土より上は神様の通り道
落ちた飛行機は葵がよく知る大型旅客機とは違い、個人での運用も可能なグライダーだったようだ。
乗員数は20余名。要請国の政府役員が離れた領土に移動している途中だったそうで、墜落直前のパイロットからの通信を最後に連絡が取れない。
墜落した経緯は調査中。
人命救助を最優先に動いてほしいとの要請だ。
「参考に乗員の名簿を渡しておく。顔と名前は覚えてほしい」
「わ、私自信ないです…」
「無理のない範囲で良い。落ちたのは山の中央だ。関係のない人間と会うことはないだろう」
渡された資料に目を通してみたが情報過多でとても頭に入ってこない。葵の手に広がるそれらを横から後ろから、リネとトントも覗き込んで確認していた。
葵たちの乗っていた飛行船はゆっくりと山の中腹に降り、四人を見送った。
一人ずつそれぞれ無線機と懐中電灯を渡されて、何故か防弾チョッキの着用も命じられた。
「お守りです」
「あると安心しますわよ」
「私、素人なのに救助活動するんですか? 二次災害なりません?」
「やりたくないならやらなくてもいいんですよ。日本が遠退きましたね」
「姉さま、残っても良いんですよ。僕も残ります」
遭難者と言っても、山をうろうろ歩き回っていなくなったわけではない。雪山でもない、断崖絶壁でもない、土と草の萌ゆる山だ。足場が特別悪いわけではないし、乗員も救助を待っているだろうから落下地点周辺から遠退いてはいまい。
がれきを退かして、人を探して、見つけたら肩を貸して回収場所まで連れてきてあげる。
それくらいなら、まあ、素人の自分でも出来そうだ。
そう信じて現場に向かって、そうして現在、穴の底でご遺体と重なっていた。
「にぎゃああああ」
「あはー、すごく叫ぶね!」
「姉さま、落ち着いてください。大丈夫です。ただの死体です」
「死体! きゃあああー! きゃあああ!!」
「三人とも、大丈夫か?!」
左翼が無残に折れたグライダーの横に、機体から這い出たようなポーズで倒れている男の人に駆け寄った葵は、すぐに足を地面に取られて落下した。それを間近で見たリネは迷わず姉の後を追った。何故かトントもリネの後を追った。ユノーだけが流れるような三人の落下を見て立ち止まった。
慎重に足元を確認しながら近付いてみると、穴はそこまで広いとは言えなかったが、二人の人間が呑まれるには十分な大きさだった。
てして、恐らくそれは人為的に掘られたものであり、それを敢えて隠しているような様子だった。
すぐにユノーは動物を対象とした罠だと考えたが、それにしては穴は真っ直ぐではなくカーブを描いていて、落ちていった三人の会話を聞くに、底に槍や剣山のようなトドメを刺す仕掛けもしていないようだ。手持ちの懐中電灯で穴を照らしてみたが、土の壁があるだけで先に滑っていった三人の姿は窺えない。
「待っていろ、ロープか何かを持ってくるから…」
ユノーは草の揺れる音を聞いて、声を出すのを止めた。
何かが近付いてくる。
ほぼ本能的な反射で、ユノーは葵たちが落ちていった穴を、グライダーが落下した影響で落ちた枝や葉や土を使って隠した。
まだ辺りは明るいのに、松明を掲げて、大きすぎる仮面を付けた半裸の男たちが木々の間から現れた。手に石と枝で作られた槍のようなものを持っている。
ゆっくり辺りを見回してみると、ずいぶん人数が多いようだった。
彼らはグライダーの残骸を囲うようにしてユノーを観察している。
ユノーは彼らに見えないように無線機に緊急事態を知らせる暗号を送って、両手を挙げて立ち上がった。
彼らが何者なのか、四人の内ユノーだけが知らされていた。足の下に隠された三人に伝えるかどうか、アーヴィンは迷っていると言っていたが、あれは面倒くさがっていた顔だ。自分が伝えておくべきだった。ユノーは無愛想な顔を歪めながら、自分の運命を呪うしかなかった。
***
あんまりきゃーきゃー騒ぐのでリネは気を遣って遺体を半分土の壁に埋めた。
しかし壁から突き出た腹から下を見て、今度はそれはあんまり可哀相だと言うので横たえた。
これで満足してさぞ自分を褒め称えるだろうと思ったら、お次は何故か遺体に向かってひたすら謝罪している。
姉の行動心理が理解できず、弟は頭を抱えた。
「ああ~~、そりゃご遺体があるとは思っていたけど、穴に落ちて上から落ちてくるなんて、うわわわわ~~~、ごめんなさい、怖がってごめんなさい、あなたの方が怖かったですよね、ああ~、すみません」
「姉さま、それは死体なので聞こえていませんよ。そんなことよりですね、僕、今、姉さまのために色々…」
「うるさい! あなたも謝りなさいよ!」
命じられたので渋々謝ったが、ちっとも納得いっていなかった。
怒られるどころか、姉への気遣いをさぞ褒めてくれると思ったのに、葵はリネの行動を否定するばかりだ。
不服そうに頼を膨らませるリネを、トントが歯を鳴らしながら鑑賞していた。
「ユノーくん、穴を塞いじゃった」
「初めからこうするつもりだったんじゃないですか? とんでもない男です!」
「なるほどね。リィネくんって察しがいいねェ」
「山の中に、どうしてこんな穴があるんだろう。真っ直ぐじゃなくて滑り台を落ちているような感じたったわ」
三人で揃って上を見上げてみたが、通ってきた道は緩やかにカーブを描いていて、空に続く穴が見えそうにない。先ほどまで遠いけれど聞こえていたユノーの声も消えたどころか、僅かに差していた光すら消えてしまった。
軽量型だけれど威力は抜群の懐中電灯を点けてみて、リネが壁を登ろうとしてみたか、土の壁はもろもろと崩れてとても指や体を支えてくれそうな力はない。
「ねえ、見て見て」
トントは人差し指と中指の爪先で葵の袖をちょいちょいと引っ張った。
「この穴、奥に続いている」
懐中電灯が指した先は真っ直ぐな土の道だった。背の高いトントには些か窮屈そうだが、葵くらいなら背を真っ直ぐ伸ばしても進んでいけそうだ。足元は平らに整えられていて、それこそ明かりも石の地面もないが、明らかに人の手によって作られた"トンネル"だった。
「どうして落とし穴の先にこんなものが」
リネは興味深そうに懐中電灯をくるくるそこら中に当てて見回している。
砂の国の地下での鬼ごっこを思い出して、葵はちょっと体の冷えるような感覚を覚えた。
「だいじょうぶ?」
「! 何かありましたか?」
本当に僅かばかり肩が震えた程度だったが、トントは葵のその様子を目敏く発見した。姉を気遣う一言で、リネもすっ飛んで帰ってきた。
「いえ、何も。さっきロープを持ってくると言っていたし、ここで待っていた方が」
そういって葵が上を向いてみると、なんだか白い煙がもくもくと降りてきていた。
ゆっくりじんわりと、しかし確実に、淡い雲のような物体は葵たちに向かってきていた。
「ガスだ!」
トントの声に引っ張られるようにして、いや、実際にリネに引っ張られて、葵は道の奥へと進んでいった。
煙ならば本来は上に登っていくはずなのに、それはまるでそういった生き物のように一歩ずつ壁を降りてきて、やがて地面に寝転んでいた男性の遺体を真っ白に飲み込んでしまった。充満する土の匂いを押し退けて、じんわり血の匂いが近付いてくる。煙は暗闇の中に消えていく葵たちを見送っているようだった。
***
特別背の高いわけではないこの山は、知らぬ者が入れば必ず呑まれて戻ってはこれなくなるという。
知らぬ者というのは、神を知らぬ者のことだ。
この山にはそれは偉い神様がいらっしゃって、辺りに住む昔からの人々を守り、慈しみ、そして外敵を排除してくれる。
そう麗の住民は信じていた。
「そういうわけなのですが、この山では金が取れるという話が出てからトリドール国が原住民を排除して支配下に置こうとしています。国際的にはトリドールの領土と認められましたか、実際は抗争中です。軍備の整っているトリドールに比べて原始的な生活を送っている原住民に勝ち目はないと思われていましたが、いざ山を越えようとすると皆いなくなってしまう、それは恐ろしい山なのです」
「それで空を超えて行こうとしたら山の上空で落ちてしまったわけなのですね。恐ろしい話ですわ。その話、やはり他の三人にもしておくべきだったのではございませんの?」
「ユノーがするかなと思っていました」
「信頼は無責任と隣り合わせですわね」
ユノーから緊急事態を知らせる信号がきたものの、詳細は不明だ。
他の三人の無線機を鳴らしてみたが圏外。
四人を見送った後、アーヴィンたちを乗せた機体は浮上して上空で待機していた。
いつもなら一面空ばかりの窓に、山や木々も映っている。前髪に隠れたアーヴィンの視線はそれらを見ているのか、それとも足元の端末を見ているのか、マリアンヌにはよく分からなかった。
「わたくしも一応は警察の出身ですし、もう無緑の方となりましたが、誇り高いお爺様とお父様の意思を慮って、一応申し上げますけれど」
マリアンヌはジャックが中腰で持って来たアーヴィンのためのミルクを奪い取って、景気づけに一気飲みした。
丹精と畏怖を込めて作った72度と思われるミルクが目的外の人間の腹におさまっていくのを見て、ジャックは悲しみの声を上げた。
「三人は一般人ですから、その命は尊ばれるべきですわ。ユノーもきっとそう言います」
自分の足の指先に小気味よい音を立てて置かれた空っぽのコップを見て、アーヴィンは横に立つマリアンヌを見上げた。
白い髪に隠された真ん丸の瞳に、赤い口紅の端に白い液体を残した女性の顔がはっきり映り込んでいた。
「ですが、犯罪者です」
アーヴィンがコップを突きだした先にはジャックの腹があり、彼は辛うじてコップを受け取ったまま床で苦しみにのたうった。
周辺を写すカメラを出来る限り拡大しながら、上空の三人はユノーの行く末を遠目で見ていた。
***
「姉さま、いますか?!」
「手が痛い」
存在を確認するように腕をカー杯ねじり上げられて、葵は抗議した。
煙はすっかり見えなくなっていた。最後尾のトントが背後に電灯を向けたが、どこまでも土の道が続いていただけだった。
「夢中で走ってきたけど、一本道だったかしら」
「違うと思うなあ。真っ直ぐ進むと思ったら、リネくんがかっくんって曲がるから驚いたもの」
「追われる者はなるべく多く曲がるべきです。常識です」
道は人一人が通るには充分だったが、二人横並びにはなれない程の幅だった。
天井は相変わらず低く、トントは窮屈そうだった。腰を屈めるのではなく首を前にずらして身長を低くしている。人間の顔ってここまで下の方に落ちるのだな、と葵はしみじみ思い、そして恐怖した。顔が肩に並んでいる。首が長いからできるのだろうか。腰を曲げた方が肩がこらずに済みそうだが、本人の好きに任せようと決めた。なるべくこの謎めき生命体に声を掛けたくない。
「トント、さん、頭が天井をずってますけど」
「トントで良いよ、ネエサマちゃん」
「お前は姉さまを貴女様と呼べ」
「出来れば葵って呼んでほしい」
「駄目ですよ!! 僕ですら姉さまなのに! な、名前、名前呼びなんてっ! 失礼すぎます! 様をつけるべきです!!」
葵はリネの言葉を無視した。
慌てふためくリネの顔をトントが覗き込み、鼻が触れそうな距離まで近付いたので、リネは彼の首を折るくらいのつもりで床に叩き付けた。この状況下で喧嘩は止めろとようやく姉が自分に意識を向けてくれたので、リネの機嫌は向上した。
地面に顔を埋めたまま、トントが何かを言ったが、もごもごと籠っていて何も聞き取れなかった。
顔を上げるよう何度か声を掛けたが、トントは一向に上がってこない。仕方なく膝を付いて両耳を引っ張ってやると満面の笑みの顔が上がってきた。葵は悲鳴を上げて遠ざかった。リネは葵が何に怯えているのかさほどよく分かっていなかったが、狼狽えぶりに思わず背に庇ってナイフを構えた。
これほどリネを頼もしく思ったことはない。いざとなったらこいつをこの生命体に投げつけて一人で逃げよう。葵の心は決意に満ちた。
「うじろにはもどふえないばらすずもう」
「口から土を出せ」
「何を言っているか分からないわ」
トントはリネに言われた通り口の中に含んでいた土をぺっぺっと吐きだした。何度か指で舌を擦って払うと、改めて「進もう」と提案した。
なけなしの親切心で葵はハンカチを差し出した。トントはまたにったりとした笑顔を浮かべてそれを受け取り、間延びした声で感謝を述べて白いハンカチで顔を隅々まで拭いた。んもう隅々まで。それが済んだのを見るとリネはすぐにそれを取り上げて、「洗濯してからお返しします」と葵に約束して自分の懐の奥深くにしまい込んだ。葵はそれが二度と手元に戻ってこないことを祈った。
この不可思議物体は奇っ怪だが、言っていることには一先ず賛同し、三人は元来た道とは逆に進むことにした。ゆっくりとした足取りではあってもガスが迫ってきているかもしれない。
リネが先導し葵の手を引いて、トントは後ろから頭を天井に擦りつけながら付いてきた。
道は迷路のようだった。何度か分かれ道があって、おそらく今までもあったのだろうが、冷静になってみるとどちらに行ったら良いか分からない。
「火を点けられれば良いのですが」
「ああ、火の揺らぎで風の来る方に行くってやつね」
「そうです! さすが姉さまです。僕の言いたいことを全て分かってくださって…·。僕も姉さまの考えていることはとてもよく分かっていて、何でも、何でも姉さまのお望みは何でも分かっているので、やはりきょうだいですね、心の内が繋がって」
「それ長い?」
「ボク、マッチ持ってる」
トントがズボンからマッチ箱を取り出した。
ズボンのポケットではなくてズボンから取り出した。
葵はリネよりトントの近くにいたが受け取るのを戸惑った。逡巡して上下する葵の手を見て、トントは笑みを深めた。
「これは三年前…、ボクがロンドンのザ·シャード72階で夜景を観賞していた時、一緒に来ていたブロンドのハミルトンが」
「それ長いですか? さっさと点けてください」
小さなマッチの先の僅かな火は、ほんの少し斜めに揺らいだ。分かれ道にあたる度にその火を確認して、進んでいく。
リネの明かりが、少し開けた場所を照らした。
今までの道とは見るからに様子が違う。リネの「行ってみましょう!」という声に続くように、三人は歩速を上げた。
職業柄、常に身の回りの違和感に神経を払うのは、リネにとって当たり前のことだ。いつも行動を共にするドーラ号の団員たちも、当然それが身に付いていて、単純な仕掛けではわざわざ注意しない。こんな見え透いたものに引っかかる人間がいるなんて思っていないとも言える。
だから、リネが軽々飛び越えた細い紐を、すぐ後に続くごくごく一般人の葵が引っかけてしまうのは仕方がないことだった。
足首に鋭い衝撃を受けた葵は小さな悲鳴を上げて前に倒れ始めた。
無意識に避けていたとは言え罠自体には気付いていたリネはすぐに葵を抱き寄せて前方に向けて地面をスライディングした。
天井から矢のようなものが数本落ちてくるのを見て、トントはまたズボンから、ポケットではなくズボンから、どうしまっていたのか傘を取り出して二人の上に覆い被さった。
男二人分の重みに潰されながら、混乱の中葵が激しすぎる雨音を聞いていると、しばらくしてシンとしてトントがニ人から離れた。
「リネくん、ネエサマちゃん、大丈夫?」
「ええ、大丈夫。ごめんなさい、私、何か…」
踏んでしまったみたい…と続けようとして、上のリネの息が上がっているのに気付いた。
トントは傘を畳んで元通りズボンにしまうと、リネの体を持ち上げて壁に寄り掛けた。右腕に細い矢がすっぽり埋まっていた。
「リネ! わっ、わ、ごめんなさい、大丈夫?」
「姉さま…………、お怪我はありませんか?」
「私は何も、何もないみたい。わー!」
「ネエサマちゃん、落ち着いて。場所変わって」
トントは葵を押し退けてリネに近付くと、リネの腕と落ちてきた矢をじいっと見つめていた。
その目は真剣そのものだ。
気味の悪い笑みがなくなっていて、その目は真剣そのものだ。
「抜こう。毒が塗ってあるかも」
「毒! わー、リネ! ごめんなさい!」
「毒ですか?! 姉さまは大丈夫ですか?!」
「あんまり叫んじゃ駄目だよ、リネくん。毒が回るよ」
リネは既に真っ青な顔をしていた。
肩で息をして、目は葵を見ようとしているが焦点が合っていない。右手が痙攣を始めて、滴るほどの汗が湧いてきた。
「ネエサマちゃん、なんか結ぶものない?」
「結ぶもの…、あ、ハンカチを、さっきリネに」
「わーお、ちょっと失礼」
トントはたちまち明るい顔をしてリネの懐に手を突っ込んだ。
乙女のような声を上げてリネが葵を抱き寄せたが、葵は拒否することなく甘んじて納まり、リネを落ち着かせようと努力した。
再びズボンから細いペンナイフのようなものを取りだして、トントはリネの服の袖をさっくりと切り取った。その手慣れた様子に、渦巻く視界の中でリネはマイナスな感情を抱いたが、それを姉に伝えようとしてもどうにも喉が動かなかった。
取り出したハンカチをトントは鼻歌交じりにリネのむき出しの右上腕二頭筋に縛り付けて、思いっきり矢を引っこ抜いた。
「いい――――――っだ!!」
「リネ、大丈夫!?」
「はい! 元気です!」
「それは嘘でしょ」
もはや土気色の顔で笑みを作るリネの顔は汗でびっしょり濡れていた。
トントが片手で懐中電灯を持って傷口を見ているのを見て、葵は自分の懐中電灯で照らしてやることにした。それを受けてトントは顔全体が歪むような笑みを浮かべた。葵は恐怖を覚えてリネの左手をきゅっと握った。ただでさえ高まっている心拍が更に上がり、リネは自身の身体の危険を覚えると共に幸福を覚えていた。
「このまま死にたい…」
「やめて。これと二人っきりにしないで」
「んもおー。ボクが頑張ってるから、大丈夫だよ。リィネくん」
姉の手を強く握り返して、思いっきり引き寄せて、抱えてこいつから遠ざけてあげて、そうしてニ人っきりになった時に思いっきり褒めてもらいたい、是非そうしよう、とリネは身体に力を入れてみたが、どれ一つ出来そうになかった。
今までで最も近い場所に姉が迫っているのに、その顔は薄ぼんやりとして淡い世界の中。もう、その姿を焼き付けるだけの力すら、瞼に残っていそうになかった。




