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覚醒の儀とそれから②




 目を開けるとそこは似てない全神の像が目の前にあった。なんかムカつく。


 さっきから神父が心配そうにこちらを見ているのでさっさと立ち上がる。すると目の前の神像から光が集まり一つのカードが現れた。これがステータスカードだ。宙に浮くステータスカードを掴むとカードは光を失ってしまう。取り敢えずどんなものか見てみよう。






―ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ラウル・ヒュルドラド  人間  10歳



【スキル】

 



【固有スキル】


 『限定された武器庫』『武器支配』



【魔法】 1


 『雷魔法』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 


 うん、まあ、ある意味すごいな。スキルが一つも無い。でも固有スキルは二つもある。


 自分のスキルの詳細を見たい場合はステータスカードの見たいスキルを押せば見ることができる。例えば『限定された武器庫』を押すと



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『限定された武器庫』


 このスキルは無限に収納できる異空間を作り出すことができる。ただし収納できるのは剣のみとなる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

 こうして詳細を見ることができる。全神のやつ……わざと内緒にしていたな。ついでにもう一つも見てみるか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『武器支配』


 どんな武器でも支配することができる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そのまんまじゃねえか!そんなの名前だけでわかるわ!あいつちょっと気が利くなと思ったら……まあ、それでもあって困ることはないだろう。


「あの、ラウル君?」


 自分のカードの確認をしていると横にいる神父が話しかけてくる。


「覚醒の儀は無事に終わったみたいだね。気になるのはわかるがまだ君以外には誰も終わっていないから次の人を通してあげてくれないかな?」


 神父に言われ後ろを見るとすでに行列ができていた。さっきとは打って変わって我先にと押し合っている。リリエットを探してみるがどうやら一番後ろにいるようだ。俺は元いた場所に戻り他の奴らが儀式をしているのを眺める。だって他にすることないし。俺はスキルを持ってないからな。ちなみになぜ俺がスキルを持っていないのかというといらないからだ。


 剣神との模擬戦闘の際に使っていた技もこの世界ではスキルとして存在するが、自身の技術で技を使うほうが圧倒的に楽なのだ。魔法を使うには魔力が必要なように全てではないがスキルを使うのにも体力が必要になる。その際に消費する体力は俺がスキルを使わずに技を出すのよりも大きい。つまり俺にとっては無駄でしかない。


 それにスキルで『幻月』を使った場合、決められた動きしかできないのだ。なので全神に剣術関連のスキルはいらないと言っておいたのだ。


「ね、ねえラウル……」


「ん?リリエットか。もう終わったのか?」


 いつの間にそんな時間が経っていたのかすでに全員儀式を終え、それぞれ自分のステータスカードを見せあったりしている。そんな中、リリエットは少し不安そうな顔をしてこちらへ歩いてきた。


「うん、終わったよ。それよりさ、朝は……その……ごめんね」


「なんだそんなことか。気にするな。誰だって突然あんなこと言われたら動揺するさ。俺の方こそ何も考えず気持ちをぶつけて悪かった」


「い、いや!あの時も言ったけど嫌ではなかったからいいんだよ!でも……こ、心の準備ができてなかったというか……」


 そう言って彼女は顔を赤くして俯いてしまった。


「でもあれは俺の本当の気持ちだから。雰囲気に流されたとかじゃなくて正真正銘本心だから」


 すると彼女は顔を上げてまだ赤いまま優しく微笑んだ。


「うん、ありがとう。でも返事は少し待ってくれないかな。このまま返事をすると僕が雰囲気に流されている気がしちゃうから」


「わかった。いつまでも待つよ」


 「それでね」と言い、彼女は自分のステータスカードを見せてきた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 リリエット       人間  10歳


【スキル】



【固有スキル】


 『魔力覚醒』『並列魔法』『複合魔法』


【魔法】 10




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「これ、どう思う……?」


 お前もか……。固有スキルも名前から凄そうなのがあるがそれよりも魔法適正だ。全神の言うとおり本当に10になっている。だが属性が書かれていないのはなぜだろう。


「固有スキルの詳細とか見たのか?」


「うん、『並列魔法』はいろんな魔法を同時に発動できるんだって。それで『複合魔法』が複数の属性を混ぜて魔法を発動できるみたい」


 なんだそれ、強すぎるだろ。


「それでね、『魔力支配』なんだけど……たくさんありすぎてよくわからなかった。なんか魔法の詠唱を無くせたり。魔法に必要な魔力よりも多く魔力を籠めると本来の魔法よりも威力を上げられるみたい。他には発動した魔法の軌道を自由にできたりとか多すぎてわかんなくなっちゃった」


 ちょっと強すぎないか……。普通こんなにスキルがあっても魔力が足りなければ意味がない。しかし、彼女は充分過ぎる程の魔力を持っている。たしかにこんなのバレたらまずいことになるな。


「なあリリエット。これ、誰にも言っちゃ駄目だぞ」


「え?あ、うん!わかった!でもお父さん達にはなんて言おう……」


「たぶんだけど今は俺とお前しか見れなくなってると思う」


「そうなの?なんでそう思うの?」


「えっと……なんとなく?」


「よくわかんないけどラウルの言うことなら信じられる気がする!でもこれで二人の秘密ができたね!」


「あ、あぁ……」


 くそっ、これは不意打ちだろ……。


「あ、あとさ……できれば僕のことはリリィって呼んでくれないかな」


「そ、それは……」


「だめ、かな……?」


 そんな目を潤わせて見ないでくれ。そんな目で見られたら断られるわけがないだろう。


「リ、リリィ……」


「うん!ありがとう!」



 愛称で呼んでやると太陽のように明るい笑みを浮かべてくれる。この顔が見れるなら何度でも呼んでもいいと思ってしまう。


 やはり今日の俺はどこかおかしい。彼女と話していると気分が高揚してしまう。そしてそれがまた楽しいのだ。


 俺はこの時間がいつまでも続いてほしいと思ってしまっているが、終わりはいつでも来るものだ。





「おいラウル。お前のステータスカードを見せてみろよ」


 この雰囲気をぶち壊してくれやがったのは俺達と同じクラスだったダラという少年だった。


「なんだ、ダラか」


「なんだとはなんだ!おいデイル、こいつのステータスを見てやれ!」


「あぁ、もう見たよ。こいつスキルが一つも無いじゃねえか。しかも魔法なんか適正1だぜ」


「ひゃっはは!マジかよ!完全に落ちこぼれじゃねえか!」


 なるほど、これが鑑定というやつか。一瞬変な感じがしたが鑑定されていたのか。だが感覚は覚えた。もう鑑定は躱せるだろう。


「おい!なんか言ってみろよ!」


 こいつはあれだな。魔法の適正で全てを決めるタイプだな。成長しても禄なやつにならんだろう。


「なんだよその態度は!俺は火魔法適正5だぞ!」


 面倒くさいので無視をしているとこちらに手を突き出して魔法を打とうとしている。


 何やってんだこいつ。魔法は適正があるだけじゃ使えないのを知らないのか。詠唱も唱えていないし魔力の操作も拙い。ていうか魔力操作は学校の必修授業の筈だが……こいつ授業受けてないのか?だがなまじ適正があるせいで一応火球は発生している。まああれじゃ標的に当てることもできないが。だがこのままでは暴発する可能性もあるので俺は手を魔力で強化し、ダラの作った火球を握りつぶす。


「なっ!」


「危ないだろ。周りに当たったらどうするんだ」


「……チッ!覚えてろよ!」


 

 どうやら騒ぎに気づいて野次馬が集まってきたようだ。ダラは周囲の視線に気づき、ありがちなセリフを残してデイルとその他を連れて去っていった。


「ねーラウル、鑑定って凄いね!」


「いや、少しは心配してくれてもいいんじゃないか……」


「ラウルが手を強化していたのはわかってたもん。逆に僕は加減を間違えないか心配してたよ」


「おい」


 その心配は別にいらないだろ……。


「それよりさ!早く帰ってお父さん達に見せてあげよ?」


 わざと話を逸したな。


「……あれ?」


「どうした?」


「ちょっと僕のステータスを見て」


 そう言われて見てみると【魔法】の下に『火魔法』が追加されていた。


「これって……」


「あぁ、たぶんな」


 おそらくこれはさっきの火球を見たからだろう。適正10は見た魔法の属性を使えるようになるのではないだろうか。


 もしそうだったら全ての属性を使えるようになるかもしれないのか。チートすぎるだろ。


 リリィは自分のステータスカードを見てボソリと呟く。


「これなら僕もラウルにお世話になりっぱなしとかにはならないよね」


「俺はお世話しっぱなしでもいいけどな」


「き、聞こえてたの!?」


「別に照れることないだろ」


「う、うぅ……早く帰ろうよ!たぶんお父さん達もラウルの家に居るだろうし!」


「そうだな、これ以上からかうと怒られそうだし」


「もうっ!ラウルの意地悪!」


「ははっ」


 そう言いながらも俺の横をピッタリとくっついて歩く彼女を愛おしいと思いつつ、俺達は帰路についた。




読んでいただきありがとうございます!

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