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帰宅してそれから



「ただいまー」


「お邪魔します!」


 声をかけるとすぐに中から兄さんと姉さんが出てきた。


「おかえりラウル!どうだった!?良いスキルは貰えたかな!?魔法の適正は!?大丈夫、もしあまり良くなくても僕が養ってあげるから!」


 兄さん……心配してくれるのは嬉しいけど結果が悪かったことを前提に話すのやめてくれないかな……。


「あっ、ずるい!ラー君は私が養うの!……ってリリエット!?なんであなたラー君とそんなにくっついてるのよ!」


「お姉さん、お久しぶりです」


「はーいお久しぶりー……じゃなくて!ラー君、この女狐になにかされなかった?」


「なにもされるわけないだろ……。父さん達も待ってるだろうし早く行こうよ」

 

 呆れ気味にそういうと兄さんが悲しそうな顔をして


「やっぱり良くなかったんだね……」


「なんでそうなるんだよ!」


 この二人ひどくないか……?


 もうこの二人は放っておいてリリィと家の中に入っていく。他の皆がいるであろうダイニングへ向かう途中、リリィが話しかけてきた。


「相変わらずお兄さんもお姉さんも面白いね!」


「あれがか?鬱陶しいだけじゃないか?」


「そんなことないよ」


 そうして歩いているとダイニングに着いた。そこには母さんや父さん、クロートの他にリリィのお父さんとお母さんもいた。真っ先に俺達に気づいた母さんはとても嬉しそうな声色で声をかけてくる。


「あらあら、一緒に帰宅なんてもう夫婦みたいねえ」


「なっ……!」


「サ、サテナさん!そんな……まだ夫婦なんて……えへへ……」


 いやなに喜んでんの?朝はあんなに照れてたくせに。


「おい、正気に戻れ」


「……はっ!サ、サテナさん!僕達はまだ夫婦ってわけじゃ……!」


 あ、これだめなやつだ。たぶんしばらく俺達はおもちゃにされる。


「ふんふん、まだ、なのねえ」


「あっ、ち、違くて!」


「はっはっは、いいじゃないかリリエット。ラウル君は良い子だし、この際貰ってもらおうか」


「お、お父さん!?」


 リリィはこれ以上無い程に顔を赤くしている。いつも肌が白いので変わり様が凄いな。彼女は今日何回も赤くなっているが今まではまじまじと見る余裕が無かったのでこの際堪能しておこう。


「ちょっ、ラウルも眺めてないで助けてよ!」


 とうとう堪えきれずにリリィが助けを求めてきた。たしかにリリィの可愛い顔を見れなくなるのは残念だが拗ねられても困るしな。


「皆そのくらいに「いい加減にしてください!」……ん?」


 そろそろ止めようとすると突然クロートが怒鳴りだした。


「なにが夫婦ですか!リリエットが嫌がっているじゃないですか!こんなやつと一緒にされては彼女が可哀想です!」


 おぉ……、すごい的外れなことを言ってるな。リリィはただ恥ずかしいからやめてほしいと言っているんだろうが……


「ク、クロちゃん。僕……別に嫌なわけじゃ……」


「僕はリリエットの気持ちをわかっていますから大丈夫ですよ!それと僕をクロちゃんと呼ぶのはやめてください!」


「えぇ……」


 おいクロちゃん、リリィまで呆れちゃってるぞ。


「はぁ……おいクロート、今日はラウルとリリエットが主役だ。おとなしくしていろ」


 まだクロートは何かを言おうとしていたが父さんに諌められおとなしく座った。


 そのタイミングでちょうど兄さん達も帰ってきた。


「あれ?何かあったの?」


「いや、何もなかったよ」


 これを話すとまた面倒くさくなりそうなので言わないほうがいいだろう。


「ふ〜ん」


 兄さんはそう返すと自分の席に座る。


 全員が座ったところで父さんが音頭をとる。


「今日は二人の特別な日だ。後で二人にはステータスカードを見せてもらうが今は食事を楽しんでくれ。それでは、乾杯!」




□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ 




「さて、そろそろ二人にはステータスカードを見せてもらいたいんだが、二人共自分の家族以外にも見せて大丈夫か?」


 宴会のような食事もだいぶ落ち着いてきた頃、父さんがそう切り出す。


「俺は別にいいよ」


「僕も大丈夫です」

 

「わかった、ではまずリリエット。君から頼む」


「はい、これが僕のステータスカードです」


 まずはリリエットがステータスを公開する。皆……特に彼女の両親が食い入るように見ている。それは当然だと思えるのだが……なぜクロートまで一緒に見ているんだ。


 一方リリィは緊張した様子でそれを見ている。おそらく自分の魔法適正がバレないか不安なのだろう。


 やがて全員が見終るとリリィの母が言った。


「固有スキルが三つもあるなんて凄いじゃない!魔法適正も6だなんて驚いたわ!」


 彼女の両親としは満足な結果だったようで喜んでいる。しかしなぜか彼女は表情を緩めない。皆にバレないか心配だったんじゃないのか。


 顔を崩さない彼女に今度は俺の母サテナが言った。


「大丈夫よリリィちゃん。あなたのステータスは凄いし、別にステータスが悪かったらラウルと結婚させないなんてことはないんだから」


 母がそう言った瞬間に彼女は喜びの表情を浮かべる。心配してたのはそっちか……。


「さあ、次はラウルだ。皆にステータスカードを見せてやれ」


「はい」


 父さんに言われ俺はカードを出す。リリィのときのように皆食い入るように見る。そして……


「ははっ!なんだこのステータスは。雑魚じゃないか!」


 クロートが大声で嘲笑うように言う。


「固有スキルも役に立ちそうなものも無いし。適正なんて1じゃないか!」


「クロート!」


 すぐさま父が諌めるが止まらない。


「止めないでください!こんなやつにリリエットは任せられません!おいラウル!僕とリリエットを賭けて決闘をしろ!」


「……は?何言ってんの?」


 クロートの発言に思わず疑問を口にしてしまった。


 しかしそれはクロートの耳には届かなかったようで的外れなことを言い続けている。


「リリエットは僕と結婚するんだ!お前はヒュルドラド家の面汚しだ!」



 今日は新たな発見が多いな。まず好きという感情を知り、そしてその好きな相手と一緒にいることの楽しさや嬉しさを知った。そして今、今まで感じたことの無い程の怒りを感じている。自分を馬鹿にされたからではない。こいつ、人を……リリエットをなんだと思ってるんだ。


「いいだろう。その決闘受けてやる」


 そう言って外へ歩いていく。すると通路を父さんが塞いで立っている。


「二人共、そう熱くなるな。それにラウル、クロートは既に剣術の練習を始めている。お前では勝てない、考え直せ」


「大丈夫だよ父さん。ちゃんと手加減するから」


 父の言葉に冷静に返す。まだ何かを言おうとしていたが、止まるつもりはないので少し威圧をして通してもらう。


 外に出たら普段兄さん達が使っている木剣を手に取り構える。


「ふんっ、安心しろ!手加減はしてやる!ただし骨の一本や二本は覚悟するんだな!」


「弱い犬ほどよく吠えるもんだな」


「貴様っ!」


 クロートは俺の挑発に乗り一気に距離を詰めてくる。だが遅すぎる。俺は木剣でクロートの靴を斬り刻み、転んだところで木剣を突きつける。


「俺の勝ちだな」


「くっ!一体何をした!木剣で靴を斬るなんてありえない!」


「なにもしてねえよ。お前なんか木剣ですら斬り刻めるってだけだ」


「こ、これは無効だ!もう一度だ!」


 尻もちをついたままクロートはそう叫ぶ。


「まあ、別に勝敗なんてどうでもよかったんだがな。ただこうすればお前がおとなしくなると思ってやっただけだし」


 そう言うと俺はクロートの横の地面に木剣を突き刺し、睨みつける。


「お前な……リリエットをなんだと思ってんだよ。彼女は物じゃねえんだよ。それに彼女の感情を全無視しやがって」


「ひっ……!」


「そこまでだ!勝負はもうついただろう!」


 いつの間にか全員が外に出て俺達を見ていた。俺は地面に刺した木剣を抜き、元あった場所に戻す。クロートはまだ尻もちをついたままだが放っておこう。


「すまないな今度また招待をするので今日は勘弁してもらえないだろうか」


「いえいえ、思春期の若者にはよくあることでしょう」


 父さんの言葉にリリィの父がそういうと帰り支度を始めようと屋敷の中へ戻っていった。


 俺達も中へ戻ろうとしたところでリリィに袖を引かれ止まる。


「どうした?」


「あの……ちょっとこっちに来てくれないかな」


 俺はリリィに手を引かれながら屋敷の裏口まで行く。そこで彼女は手を離してこちらを向いてくる。


「あのね、さっきラウルは僕のために怒ってくれたでしょ?なんていうか……凄く嬉しかったんだ。だから……ありがとう」


 彼女はこちらを見上げながらそう言ってきた。


「礼を言われるようなことはしてないよ。俺はただあいつの発言が気に入らなかっただけだよ」


 これは本心だ。たしかに彼女のためというのもあったが大きな理由は俺の感情によるものだった。しかしその言葉に彼女はこう返してきた。


「それでも僕は嬉しいよ。……それでね、さっきクロちゃ……クロート君が言ったことを聞いて想像してみたんだ。僕がクロート君と一緒にいるところを。でも想像できなかった。なにも思い浮かばなかったんだ。なのに君と一緒にいるところは沢山考えられたんだ。その時の僕はとても幸せそうだった。自分の妄想なのに嫉妬しちゃうぐらいね。それで思ったんだ。僕は君以外と一緒にいることなんてありえないって。これは僕の本心だよ。雰囲気とかじゃなくて自分の意志で今言いたいから言うんだ。ラウル……僕は君が好きだ」


 そう言った彼女は「えへへ……」と照れながら笑っていた。そこまで言わせたら俺も応えるしかない。


「リリィ……俺も君が好きだ。だから……俺の恋人になってくれないか」


 俺の告白を聞いた彼女は嬉しそうに答えた。


「はい……!」



 



読んでいただきありがとうございます!

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