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大罪人の神殺し~その少年、無実につき世界に復讐する〜  作者: ナマケモノの弟子
プロローグ
4/8

4話 始まりの終わり

「これで、全員」


魔術師は、全員、殺した。あとは


(大司教。)


斬撃で切り殺そうと、辺りを見渡す。

しかし、どこにも大司教の姿はない。


(逃げられた…)


まあ、そりゃそうだろう。

あの最後の魔術師に随分と時間を取られた。

それまでもなかなかに手こずった。


逃げるのは、当然だ。


問題は…


(どこへ逃げた?)


こちらの戦闘がいつ終わるかも分からない状態で、遠くへは行かないはず。

しかし、近場でこちらの斬撃を防げる場所など…


少し考え、唐突に、思い至る。


(天秤の城か…!)


この街の東側にそびえる、やたらと格式ばった白亜の城。

なるほどあそこの奥間には強力な魔術結界が張られている。

たとえ魔剣だろうと容易には破壊できない。


安全を考えれば、あそこに逃げ込むのが一番だろう。


(くそっ!)


想定外だ。

どこに逃げ込もうと殺せるつもりでいたが流石に天秤の城に逃げ込まれてはどうしようもない。


魔術結界だけではない。

中には数十単位の魔術師が控えている。

あそこを落とせる自信はさすがになかった。


大人しく逃げるか?

いや、だが、怒りが収まらない。

大司教だけを取り逃がしたというのも釈然としない。

しかし天秤の城はなぁ…


グルグルと頭の中で葛藤する。


(…いや、待て。)


そうだ。そういえばそうだった。

昔、宮廷魔術師を目指した友が言っていたではないか。


「なあ、知っているか?センリ。

設置型の魔術結界ってのは、今の技術じゃ、魔術しか防げないんだ。

この国の重要施設は大抵これに頼ってるが、最近、外からの砲撃とか案外通るんじゃないかと不安になるよ。」


なんだ。なら簡単だ。


俺は、ギャラクを構え直す。

できるだけ、水平に。

そして、長く。

天秤の城を断ち切れるほど、長く。

それを目指して斬撃を生み出す。


「いっけぇぇぇ!」


射出された斬撃は遥か50mを越える長さ。

それがそのまま一直線に、とは行かず少しズレたが、概ね狙い通りに天秤の城を引き裂いた。


支えをなくした城の上部が崩れ、それを受けて中部も壊れ、下は瓦礫に埋まっていく。


これなら、魔術結界は関係ない。

たとえ別の結界を張ったとしても、生き埋めになるだけだ。

いや、あれほど大量の瓦礫を受け止められるほどの結界を生み出せる魔術師が果たしているものなのか。


いない。と信じたい。


まあ、とりあえずの復讐は果たしただろう。


向こうは魔術師を殺され、城を完全に崩壊させられた。

恐らく中にいた数十名の魔術師たちも無事では済まないだろう。


それに対して俺は、体はボロボロだが、まだ動ける。


(…馬鹿な。)


自身の身体を疑う。


そんなはずがない。

魔剣は、魔術を埋め込まれた刀であり、『神罰刀 ギャラク』もその一種だ。


そして、魔剣に限らず、魔術を埋め込まれた武具には共通して言えることがある。


それは埋め込まれているのは“魔術”だけということ。


つまり、使用には魔力が必要なのだ。


そして、今日、俺はあれだけ斬撃を連発し、その上50mほどの斬撃を生み出すほどの魔力を消費した。


本来なら、魔力が枯渇して死んでいてもおかしくはない。


なのに、まだ動ける(・・・・・)

そんなはずがあってたまるか。


「…まあ、いいか。」


色々な考察は頭に浮かんだが、今はいい。

とりあえず、街を出よう。


そう思い、ゆっくりと歩き出す。


人っ子一人外にはおらず、どこからともなく血の匂いのする半壊した街並みを歩きながら考える。


第三王都を囲む城壁の扉には警備の者もいるだろうか?

いや、まあ居ても大した問題じゃないな。

ギャラクがあれば、いくらボロボロとはいえ魔術師や本物の(・・・)騎士以外なら対抗できるだろう。


じゃあ、出て、その先は?

どこへ行く?どう逃げる?


今はまだ、分からない。

それでも、歩く。


歩くにつれて戦闘の余韻が薄れ、自然と焦りが出てきた。

その焦りが、歩みを急がせる。

早く、早く、この街からでなくては。


第一王都から増援が来る前に。

魔術師団が動き出す前に。


そうだ。

彼らが来れば俺一人では対抗できない。

何人かを殺すことはできても、最終的には捕まってしまう。

根本的に、数が違いすぎる。


そして、もし捕まってしまえば?

…当然、また処刑が行われるのだろう。

今回とはやり方が違うかもしれないし、その前に尋問やら何やらがあるのかもしれないが、最終的には結局処刑される。


また、あの苦しみを味わうことになる。

心が叫ぶ。

それは、「嫌だ。」


だからこそ

早く、早く、早く、早く!


それだけを思い足を動かす。

その思いが天にでも届いたのか、城壁の扉には誰もいなかった。


これ幸いと城壁の扉を素通りし、そのまま歩く。


城壁の外は、子供の頃によく遊んだ。

だから、休息をとるのに手頃な洞窟の場所くらいは知っている。


そこを目指し、歩く。





**





どのくらい歩いたのだろうか。


歩いて、歩いて、ボロボロの体で、それでもまだ歩いて。


夕日で真っ赤に染まった空が、完全に黒で塗りつぶされ、月が東の空からその顔を見せ始めた、その頃。


センリは、ようやく目的の場所に辿り着いた。


別に、こことて安全とは言えない。

この位置では、第一王都からきた増援がここを見つける可能性も大いにあるだろう。


だが、どうしようもない。

ここ以外の場所は知らないし、それに疲労感がえげつない。

とりあえず、寝なければ始まらない。


崖に開いた洞窟の床にばったりと倒れ込む。


もちろん、後を付けられていたなど気づく余地すらなく。

月夜でなお黒く、その姿を捉え難いそれ(・・)が自身の横を通り、洞窟の奥へ入っていったことなど知りもせず。


洞窟の床でそれ(・・)が何かに火をつけ、燃やしだしても気づかずにセンリはただ疲労に従い眠りを求める。


洞窟を、淡い煙がゆっくりと満たしていく。


…寝息が聞こえてくるまで、さほど時間はかからなかった。

読んでいただきありがとうございます。

感想などありましたら是非コメントしていただけると嬉しいです。


ここからの展開、実は少し迷ってるんですが、明日中には出せるよう頑張りますのでよろしくお願いします。

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