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足のある宝物の守護者は複数いなければ

一つ前の話の続きです。

 リネは肩に担いだ葵を部屋に持ち帰るなりベッドに放り投げ、どこから持ち出しのか、鎖でベッドの足に繋いだ。

 葵は悲鳴を上げてリネを殴ったり引っ掻いたりしたが、彼は少しも動じずに作業を続けた。


「さっさと外して! 私を帰しなさいよ!」

「姉さま、ああ、爪、気持ちいいです。姉さまの爪に俺の肉が…、どうぞもっとやってくださ、」


 枕を顔面に叩きつけて話を強制的に終わらせた。

 言葉が頭の中で反芻して気持ち悪く、手を洗おうと思ったが簡易に取り付けられている洗面台にすら鎖は届かない。

 リネを詰って文句を言ったが、蕩けた顔で言葉を受けるばかりで進展しない。

 出て行けと背を押したかったが部屋の扉にも近寄れない。

 ベッドの周辺しか行き場がなくなってしまった。うろうろする葵をリネは立ち尽くして見ていた。


「もう、分かったわよ。どうすれば満足なのよ。何したら私を帰してくれるのよ」

「ここが姉さまの家です」

「違うっつってんじゃない。私の家は下にあるの。あなたは私の弟じゃないの」

「嘘吐き」

「ンはあ?」


 苛立って強く床を蹴った。ヒールが高音を立てる。


「誇らしい弟だって、言いました。褒めて応援してくれた。証拠だってあります」


 リネは懐からレコーダーを取り出した。女性の声が聞こえる。脱出に向けてリネを油断させようと演技していた時の自分だ。『頑張ってね』だとか、『すごいわね』だとか、明らかに無理をして高い声を出しているのが丸わかりの自分の声に、無意識に眉根が寄った。


「そっちのが嘘に決まってるじゃない」

「嘘じゃない。姉さまの声だ。今はちょっとご機嫌が悪いだけで、本当の姉さまはこっちなんでしょう? 俺は分かってますから」

『え? いや、ちょっと、うーん、それは…、自分のこと可憐で可愛くて美しくて聡明って言うのおかしくない?』

「だから! 私の声だけど、その時の私はあなたを騙そうとしていたのよ! 明らかにおかしいでしょ、言ってることが!」

「おかしくないです! 姉さまは本心から言ってくれていたんだ! 何度も聞いたからわかります」

『そ、そうね、私ってば可憐で可愛いから…』

「こんなん本心で言うかってのよ!」

「何するんですか!」


 葵はリネの手からレコーダーを叩き落とした末、大きく足を振りかぶって蹴った。

 レコーダーは堅い音を立てて壁に当たり、いくつかの部品をばらまいて床を転がった。


「ああ、姉さまがっ、姉さまの声が…っ」


 リネは這いつくばって細かい部品をかき集めた。タンスや机の下に目を向けて取りこぼしがないか執拗に確認している。


「私をここから出す気がないなら、せめて出て行ってよ。もう顔を見たくない」


 疲れ果てた葵はベッドに腰を下ろした。

 リネはそれは大事そうにレコーダーを両手で抱えて、泣きそうな顔をして葵を見ていた。


「で、出て行きたくありません。姉さまを見ていたい」

「気持ち悪い。私は顔を見たくないって言ったのよ」

「見ているだけです。お願い、酷いことを言わないで、ください。

 嫌いって言ってすみませんでした。あれは嘘です。

 一人にしたのもすみませんでした。

 お願いを聞かなかったのもすみませんでした。

 全部謝りますから、どうか許してください」


 腰掛ける葵の前まで来て頭を深く下げた。目前にリネのつむじがうつる。視界いっぱいの薄い青色に、葵は嫌悪感をあらわにした。


「出て行ってくれれば酷いことを言う必要はなくなるんだけどな」


 葵は靴を乱暴に脱ぎ捨てて、足をベッドに上げリネとは反対の方向を向いて膝を抱えた。


「こんなに酷いこと、下に居る時は言ったことがなかったわ。誰のせいでこんな酷い人間になってしまったのかしら」


 わざとらしく抑揚をつけた。この数日で演技力には自信がついた。

 後ろでリネが細かく足踏みするような音が聞こえる。放り出された靴と室内用のスリッパをベッドの横に揃える姿が窓に映る。


「し、視界に入らないように、見る、見、ますから」

「こんな狭い部屋で? 窓にも映るし。私は酷いことを言ってるかもしれないけど、あなたは私にもっと酷いことをしてるのよ。悪いと思ってるなら出て行ってよ。そしてもう二度と入ってこないで」

「で、でも、そしたら食事とか、身の回りのこととか」

「鎖を外してくれたら自分でできるわ」

「駄目です! それは駄目…」


 おどおどと小さな声を震わせているかと思いきや、たまに大きく激情的な声を発する。

 すぐに戻るのだが、その声が葵には怒声に聞こえて怖かった。怯える姿を天蓋の影に隠して虚勢を張っていったが、今にも泣き崩れそうだった。その前に彼と離れたい。


「………出て行ったら、ご機嫌、なおりますか…?」


 リネはより小さく、くぐもった声で葵に聞いた。


「なおるかもね」


 なるべく冷たくなるように、震えないように、葵は注意して答えた。

 リネはしばらく背後をうろついた後、すすり泣きながら部屋を出て行った。


 ***


「どうしよう、葵、大丈夫かな。どうしよう」

「マーロ、船を出る時は俺に一声かけろと言っただろ。その上、葵まで連れ出して、こんなことになって」

「うん、リーダ、ごめんなさい。葵がリネに怒られてたら僕のせいだ、どうしよう」

「あー、それは、お前のせいじゃない。落ち着け、マーロ。ほら、座れ」


 かにゃんに連れられてマーロが帰ってきた時は、黙って出て行ったことを叱るつもりで出迎えた。

 しかしいつになく動揺していて、葵の名前ばかりを呼んで出入り口から動こうとしなかった。 

 ある程度の団員が予定通りに帰還し、すでに空に出ていたため、慣れていない人間がここにいると扉が開いた際に吹き飛んで行ってしまう可能性がある。

 自室に引っ張っていこうとしたが、やっと階段を数段上がった程度だった。

 リネが葵を持ち帰って、誰の言うことにも耳を貸さずに部屋に引っ込むまで見送ると、やっとリーダに手を引かれて部屋に戻った次第。


 いざ説教を始めようとしたが、所在なさげに部屋を行ったり来たり。リーダが定位置である椅子を示して座るよう促したが、近くには来たものの腰を下ろそうとはしない。


「だって、帰りたいと言うなら帰してあげないと」

「それは、マーロの言うことも分かるが、リネを見ればわかるだろう。今のリネには葵が必要なんだ」

「リネのために葵を犠牲にするの」


 リーダはマーロから目をそらし、窓の外に広がる夜空を見た。

 少しばかり暗い雲の上を眺めた後、答えを出した。


「もう何年も前から、リネは大事な仲間だ。比べるべくもない」


 マーロはしばし合わない目を見つめた後、向かい合うように椅子に座った。


「分かったよ。ごめんね、リーダ。辛いことを言わせて」

「いいんだ。俺こそすまない。―――下はどうだった。楽しかったか?」


 二人の逃避行を、マーロはお茶を淹れながら楽しそうに語った。リーダは苦笑しながらも、その香りを満喫したのだった。


 ***


「なにほのぼのしちゃってるのよ。それどころじゃないのよ」

「葵が蔵書室に来ない…」

「そうよ! お風呂にも来ないのよ! 昨日なんて一日中マッサージチェアに揺らされて体中がくがくよ!」

「一日中脱衣所で葵が来るのを待ってたの? すごいね、根性だね」


 黒く重たい髪と、黒く重たいヴェールで隠されたエルロイの顔は、感情の読めない黒いつり眼だけが覗いている。

 静かな蔵書室を望む(ヌシ)は、大きな窓の足下、柔らかな絨毯の上をごろごろと騒がしく転げまわるかにゃんを珍しく許していた。


「エルロイも勧めた本の感想を楽しみにしていた。でも来ないし、リネがいくつか持っていくけど、感想を持ち帰らない。使えないやつ」

「ちょっと、酷い言い草はやめてちょうだい。リネだって一生懸命なのよ」

「葵を閉じ込めておくのにね。葵は悪いことを一つもしていないのに監禁されて可哀相」


 かにゃんはぐっと言葉に詰まり、絨毯の上をソファの足にぶち当たるまで転がっていくとそのまま小さくまるくなった。


「お風呂に入らないのは不衛生だわ。そうよ、葵のためって言えば、リネだって悪いようにはしないはずよ」

「いいんじゃない。同性のかにゃんの出番だね」

「そうよね! よし、私、言ってみるわ」


 一騒動から四日目。

 あれ以来、葵の姿を見た者はいない。リネもめったに部屋から出てこない。

 食事を持ち運ぶ時間も惜しいのか、食堂のおばちゃんもしばらくリネに給仕していないと言う。各自の部屋には緊急用の備蓄食料があるのでそれを食べているのかもしれないが、保存のきく食料であって栄養価の高いものではない。

 それであって風呂場でもどちらも見かけないとくれば、異臭騒ぎとなってもおかしくない。

 かにゃんは奮い立ち、エルロイに強く背中を叩いてもらうと、拳を握り締めてリネの部屋へと向かっていった。


 部屋の前にはマーロが居た。

 いつもの微笑が消え、口元に手を置いて何やら真剣に考え込んでいるようだ。


「マーロ」

「あれ、かにゃん」

「何してるのよ」

「ううん、あれから何度か僕が無理に連れ出したんだってリネに言ってるんだけど、聞いてくれなくて。毎日通ってる」

「うわ、そっか。葵には会えた?」

「会えてない。葵が会いたくないって言ってるらしいんだ。僕が連れまわしちゃったせいで、その、逃げ遅れちゃったからだと思う。せめて顔を見て謝りたいんだけど」

「きっとリネの、方便よ。葵はそんなこと言わないって。リネってば警戒しちゃってるのよ」

「そうかなあ。僕、葵と歩くのが楽しくて、それで」

「大丈夫、葵は怒ってないわよ。私が確認してきてあげる」


 かにゃんはマーロの腰を優しく叩くと、長く深呼吸して扉をノックした。

 しばらくは何の答えもなかったが、小さなノックを繰り返して「かにゃんよ~」と声をかけていると、何度目かでゆっくり扉が開いた。

 目の下にクマを拵えたリネが暗い瞳で顔を出す。腰を屈めているのか、かにゃんよりも低い位置から覗き込む目は上目遣いになっており、睨んでいるようにも見える。

 かにゃんは少し怯んだが、腰に両手を置いて胸を張ると、「ごきげんよう」と大きな声で言った。奥の葵にも聞こえるように。


「葵はどうしているかしら。ちょっと気になってね」

「……元気だよ。僕たちのことは放っておいて」


 リネはかにゃんから目をそらし、すぐに扉を閉めようとした。かにゃんが膝を突っ込んでせき止める。


「ちゃんとしたもの、食べてるわけ? どうして食堂に来ないのよ」

「……姉さまから離れたくないんだ。目を離したらいなくなってしまうかも」

「そんなわけないでしょう。どうして葵がここから出る必要があるのよ」

「だって! 言ってました。もうここに居たくないって。ここは家じゃないって」


 おお、言っちまったか。

 かにゃんは心の中で舌打ちした。リネには致命的な言葉だったと想像できる。


「お、僕のことを、弟じゃないって、そんな、ひどい、酷いことを言うんです。この部屋で尽くしていれば機嫌が直るかも」

「逆効果だと思うわよ。それに、あんたたち、お風呂入ってる?」

「入ってない……。でもタオルで拭いてる。姉さまも拭いてあげるって言ったんだけど、すごい怒るんです。癇癪な姉さまに戻ってしまって……」

「お湯に浸かりたいのよ。葵の国にはそういう風習があるって言ってたわ。大丈夫、お風呂の間は私が付いてるから」


 かにゃんは少しずつ扉を押して隙間を開いて行った。

 抵抗はさほど強くなかったが、リネはかにゃんを入れようとはしなかった。

 それでも、かにゃんの言葉を聞いて、リネは腰を伸ばし手を大きく広げてかにゃんの前に立ち塞がった。


「ふざけないで! 俺だって、俺だって姉さまと入ったことないのに! 拒否されるのに! かにゃんと一緒なんてごめんだ! ずるい、ずるいずるい、俺が女だったらいいの?! き、切り落とせば、いいんですか!」


 リネは大泣きしながら腰からナイフを取り出した。

 少し離れて様子を見ていたマーロがたまらず飛び出してかにゃんに加勢し、なんとかナイフを取り上げた。

 かにゃんが足払いして転ばせて上に乗りこみ、マーロは指示を受けて応援を呼びに行った。


「放っておいてどうにかなるものではないわ」


 褐色の太ももでリネの首を締め上げて、息を切らせながらかにゃんが言った。

 惨状を見たリーダは嘆息し、息も絶え絶えのリネを力自慢のダンに担がせて部屋を出た。

 ダンも手こずるほどリネは暴れたが、エルロイが怪しげな注射を打つとみるみる静かになった。


「リネは」

「死んだ」

「死んだ!」

「ように眠っている」

「エルロイ、リーダで遊ばないの」


 医務室の床に、リーダはへなへなと膝をついた。マーロが横にしゃがみ込んで肩を撫でる。

 ダンは疲れ切って床で大の字になっていた。


「エルロイは葵を見てくる」

「僕も行きたい」

「私も行くわ」

「お前ら、リネは」

「リーダに任せるわ。私も敵認定されちゃった」


 てへ、と舌を出して、悪戯な顔でかにゃんはそそくさと医務室を後にした。

 ベッドに音もなく横たわるリネの顔は蒼白で、鼻元に手を近付けてみないと、呼吸も感じられない。

 リーダは僅かな息に安堵と共に疲れが押しあがってくるのを感じて、しばし横の椅子で休息を取った。


 ***


 暇だ。

 日がな一日寝るか、空を眺めるか、リネを罵倒するかしかしていない。

 リネが持ってきた本は読む気がしない。乱暴に扱うのはエルロイを困らせそうなのでやらないが、本当は渡されたらすぐにその顔にぶち当てたい気分だった。

 我ながら図太いと思う。

 リネの態度が低いとはいえ、監禁してくる男に恐怖よりも苛立ちを覚えるのだから。


 葵はそんなことを考えながらベッドの中で足をバタバタとさせていた。どうにもぼんやりして頭が働かない。

 さめざめと泣くのも飽きたようで、涙も出てこない。


 そんな頃、足音が聞こえた。

 リネが来ると思い咄嗟に布団を被ったが、足音が多い。

 やがて扉に体当たりをかましたものの鍵が引っ掛かったような音がした後、「どいてなさい」という鋭い女性の声が響き、扉が吹っ飛んだ。


「黄金の足」


 一歩部屋に入ったエルロイが腕を真っすぐに伸ばしながらかにゃんに向かって小さく拍手を送った。


「葵! あんた無事なの」

「かにゃん、エルロイ」

「葵。あー、よかった、怪我してない?」

「マーロ」


 三人が続々と部屋に入ってきた。

 葵の足を見てかにゃんは眉をしかめ立ち尽くしたが、マーロはすぐにベッドに腰掛けて葵の顔を両手で包んだ。


「僕のせいでごめんね」

「いや、私こそ…。巻き込んでしまって。リネに何か言われなかった?」


 監禁されている間、リネはマーロがいかに悪い人間かぶつぶつと言っていた。庇うと悪化すると思い黙って聞いていたが、飛び火していないか葵は少し心配していた。


「僕は大丈夫だよ。リネも誰かを責めたいんだ」


 マーロはいつもより少し弱弱しい微笑を浮かべて葵の頭を慎重に撫でた。


「これ、この本。どうだった? エルロイのおすすめ」


 エルロイはチェストの上に置かれていた本を一冊持って小さな足取りで葵に近付いてきた。

 マーロとは反対側の葵の隣にぼすんと腰を落とすと、本をぺらぺらとめくった。


「あ、ごめん…、まだ読んでない」

「そう。じゃあ一緒に読も。はい」


 エルロイは葵の足に本を載せて一ページ目を開いて見せた。


「もう、エルロイ、それは後にしなさいよ。この鎖。ひどいもんね」

「リネは、どうしたの」

「ぐっすり寝てる。クマが酷かったわ。あんたの顔も酷いもんだけど」

「……夜、目を開けるといつも横に立っているの。たまにすぐ近くに顔があって、触ってはこないんだけど、息がかかるくらい近いのよ」

「こっわ……。ああ、いや、あいつ心配性だからね。とにかく、リーダから説得してもらうなりして、船の中くらいは自由に行動できるように、前みたいに戻してもらうわ。あのね、あの…、日本に帰れるかは分からないんだけど、とにかくそれくらいのことはできるようにするから」


 かにゃんは手を組んだり伸ばしたり後ろに回したり、落ち着かない様子で葵に語りかけた。

 一生懸命に自分を想っている様子が伝わって、葵はベッドに膝立ちになり、手を伸ばしてかにゃんを抱きしめた。酷い男の仲間ということなどどこかに吹っ飛んでしまった。

 かにゃんはそれまで以上に手をぶんぶんと振り回して驚いたが声には出さず、マーロが「抱きしめかえせ」とジェスチャーで伝えたのを見て、真っ赤になりながら葵の頭を腕に包んだ。

 荒くれ者の男所帯の中で、女友達なんていたことがなかったかにゃんにとって、少々急ぎすぎるコミュニケーションだった。


 やわらかい髪の感触に戸惑いと共に、腕の中で葵が泣いているのを感じていた。


 ***


「ここが居心地いいと思ってくれれば、少なくとも無理に逃げ出そうとはしないかもしれないわ。そしたらリネも幸せ。マーロも幸せ」

「かにゃんも幸せと」

「違うわよ! エルロイは黙ってて! そのために粉骨砕身しているのよ。感謝してよね」

「そうだな、葵の元に細かに通ってやってくれ。リネもそれでいいな」


 まだ覚醒しきっていないようなリネは、もうずいぶん前に目を覚まして長いことリーダと話し込んでいた。いろいろと条件を付けて、最低限の日常生活に必要な出歩きと、来客の受け入れまでには至ったらしい。


「そうしたら、姉さまはここから出て行かない…?」


 リネはそればかりを何度も繰り返しリーダに聞いた。


「リネ、葵の望みを叶えてやるんだ。そう約束したんだろう? ここでできることは全部叶えてやれば、葵は望んでお前の傍にいるようになるぞ」


 そうなればいい、とリーダは心から望んだ。


「葵が来るまで、抜け殻のようだった。良くも悪くも感情が波立っているリネを、俺は好ましい変化だと思っている」


 リネは涙目になってリーダの胸に抱きついた。

 かにゃんはつい「似ている…」と呟いてしまったが、なんだか悪いことを言った気がして顔の前を手でぶんぶんと払った。


「甘やかしすぎ」


 エルロイはきつい匂いのする葉っぱを磨り潰しながら、この薬がより苦くなる方法を考えることにした。

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