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遠距離生活について話し合いました

*おはようございます!読んで下さってありがとうございます(*^-^*)。

「どうして謝るの? 謝るなら私でしょ。私、やっぱり出しゃばりだから……空気読めなくてごめん」


頭を下げると、リアムが私を抱きしめた。


「違う! 違うんだ。ちゃんと説明させて欲しい」


リアムは深く息を吐いて、呼吸を整えている。


「新領地の話だけど……もしかしたら、リアムは民衆が独立してもいいと考えているの?」


彼が新領地に対してどんな考えを持っているのかを知りたかった。


「独立か。この世界だと夢物語だな。君が前世で暮らしていた世界では違ったんだろうが……」


「そうね。前世の世界では民主主義といって、民衆が代表を選んで国を動かす制度だったわ」


「もしかしたら、この世界でもいずれはそのような制度になるのかもしれない。しかし、今の段階では時期尚早だ。俺たちは道路や水道などのインフラ整備を行うだけでなく、治安を守るための警察や騎士団も組織している。彼らが独立したとしても、そのような大規模な運営を行う財源や知識がないだろう。人材も……いないのではないかと思う。長期的な視野で計画を立てるためには組織だった知識や経験が必要なんだ」


「なるほど」


「それに彼らの動きに呼応して、領主が気に入らないと独立を求める運動が他領に広がってしまったら、そこから争いが起こってしまう。例えば、今の領主のままでいいという人達と、独立したいという人達の間で戦いが起こってしまったらどうする? あるいは領主が怒って人々を攻撃してしまったら、領民との溝は修復できないくらいに悪化してしまうだろう」


「……深刻だわ。これまで派遣した領主代理人はどんな方だったの?」


「三人とも優秀な事務官だったんだが、まだ若いこともあって、相手に舐められてしまったのかもしれない。本来はテオが適任なんだが、赤ん坊が生まれたばかりの彼を派遣する訳にはいかないし……」


「もちろんよ。メアリだって赤ちゃんを抱えて大変なのに……」


テオとメアリが赤ちゃんに会わせてくれた時のことを思い出した。


ふっくらとした愛らしい頬。ぷにぷにした手や指。


ああああ~、なんて可愛いの!とハートを一瞬で打ち抜かれた。


でも、赤ちゃんは可愛いだけじゃない。そのお世話は大変だ。テオが家を離れるわけにはいかない。


「俺が直接行ければ一番いいんだが、さすがにこちらの領地を放っていく訳にもいかないし、重要な案件もあるから……」


「ねぇ、私に行かせてもらえない? 頑張るから!」


「ダメだ! 君がそう言い出しかねないと思って、君には新領地の問題を伝えなかったんだ」


「どうして……?」


「どうしてって……危険だ。リタの報告にも民衆の指導者は荒っぽい男どもだと書いてあったろう? 何が起こるか分からないんだぞ!」


「護衛の騎士をつけてくれるでしょ? 大丈夫よ。和解というか、対話のきっかけを見つけたいの。今のままだと平行線でしょ? 彼らの不満と要求を直接聞いて、交渉できるかどうか考えてみたいの」


リアムは恨みがましい目で私を見た。


「私じゃそんなに頼りない? 信用できない? 無茶はしないって約束するから」


私は必死でくらいついた。リアムが困っているなら、私も協力したいんだ!


リアムは悲しそうに溜息をついた。


「……もちろん、君を全面的に信用しているよ。君なら解決の糸口を見つけられるんじゃないかって思ってる」


そう言いながらもリアムは何故かどよーんと暗いオーラを放っている。


「だったら私に任せて!」


私の笑顔と対照的にリアムの顔は暗く憂鬱そうだ。


「……旧スチュワート公爵領は、飛び地領のように離れているって言ったよね?」


「うん!」


「そうすると、君はそこに引っ越さないといけなくなるよね?」


「うん? ……うん、そうだね」


「……君は、君は俺がいなくても平気なのかい?」


「え!? えーっと……」


そうか。遠距離ってことになるのかな?


「俺はもう君のいない生活に耐えられる自信がない。朝、目を覚ました時に君の寝顔を堪能できないとか。夜眠っている時に君のかぐわしい香りに包まれることができないとか……想像しただけで辛すぎる……」


「いや……それは……ちょっと……」


かなり恥ずかしい。嫌じゃないけど。


「君は平気なのか? 俺がいなくても寂しくないのか?」


リアムの必死な表情を目の当たりにして、私は真剣に考えた。


確かに寂しい。私も彼の腕の中で眠る安心感に慣れてしまって、一人だと寂しいと思ってしまうだろう。


でも、ずっとそれが続く訳ではない。私は新領地の人々の生活を視察して、彼らが何を望んでいるのかを知りたいだけなのだ。だから、そんなに長期間留守にする訳ではないと思う。


「遠距離は確かに寂しい。私もリアムの傍にいたいよ。でも、何年もかかる訳じゃないし、取りあえず数か月くらいで戻って来て、その後の対策を練るようにしたいと思ってるんだけど……」


「数か月!!!」


リアムが頭を抱えた。


「俺は……一週間でも辛いと思っていたのに……。数か月……数か月もミラなしで……」


息も絶え絶えによろめくリアムに私は焦った。


「えっと、途中一回か二回は戻ってこられるようにするし、リアムだって一度くらいは新領地に来られるんじゃない?」


言いながら私は戸惑っていた。


え……?


これは本当に遠距離になるのが嫌で、私に新領地の問題を隠していた……のかな?


領主としての責任より、個人的な感情が上回ってしまったのだろうか?


いけないことだ。うん。ケントなら絶対にしないと思う。


でも、一人の女としては……愛する男性から仕事よりも私の方が大切だと言ってもらえた気がして……嬉しいと思ってしまった。


いけないことなんだけど。


普段、絶対に公私混同しないリアムが?


領主としての仕事が何より最優先だったリアムが?


何よりも私が最優先だと……そう思ってくれたんだ。


やばい。顔がニヤけてしまう。こんなに愛してもらえるなんて昔は想像も出来なかった。


でも……


うん、いけないことだ。だから、正さないと。私は心を鬼にした。


「リアム! 私はリアムが大好きだよ! 何があっても気持ちは変わらない。世界で一番大好き! だから、ちょっとくらい距離が離れても絶対に大丈夫だよ!」


子供のように拗ねるリアムをなだめすかして、私はリアムの代理人として新領地に出発することになった。

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