(番外)
メイン二人と全く関係ないサブキャラの心情風景です。
前の話を読んでからどうぞ。
(やばい、廊下が大変なことになっている。廊下も大変だがリーダも大変なことになっている。
頭を抱えるリーダは何度も見るが、頭を抱えることも忘れて呆然とするリーダはほぼ初めて見た。
貴重だ。目に焼き付けておかなければ。
廊下を破壊したのは誰だ?
この様子だとほとんどの団員に嫌疑があるな。後で感謝しておこう。
しかし私は感謝を口にするのが実に下手だ。苦手なのではない。下手なのだ。上手く伝わらない。
リーダのように爽やかで朗らかで慈愛に満ちた笑顔と共に美しい言葉を並べられればいいのだが、そううまくいかない。
うん、やはりリーダはすごいな。
ああ! あの椅子の脚は! あの脚は間違いなく4ヶ月と24日前にリーダが修繕した椅子の脚だ!
ヒビが入っていたからと綺麗に切って付け直して…。
あれを壊したのは誰だ? それは許しがたい。
しかし団員はリーダのもの。リーダのものを勝手に罰するのは気が引ける…。
リーダが傷ついていないといいが…。
しかし、リーダ、さすがだ。
脚を残して他は壊滅したと見えるが、リーダが修繕した下から14cmの箇所は壊れていない。
元の硬度よりも強硬にするリーダの修繕スキル。
やはりリーダはすごい)
「お前は椅子を食べただろ」
(椅子を破壊したのはお前か。
覚えたぞ。覚えたぞ。覚えていろ。
しかし壊したのではなく、食べたのであればリーダは許すかもしれない。
リーダの手垢のついた椅子だ。私とて食べられる。むしろ食べたい。
それにリーダが修繕した脚を残しておいたのは称賛に値する。
あの素晴らしい傑作を見て腹に収めたいとはさすがに思えなかったか。
うむ。罰するのはやめておこう。彼はきっと私と想いを同じにする同志だ。
今度部屋に誘って酒でも飲んで、共にリーダを讃えたいものだ。しかし私は人を誘うのが下手だから…。苦手ではない)
「足を崩したら一時間…、いや、30分追加しろ」
(一時間でいいのに、なんて優しいんだ! リーダは優しい! 凄い人だ!
こんな荒くれ者に囲まれて犯罪行為の渦巻く暗い日々を送る中で清らかさを失わない、見た目通り天使のような人間だ!いや、もはや人間のような天使なのかもしれない。
はっ! そうか、そうだった。そうなのだ!
もう付き合いも長いのに、何故天使のような人間などと…。リーダを罵倒した。なんて愚かな男なんだ、私は!
リーダ、すまなかった。いや、申し訳ありませんでした。
今後一生をかけて忠義を尽くすと改めて誓おう。
リーダもありがたいことに私を右腕と認めてくれているようだ。本当にありがたい。
口下手で考えたことを言葉にするのに時間を要する私を、いつも待っていてくれる。待たせて悪かったと謝ると、待った甲斐があったと笑ってくれる。
なんだ。やはり天使だった。いや、もはや神なのでは? 崇拝に値する存在なのでは??)
「一時間経った。そこまで」
「うはあ~~~~~」
「あああああ、足が死んだ。俺の足は消えた」
「ははは、椅子の脚の呪いだな。いだだだだ」
「あのタールマギって方、微動だにせず一時間、すごいのね」
「あの男はいつもそうなんです。体も顔も動かない。頼れる人ですが、何考えてるかわからないし、近付いちゃ駄目ですよ、姉さま」
(夕飯までに仕置きが済んでよかった。
このままここでマーロが正座をし続けていたら、リーダが部屋で一人きり、食事をとるところだった)
常に傍に控えているタールマギは、度々リーダに食事を共にするよう誘われていたが、僥倖が過ぎると思い彼は断り続けていた。それがマーロがやってきて、リーダと二人で食事をとるようになってから、リーダも笑顔が増え、見ているだけのタールマギも喜びに打ち震えていたのだった。
彼にとってマーロはリーダに幸福を運ぶ青い鳥なのだ。
(ようやくリーダのところへ戻れる。落ち込んでいるかもしれないから励まさねば。
いや、私の下手くそな慰めよりも、具体的な修繕スケジュールを考えたほうがリーダのためになるだろう。私もすぐに状況の確認に行かなければ)
仏頂面の頼れる男、タールマギは、この船でいつも一番忙しい。




