぬまの休息に癒されていた。


次の仕事まで時間があったため、近くの喫茶店で時間を潰している。


次の仕事は、朗読のイベントパンフレット撮影だ。

都内のスタジオで行うとのことで、マネージャーから場所と時間が送られてきた。


「16時だからまだ早いか」


ここから歩いても5分もかからない。

まだ長い針が1の過ぎたところなので、時間には余裕がある。


今日の現場は初めて仕事をするスタッフさんが多く、声優でも人前にでる仕事が多いが、対人関係は苦手な俺にとってはじめましての現場は正直苦手だ。


仕事なのでそんなことも言ってられないけど。


まだ早いが遅刻するより良いだろう、とお店を出て30分前にはスタジオに着いた。


「おはようございます」


時刻は15時過ぎ。おはようには随分すぎた時間だが、この業界の決まり挨拶はこれだ。


スタッフさんに案内されて控え室に入ると、何度か担当してもらっているヘアメイクさんと初めて会う衣装さんが準備をしていた。


「あ、間宮さん。おはようございます。まだ少し時間あるので休んでてください」


ヘアメイクさんに言われ、忙しなく動く2人に申し訳なくなり、俺一旦外に出て、1人になれる場所を探すと非常口の扉が目に留まり、そのドア開けた。


外につながっているそこは、暑かったが閑静な住宅街に囲まれているせいかとても静かだった。


「あつ......」


日陰ではあるものの、あつさはどうしようもない。

マネージャーに連絡してみたが他の現場が長引いてるようでこっちに着くのは16時を過ぎるようだ。


まだ30分ぐらいあるからな、と遅刻するよりと早く来すぎた自分には他に時間の潰しようもなく、近くのコンビニでも行くか悩んでいると、突然後ろの非常ドアが開いた。


俺は咄嗟にここにいたらまずかったか、と思い怒られるかと思ったがその扉を開けた人物に俺は驚きを隠せなかった。


...この子は莉乃さん...だよな。

俺の出るイベントによく来てくれる...いわば自分のファン...

俺が見間違えるはずがない...だって...いや、なんで彼女がここに...


「間宮...和樹さんですよね?」


彼女は少し戸惑いながら俺に聞いてきた。


俺は咄嗟に彼女の手を引き、ドアを閉めると彼女は驚いていた。

ごめん、俺も驚いてる。なぜならずっと探していたから。


俺は壁ドン状態で内心は心臓が高鳴っているが、表向きポーカーフェイスで彼女に尋ねた。


「ねぇ、きみ、イベント来てるよね?」


大丈夫。俺だって役者だ。これくらい出来る。


「はい?」


彼女は何を言われたのかわかっていない表情できょとんとしていた。

その顔に、思わずにやけそうになる。

そして、彼女は俺の目をじっと見つめこう答えた。


「誰かと勘違いしてませんか?」


嘘。女性は嘘をつく時、相手の目をじっと見る、と本で読んだことがある。

彼女は明らかに動揺し、嘘をついている。


「嘘。俺が見間違えるわけが無い。莉乃さん、でしょ?」


俺もじっと見つめ、名前を言ったことに観念したのか、はぁ、と息をついた。


「ごめんなさい。嘘吐きました。たしかに間宮さんのイベントに行ってます...けど、今日は仕事で、私は今回のプロデューサーとして居ます。公私混同はしません!だから...」


彼女があまりにも素直にそして意思をハッキリ言う姿が可愛く、そして面白く思わず俺も笑みが溺れた


「ごめんごめん。別に怒ってるわけじゃないよ」


参ったな、と俺は髪をかきあげると彼女に片手を差し出してきた。


ぽかんとしてる彼女に「握手」と呟くと恐る恐る手を握り返してきた。


「プロデューサーの莉乃さん、よろしくね?」

「あ、、、はい。じゃなくてなんで名前...」

「だって、何回かサイン会来てくれてるでしょ」

「どこまでバレてるんですか...」


俺はさらっと伝えると、彼女もそこまでバレてるとは思わなかったようで、不思議そうに俺に問いかけてきた。


俺はちょっと意地悪したくなりそっと自分の唇に人差し指を当て呟く。


「秘密」


彼女は急にあたふたし始め、暑さからか顔が赤くなった気がした。


「そうだ、間宮さん!ここ暑いから控え室行きましょ?」


突然話題を替えるように話はじめた彼女にまだ悪戯心が消えない俺はからかいたくなってしまった。


「......キミもいる?」

「控え室には居ないですよ、さすがに」

「えー...」


せっかく出逢えたというのにさすがに仕事中は彼女もプロのようで簡単には折れてはくれなさそうだったので俺も引くことにした。



―――――――――――――――――――――――


「お疲れ様でした!」


撮影も無事終わり、衣装から着替えてる間、カーテンの向こうではマネージャーの青山さんとプロデューサーの彼女が和気藹々と話をしている。


歳も近いからなのか、彼女の雰囲気からなのか、和やかな空気が伝わってくる。


「次は稽古ですかね?」


マネージャーが彼女に確認すると日程などは改めて連絡すると仕事話を二つ三つやりとりすると、エレベーターがちょうど到着した。

俺はエレベーターのドアが閉まる直前彼女に声をかけた。


「稽古でもよろしくお願いします!」

「こちらこそよろしくお願いします!」


ニコニコと笑顔を崩さず、お辞儀した彼女はそのままエレベーターの扉が閉まるまで頭をあげることは無かった。



「あの子、プロデューサーだってね、若いのに凄いよね」

マネージャーは彼女の人柄の良さが気に入ったようで珍しく話してきた。

「そうっすね。そーいえば、プロデューサーの名前なんて言う方でしたっけ。あんまり話す時間なくて」


それっぼいことを並べ今までカノジョの名前しか知らなかったことを思い出し、さりげなくマネージャーから聞き出した。


マネージャーは彼女から貰ったという名刺を取り出し「雨宮莉乃さんよ」と言うと、俺は、分かった。と伝え、頭の中で復唱した。


「じゃあ、私は次の現場に行くから、間宮さんはこのまま帰る?」

「そうっすね。飯食って帰ります」


スタジオのビルを出て直ぐにマネージャーと解散し、お互いバラバラの方向に歩いていく。


ふと、道端沿いに向日葵が咲いていた。

ここの持ち主が植えたであろう向日葵はうっすら暗くなり夕方のオレンジ色に染まり黄色の花びらと合わさり綺麗に咲いている。


俺は思わず写真を撮ろうとしたら、間違えて写真検索を行っていた。


「あっ...」


ひまわりの写真と共に出てきたサジェストを開くと...


ひまわりの花言葉『あなたを見つめる』


俺は気づいたら向日葵の写真をSNSにupした。


はたして彼女はこの意味に気付いてくれるかどうかなんて考えていない。

これは俺の独りよがりだが、このチャンスを俺は逃してはいけないと心のどこかで感じていた。

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