プロローグ
私は幼い頃からロマンスとは縁遠かった。
体力自慢でスポーツ万能。中学高校はソフトボール部のキャプテンとしてチームを率いて県大会で何度か優勝もしたほどだ。
大学時代に始めた女子ラグビーでは驚くことに日本代表に選抜され、オーストラリアにスポーツ留学までさせてもらった。
学生の頃から、男友達は多かったが、それが艶っぽい話に進展することは皆無。
密かに恋心を抱く男友達もいたが、彼らは華奢で可愛らしくて、逞しさの欠片もない女の子たちと恋に落ちていった。逞しさしかない私は完全に対象外。
気がついたら『親友ポジ』になっていた私は幾度となくこう言われた。
「お前が男だったらな~」
女性として扱われることはなかったのである。
私は料理が得意で酒もめっぽう強かったので、我が家に仲間で集まり楽しく過ごすことが多かった。
しかし、コロナ禍のせいでそんな集まりも出来なくなり、更に飲食店で働いていた私は失職した。
仕方なく始めたウー〇ー配達の仕事は思いがけなく適性があったようで、毎日自転車をバリバリ漕ぎながら結構稼ぐことが出来ていた。
しかし、ある日信号無視をしたトラックが私の自転車に思いっきり激突。
私は呆気ない最期を遂げたのだった。