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リアムへのプレゼントを考えました

*本日三度目の投稿です!読んで下さってありがとうございます(*^-^*)。それから誤字報告もありがとうございます<m(__)m>

翌朝、私たちは試食品のピンクソルト・チップスと麦茶をトレーニングの見物客に配って歩いた。


見物客はゆうに100人を超えているし、セブンズというスポーツの名前も領民の間で広まってきているという。


チームのメンバーだけでなく、アンナも試食品を配るのを手伝ってくれている。


リカルドはまだアンナのことを疑っているみたいだけど、私は彼女がそんなに悪い子だとは思えない。


アルベールと仲がいいし、彼は人を見る目があると思うのだ。


今日はアルベールも見物客に試食品を配っていて、見物客の女性陣に大人気だ。


「あんた、イイ男ね~」


なんて言われて、ベタベタ体を触られているのを見てアンナが複雑そうな顔をしている。


やっぱりアンナはアルベールが好きなんだろう。


私にできることは何もないけど……なんてぼーっと考えていたら、見物の子供にシャツの裾を引っ張られた。


「ねぇねぇ、ミラ姉ちゃん! これ、すっごい美味しい! もっと食べたい!」


その男の子に追加でピンクソルト・チップスを渡すと満面の笑顔で口一杯に頬張った。


「すっごい美味しい!」

「マジやばい!」

「この冷たいお茶もさっぱりして美味い!」


好感触の声が聞こえて、私の胸は弾んだ。


うまくいきますように……!


その日のトレーニングも大変に盛り上がった。


相手チームもやる気が出てきたのか、朝のトレーニング以外にもチームで集まって自主練しているらしい。


うーん、うちも負けられない!


「俺たちは絶対に負けねーぞ!」


ヒゲのラルフとポニテのトーマスは相変わらず強面で凄んでくるが


「これ……うめぇな」


リスのように頬を膨らませてピンクソルト・チップスを食べる姿は大変微笑ましいものだった。


*****


そして、私は本当にアンナから刺繍を習い始めた。


なぜ突然刺繍を?と思われるかもしれない。


私はリアムから手作りの誕生日プレゼントをもらって、とてもとても嬉しかった。


涙が止まらなくなるくらい嬉しかったのだが、自分は彼の誕生日にプレゼントをあげていなかったことを今更ながら深く悔いた。


あの時は飲茶パーティの準備に夢中でプレゼントを考える余裕がなかったんだよな。


恋愛経験値の低い女はこれだからダメだ。情けない……。


激しく後悔した私は、何かプレゼントをお返したいと思ったんだ。


ありふれているけれど、ハンカチに刺繍をしてプレゼントできたらいいな……なんて。


てへっ。柄じゃないから照れるけどさ!


アンナにそう説明すると、彼女は驚いたように目を瞠った。


「ミラ様とリアム様は……とても仲が宜しいのですね?」


ん? 仲が悪いと思われていたの……かな?


「うん。仲良い方だと思うよ。すごく大切にしてくれるし、私もリアムが世界で一番大事な人だから……いつでも大好きっていう気持ちを伝えたいなって思ったの」


「それはとても大切なことだと思います」


アンナがしみじみと言った。


「リアムが私の誕生日に手作りのクッキーをくれて、それを見た瞬間に感動して涙が止まらなくなっちゃって」


「まぁ、手作りのクッキー……。殿方がそんなことをしてくださるなんて、感動しますわね」


「でしょ! リアムは『形が悪いから食べなくていい』とか、すごく気にしていたけど、私はとても嬉しかったわ」


「素敵な誕生日だったんですね」


「うん! 初めてデートした場所に行って、このネックレスももらったの」


いつも身につけているタイガーアイのネックレスを見せると、アンナが微笑んだ。


「本当に……リアム様の瞳の色と同じ。とても綺麗。リアム様の愛情が感じられます」


ん……? アンナはリアムに会ったことがあるのかな?


どうして彼の瞳の色を知っているんだろう?


……記憶喪失は?


様々な疑問が一瞬で浮かんだ。


でも、ま、リアムは有名人だしな。


「……うん。ありがとう。だから、私もリアムに喜んでもらえるようなプレゼントがしたくて。ハンカチに刺繍をして贈ろうと思ってるの。こうやって教えてもらえるととても嬉しい。本当にありがとう!」


「どういたしまして。どんな柄にするのか決めてらっしゃいますか?」


「ありきたりだけど、リアムのイニシャルを刺繍しようかと思ってるの。シンプル過ぎる? 地味……かな?」


「いえ、そんなことはないですよ。ただ、ミラ様は器用でいらっしゃるから、もう少し複雑な模様も入れられるかもしれませんよ」


「え? ホント? 嬉しいな。えっと、どんなのがいいかな? ウィンザー家の紋章は……獅子が入っていて初心者にはちょっと複雑すぎるのよね」


アンナは顎に指を当てて少し考えていた。


「刺繍を習いたての頃は花を刺繍することが多いんです。何か思い出の花とかございませんか?」


「花かぁ。うーん、ないなぁ」


「あ! そうだ。ミラ様、ミラ・フラワーという花があるのはご存知ですか? 白くて可憐な花なんですが、刺繍がしやすいと思います。それはいかがでしょうか?」


「それいいね! 教えてもらえる?」


「もちろん! 本当は白い花ですけど、ミラ様の瞳の菫色で刺繍されるとリアム様は喜ばれるかもしれませんわ!」


「……え? そう……かな?」


「そうですよ! ミラ様もリアム様の瞳の色のネックレス、嬉しくありませんでした?」


私はリアムの瞳の色を映したタイガーアイを握りしめた。


確かに!


「うん! じゃあ、そうするわ。素敵なアイデアを出してくれてありがとう! アンナに刺繍を教えてもらえてすごく嬉しい」


そういうとアンナは恥じらうように微笑んだ。可愛い!


そんな私たちをアルベールは穏やかな笑みを浮かべて見守っていた。

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