プロローグ
初投稿です。
手前勝手なお願いになりますが、感想を下さる方はどうか「○○不幸になれ」のように特定のキャラの不幸を願う投稿はお控え下さい。
どんな性格屑も生みの親である作者(青梅)は愛しておりますのでどうかよろしくお願いいたします。
二人の男女が苔むした巨大な木々が鬱蒼と生い茂る森の中をひた走る。
(いつもならなんてことない森の中なのに、今日はやけに木の根の上で足が滑る)
女は走り続けて上がった息を整える暇もないほど切迫した雰囲気の中、ひとりごちる。
(随分と、大きくなってるな)
先導する男の背中は、幼かったころの頼りなげな小ささから、大きく逞しいものに変わっていたと女は感じる。まだ完全に信用したわけではない。それでも、女は幼き頃のあの穏やかで楽しかった日々を過ごした『少年』を重ねる。
――ああ、余計なものまで思い出した。
女は腹の底から湧き上がる激情を飲み込みながら思う。
あの瞬間、確かに自分は生きることすら投げ出そうと考えてしまった。大切な母親からあとを託されたというのに。
目の前の青年が割って入らなければ、今頃、あの家に隔離されて辛酸をなめる日々を過ごすことになっていただろう。母が味わった絶望を自分も体験することになっていただろう。
幼少のころ以来の出来事に、体がすくんでしまった。思えばあの頃から、恐ろしい男たちの魔の手から、母親の腕の中で守られていたのだ。
幼き日のある記憶は、母と娘にとって最悪の出来事だった。