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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
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4人は愛ガール

作者: 大野竹輪
掲載日:2018/05/06

この小説は「キラキラヒカル全集」のひとつとしての短編小説です。


内容は 女性の恋愛に関わるお話で、数ヶ所謎めいた部分を取り入れています。


最初から答えを出さずに読者に創造していただきたく、あえて謎の部分を ☆マークで表現しています。


そして第2部の謎の解明と照らし合わせるように書いています。


さらに4人の過去(高校時代)を第3部に加えました。


目次


第1部

第2部

第3部

第4部


<<< 解説 >>>

この小説は第1部にて終わっていますが、『推理(謎)』の部分の詳細説明を第2部~第3部にてしています。また小説「キラキラヒカル全集」の1つにもなっています。そのため関連情報を第4部に加えました。




第1部


<解説>

通称りょう。22歳のOL。負けず嫌いのA型。友達からはいつも大人っぽいと言われている。自分のスタイルをいつも気にするおしゃれにこだわるタイプ。


今日も出かけるのに早朝からお気に入りのベージュのレースが細かく入ったフリル付きネグリジェのままで化粧台で迷っていた。


りょう「あー、どうしようかなぁ・・・」


そして1番上の段の引き出しを開けてさらに悩んでいた。そこにはたくさんの種類のピアスが所狭しと並んでいた。


りょう「うーん・・・やっぱりこれかな。」


彼女はピアスがとても好きであれこれ付け外しを散々繰り返していたが、結局今日はバイオレットのオープンハートイヤリングになった。

続いてクローゼットに移動した。今度はその前でまた悩み始めた。


りょう「うーん、どうしようかなぁ・・・」


かれこれ1時間は優にかかったろうか、ようやく出かける準備が整い、部屋を出て鍵をかけた。


<解説>

通称綾香。21歳のOL。神経質のB型。突然突拍子もない閃きがあったりするが、とにかく器用さとセンスでは友達の中では1番らしい。


今日は出かけるのにいつもと違って玄関前の大鏡の前に立って、


綾香「よし。」


ニヤッとしてみせた。まるで千秋楽の試合で、叩き込み1本勝負ありという感じ。最高のガッツポーズの様子だった。


用意周到な彼女は出かける上着などの全てが、昨夜寝る前にすでに準備してあった。そのためわずかの15分くらいで出かける準備が整い、部屋を出て鍵をかけた。




今日は節子、晴海、りょう、綾香の4人がファミレスで会うことになっていた。4人は同じ高校の出身で当時同じクラブに所属していた。


そしてここはそのファミレス「リトル・キッチン」。店の中で待ち合わせをする約束になっていた。そしてりょうが到着してようやく4人が揃って席に着いた。


綾香「り、りょう・・・???・・・久しぶり。」


晴海「ほんとだね。」


<解説>

通称晴海。21歳。荒川晴海。荒川家のなかでも一番苦労知らずで自由奔放に生きているO型。お酒とタバコが大好き。


節子「何年ぶりかな?」


<解説>

通称節子。24歳のOL。詳しいことは不明。23歳のとき、晴海の店に何度か通っていた。お酒とタバコが大好き。


りょう「4人で会うのは3年?」


りょうがやや首をかしげながら言った。


節子「それぐらいだね。」


節子はタバコを吸い始める。それを見て晴海もタバコを出した。


りょう「2人ともタバコ吸うんだ。」

節子「りょうは吸わないの?」

りょう「吸ったことはあるけど・・・すぐにやめたわ。」

綾香「私はまったく駄目だわ。」


やや口をとがらせながら話す綾香だった。


晴海「いいの?今吸うけど・・・」

綾香「うん、大丈夫。」


りょうが綾香の方を見ながら、


りょう「綾香に悪いんじゃない。」

晴海「じゃ1本だけにするわ。」


綾香「節子は今どうしてるの?」

節子「私はOL、あまり好きじゃないけどね。」

綾香「私もよ。うちの会社の男、ろくな奴いないわ。」

節子「うちもそうよ。まあ誘いはしつこいけどね。」

綾香「同じだわ・・・」

節子と綾香は笑い合っていた。


晴海「うちはスナックだから、ややこしい男の相手ばかり。」

節子「それもいやだね。1人くらいかっこいい奴いないの?」


晴海「まるでだめよ、まあ金持ちはいるからうちは常連でもっているのよ。」

節子「それいいよね。1人捕まえときゃ何とかなるの?」


晴海「うん。まあそうねぇ・・・毎週2回は落としていくから。」


綾香はカップをスプーンでかき回しながら、

綾香「へえー・・・それすごいね。」

そして一気に飲みだした。


晴海「でも相手は大変だわ。」

りょう「もしかして・・・」

晴海「そんなの当然よ。何も無かったら何度も店に来ないから。」

りょう「でもいやじゃないの?」


晴海「そりゃそうだけど、仕方ないし。まあ年に2回ぐらい。」

りょう「えーそれだけ?」


晴海「うふふ、しっかりじらすのよ。男はね手懐けないと。」

りょう「きゃー大人なんだ。」

節子「みんな大人じゃん。」


けっこう大声で4人が笑い合った。周囲の客が一瞬彼女たちのテーブルに目を向けた。


綾香「せっかく集まったんだから、4人でどこかに行きたいな。」

晴海「そうね、・・・温泉とか。」


りょうが急に喜びだしながら、

りょう「わー行きたいなぁ。」


乗り乗りのりょう。


節子「よーし、じゃ4人で行こうよ。」


それに乗っかったかのような節子。


こうして色々話題が出て、やがて全員が賛成してこの先は旅行計画の話に変わった。その結果予約などは節子がすることになった。


やがて旅行の日取りと場所が決まり、4人が解散する時間になった。



ここは草津温泉。予め節子が予約した旅館に4人が現地集合することになったのである。


「やっほー!」


大きく手を挙げて片手運転しながら車で旅館に到着したのは晴海だった。節子が、


節子「久しぶり。」


晴海はその言葉にうなずいた。


節子「晴海の元気はまったくかわらないねぇ。」


晴海がもちろんよっという表情で右の拳を2、3回動かした。


晴海「あとの2人はまだなのね。」

節子「さっき駅に着いたってメールが届いた。」

晴海「するとまだけっこう後かな?」

節子「そうね、でも連絡のバスがあるから30分くらいで着くんじゃないかな。」

晴海「そうか、けっこう高速は疲れるわ。」


晴海が少しため息をついた。


節子「晴海は車が好きだからね。」


今度は元気な声で笑顔を見せながら、


晴海「しょっちゅうドライブしてるからね。」

節子「ちょっと待ち時間があるけどどうする?」

晴海「ロビーのカフェで休憩してるわ。」


節子はうなずいて、旅館のわきにある車の駐車場を晴海に教えて、自分もそこへ移動した。晴海の赤のロードスターがその後をつけた。そして駐車場に車が止まった。


節子「ほうう、けっこういい車だわ・・・」


晴海の乗っている車をしばらく繁々と眺めていた。


やがて30分も経つと駅とホテルを往復する連絡のシャトルバスが旅館に到着した。

数人の観光客がバスから降りてくる。その中にりょうと綾香がいた。


何気に節子が右手を軽く振った。


歩いていたりょうと綾香はそれに気づいて旅館の入り口に歩み寄った。


りょう「お待たせ。」

綾香「同じく。」

節子「晴海は中で休んでるよ。」


節子は携帯でメールしながら言った。


綾香「晴海早く着いたのね。」


こうして3人が旅館に入って行った。

節子からのメールを見た晴海がカフェから出てきた。


節子「集合できたね。」

りょう「現地集合だから少し心配もあったけど、まあ無事会えたから・・・」


このあと4人は旅館の案内係について行き目的の部屋に案内された。


綾香「ふう・・・」


綾香は荷物を置くと心を癒すかのように長いソファーにどっかと腰を下ろして目を閉じていた。節子と晴海は窓から見える景色を眺めていた。

りょうはアンチックな長い漆塗りのテーブルの上に用意されていた急須とお茶のパックを見つけ、4人分湯飲みに入れ始めた。


綾香「りょうありがとう。」


りょうは4人分のお茶を入れ終わると、左肘を立てて手のひらに顎を乗せながら、


りょう「私さっきからのどが渇いてさ。」

綾香「そういえば電車でゆっくりお茶を飲むこともなかったわねぇ。」

りよう「何もできないままずっと外の景色ばかり観ていたから・・・」

綾香「そう言えばそうだったね。」


節子と晴海もテーブルに座った。


節子「りょうのお茶、いただきます。」


節子がゆっくりと嗜む様に飲んで、


節子「なかなかおいしいよ。」

晴海「じゃ、私も・・・」


晴海が確かめたかのようにして言った。


節子「なに、私は味見かい・・・」


りょうと綾香が笑っていた。



少し時間が経って、


節子「まずはお風呂だね。」

綾香「そうだね、何回でも入れるから。」


あとの3人が笑った。


晴海「夕食の時間まで2時間以上はあるから、ゆっくり入りますか・・・」


こうして4人はすぐに露天風呂に向かった。


さすがに有名な温泉街だったのか、この旅館もほぼ満室状態だった。歩いていてもすれ違う人が多い様子で、

その中には数名の外国人もいた。


露天風呂にもかなり人が多く混み合っていて、4人が並んで浸かっていても隣のグループの話がけっこう聞こえてくる様子であった。


晴海「きっとシーズンも関係ない場所なんだろうねぇ。」

節子「旅館の予約を入れたときもすでに選べなかったわ。」


晴海は周りを見ながら、


晴海「そうだったの。」


綾香は部屋の様子を思い出しながら、


綾香「でもお部屋はいい感じだし・・・」


節子はうなずきながら、


節子「うん、1ランク上。金額もね・・・」

晴海「だよね。」


晴海は心持落ち着いて、優しそうに微笑んだ。

綾香はすぐ頭の上の方にあった露天風呂の案内図を見ながら、


綾香「ここの露天風呂はかなり大きいのね。」

節子「そうよ、旅館探すときに『できるだけ大きい露天風呂のある旅館』で調べたのさ。」


このとき近くにいたアメリカ人の女性2人がそばにやってきた。


女性「はい、こんにちは。」


ややアクセントがはっきりした口調だった。


りょう「こんにちは。」


りょうが笑顔で答えた。


女性「足湯の場所わかりますか?」

りょう「足湯があるんだ。」

節子「パンフレットに書いてあったわ。どこだっけか・・・」


節子はちょっと悩みこんでいた。それを見たりょうはお風呂を出て、そのときそばを通りかかった旅館の女中さんに話しかけた。


りょう「すいません。足湯はどこにあるんですか?」

女中「はい、ここを5メートルほど入ったところです。」


りょうはその情報を聞いてすぐに戻りお風呂に入っていたアメリカ人に英語で話した。


女性「Oh! Wonderful」


りょうはアメリカ人の2人に気に入られた様子だった。


綾香「りょう・・凄いね。」

りょう「なにも・・・」


4人は風呂から出て、今度はうわさの足湯の場所にきた。が、こちらは人がいっぱいで入れる様子ではなかった。晴海が落ち込み顔で、


晴海「またにしようか?」

綾香「連泊だしね。」

節子「そうそう、いつでも入れる。ここの足湯は24時間らしいわよ。」


いつも笑顔を絶やさない節子だった。


晴海「夜中に足湯?」

綾香「それもいいかも。」


4人は笑いながら場所を変えることにした。


節子「私はビールが欲しいから部屋に戻るね。」

晴海「私も飲む。」


こうして節子と晴海は部屋に戻った。りょうと綾香は旅館の中をいろいろ散策し始めた。



少し時間が経って、


綾香「あら?もう夕食の時間だよ。」

りょう「ほんとだ。戻りましょう。」


2人が部屋に戻ったとき、節子と晴海はタバコをやめて、


節子「いいタイミングじゃない、今からここに夕食を運ぶって。」


トントン


節子「はいどうぞ。」


女中さんたちが部屋に夕食を運び始めた。

次々と並んでゆく皿と鉢が4人の心をそれぞれ優しく癒してくれたのであった。


乾杯!!


この日は宿に到着するまでの色々な疲れがあってか4人は皆早く寝てしまった。




次の日。


早起きしたのはりょうだった。1人もう一度散策することにした。


庭はかなり大きくて、うわさの足湯まで結構距離があった。しかし時間が時間だったのか人気は疎らだった。


りょう「よし。」


この時とばかりりょうは足湯に入った。


りょう「ああ良い気持ち・・・」


彼女はやっとのことでリラックスが出来た心地だった。少しして近くにいた高齢の夫婦が話しかけてきた。


女性「おや、早いやっちゃねぇ。どちらからみえたのかな?」

りょう「東京です。」

女性「ああ、そんながなら近いわなぁ。」

男性「ほんとやちゃ。」


夫婦が笑顔で話した。


女性「おらっちゃらっちゃは富山から来たんじゃ。」


富山がどこなのかを知らないりょうは、


りょう「へえー、けっこう遠いんですか?」

女性「今は車があるから早いけど、昔はそうもいかなかったちゃ。」


この後もしばらく会話が続いた。りょうはそれが楽しかった。いつかは彼女もこんな夫婦になれたらいいなと思ったのである。


さてこちらは4人の泊まっている部屋。次に起きたのは綾香だった。


綾香「あれ?」


綾香はりょうがいないのに気づいて、何気に洗面所に向かった。

扉の前にあったサンダルが1つなくなっていたので、綾香も散策に出る事にした。


ロビーの前にある土産物店にはけっこう人だかりができていた。綾香もその中に混じって、いろいろ物色することにしたのである。



一方こちらは泊まっている部屋。


節子「ん?」


節子は急に鼻をつままれた夢を見た。


節子「わ!」


と、思ったら現実だった。晴海が節子の鼻をつまんでいた。


節子「何だよ、人が寝ているのにさぁ・・・」

晴海「ちょっと意地悪だったかな?」


含み笑いの晴海。


節子「ちょっとじゃないし・・・」


ムスッとした節子。


晴海「あんまりゆっくりしていると昼になっちゃうよ。」

節子「え!朝じゃないの?」


急に驚いた節子。


晴海「何言ってんだか・・・時計見てみなよ。」


呆れた晴海が部屋にあった大きな掛け時計を指差す。節子が目を擦りながらじっと見た。


節子「わー!」

晴海「何よ急に大きな声出してさ・・・」


びっくりする晴海。


節子「ちょっと遅刻だよ。早く起こしてよ。」


大騒ぎする節子。


晴海「誰が起こす係りなのよ。」


晴海が呆れた。節子はやっとあとの2人がいないのに気づいて、


節子「2人は?」

晴海「知らないわ。私が起きた時にはすでにいなかったんだから。」

節子「あー、私飲みすぎちゃったんだ・・・」

晴海「やっとかい・・・」


晴海はため息をつきながらまた呆れて、


晴海「私ぐらいよね、節子の相手が出来るのは。」

節子「そうそう、そのとおり。」

晴海「妙に納得してどうしたのよ?」

節子「まだ頭が動いていないみたい。」


3度目の呆れ顔。そうもしているうちにりょうが戻ってきた。


りょう「あらあ、お二人さん。あれ?綾香がいない?」


りょうはキョロキョロ見回していた。


晴海「どうだったの、散歩は?」

りょう「うん、けっこういろいろ観れて楽しかったわ。2人も足湯に是非どうぞ。」

節子「足湯に行ったのね。」

りょう「うん、とっても気持ちよかったよ。」

晴海「節子、行こうよ。」

節子「ランチ終わったら。」

晴海「そっちが先かい・・・」


晴海は今日はずっと呆れる1日かもしれないと悟った。


晴海「りょう、綾香と一緒じゃなかったの?」

りょう「うん。」

節子「ランチまでには戻ってくるでしょ。」

晴海「やっぱそっちかい・・・」


やはり節子の言うとおりだった。4人が揃ったランチは大広間の隣にある食堂を使って、バイキングになっていた。


節子はいきなり気合を入れて、


節子「よおし、食べるぞぉ!」

りょう「食べるのに気合がいるのかな?」


呆れ顔になりかけの晴海が、


晴海「もうこうなったら、ほっときましょ。」


そのとおりで、節子は3人に構わずどんどん食べていた。それはまるでドラえもんに出てくるジャイアンか、それともギャル曽根のようだった。

もっとも節子はギャル曽根よりかは十分太っていたのだが。


節子以外はランチの後足湯に向かった。

節子はさらにデザートを食べると言い出したからである。


節子が1人残った食堂では、いまだにケーキを物色していた。

他に食べている客はなかったが、彼女の凄さを物珍しげに見に来る客が数人いた。

そして店員が渦巻きを作っているのを見てソフトまで注文していた。



こちらは足湯。3人が揃って座っていた。


りょう「なかなかこんな機会がないよね。」

晴海「そうだよね。私たちさあ、なかなか時間が合うってことなかったしね。」

綾香「もう一度学生のころがいいなぁ・・・」

晴海「ほんとだ。やりたい事いっぱいあったからなぁ・・・」


りょう「へえー・・・晴海、どんな事?」

晴海「今更言うほどでも・・・そうだ、温まったら何かソフトでも頼まない?」

りょう「いいなあ、それ。」


ちょうどそこにソフトの売り子さんが通った。


綾香「なんて素晴らしいタイミングなんだ。」

晴海「違うわよ、こちらに来るのが見えたからさ。」


3人は笑っていた。そしてその売り子さんに続いて節子も現れた。


りょう「あはは、食べるときに現れたよ。」


またまた3人が笑い出した。


節子「何よ。私もちょうどソフトが欲しかったんだ。」


そして4人が注文した。


綾香「どうして晴海だけ抹茶なの?」

晴海「私はバニラより抹茶が好きだからよ。」


りょう「この渦巻きって作るのむずかしいんでしょ?」

節子「あー、私店員さん見てたら、結構上手下手があるみたいよ。」

晴海「なんだ、店の裏まで見てるの?」

節子「違うわよ。ちらっと見える所に器械が置いてあって、気になってずっと見たのよ。」

りょう「何が気になったのかな?」


節子「どの店員さんも同じ回数の巻き方をするのかってこと。」

晴海「で、どうだったのよ?」

節子「1人下手な店員さんがいたわ。何度巻いても傾くのよ。」

綾香「あらー、でその失敗作は捨てるの?」

節子「いや、その店員。しっかり食べていたわ。」

りょう「げー、それってわざとじゃないの?」


りょうがそんなもんなんだと思いながら言った。


節子「どーだか・・・」


節子は話しながら食べ終わった。


綾香「節子もう食べちゃったの、早―。」

節子「もう一つ追加。」

晴海「売り子さんもういないわよ。」

節子「じゃ探してくるわ。」


綾香が呆れたように、


綾香「そこまでする・・・」


こうして節子が売り子を探しに行ったのである。


晴海「そうだ。ここの温泉街の小さなお店をいろいろ探索してみない?」

りょう「そうだね、そうしよう。」


こうして3人は足湯を離れ、温泉街に出ることにした。節子はカフェでデザートのケーキを食べたいらしく、1人で喜んでいた。



綾香「けっこういろいろなお店があるよね。」

晴海「骨董品、陶器、アクセサリー、染物、こっちはあられ・・・」

りょう「私アクセにいくわ。」


さすがに自分の趣味が先だったようだ。

りょうはアクセサリー、そして後の2人は骨董品の店に向かった。



ここは骨董品の店。奥から店の主人が出てきた。


店主「どうぞゆっくり見ていってください。」


店主はそう言うと、すぐに元の奥にある座敷に座ってテレビを見ていた。2人はのん気な店主を見ながら、


晴海「けっこう気楽なんだね。」

綾香「する事ないっていうか・・・考えなくてもいい分ある意味うらやましいかも。」

晴海「私は駄目だわ。何かないと・・・」

綾香「酒、タバコ?」

晴海「どっちも。」


綾香が笑っていた。そして変わったとっくりを見つけて、晴海に見せた。


晴海「あはは、もっとも外より中身が・・・」

綾香「そっちかい、あかんわ・・・」


2人は店を出て、酒屋を探した。すると、結構離れた場所にそれはあった。


晴海「やっぱここよね。」


綾香は鼻をクンクンさせながら、


綾香「うーん・・・」


店全体に酒の匂いが充満していたのである。


晴海「あー落ち着く・・・」


綾香はすぐに横目で晴海を見て、


綾香「信じられん・・・」

店主「よかったらこちらで試飲していってください。」


主人が別のコーナーを案内してくれた。そして晴海の目の色が変わった。


晴海「よっしゃぁ!」

綾香「付いて行けない私。」


それでも晴海につられて、綾香も何度も試飲していた。

やがて2人とも結構顔が赤くなっていた。そして予想通り晴海が3本ほど地酒を買ったのである。


綾香「買ったお酒は?」

晴海「旅館の帰りにここに寄って車に積むよ。」

綾香「そうっかぁ、車だったね。」


この後2人はもう2、3軒見て歩いた。そしてりょうが入ったアクセの店に戻った。


綾香「わーまだ探してるよ。」


りょうがまだ買い物をしていた。晴海は店のショーケースをキョロキョロ見ながら、


晴海「へえー、いろいろあるんだ・・・」

りょう「買い物は終わったんだけど、見てるだけでも結構楽しい。」

晴海「うーむ・・・私とは楽しみ方が違う・・・」


つぶやく晴海だった。横で綾香がちょい笑いしていた。



こうして3人が旅館に戻ったのはもう陽が暮れかかっていた。

ちょっと疲れたのか3人は部屋に戻った。


晴海「もうすぐ夕食だからちょいと休もう。」


綾香が自分の足を両手で撫でながら、


綾香「そうね。足が・・・」

りょう「それこそ足湯に入ったらどうかな?」

綾香「うーん、今はそんな元気がないわ。」

りょう「私行ってくるわ。」


こうして夕食までりょうが1人で足湯に行った。


晴海「夕食のメニューはなんだろう?」

綾香「気になる?」

晴海「あはは、節子ほどではないわ。」


綾香が笑った。

少しして節子が戻ってきた。


晴海「あら、カフェで一杯食べてきたのかな?」

節子「何言ってるのよ。お腹を空かせるために今しっかりと露天風呂に行って来たのよ。」


節子が強いアクセントのある口調で話した。


綾香「あー、そこまで考えてるんだぁ・・・」


晴海が笑っていた。


やがてりょうも部屋に戻って4人がそろった。

そして和やかなムードで夕食がすすんだ。


その後も今日の話題で盛り上がっていた。

そして10時近くになった頃、4人が寝る準備を始めてやがて部屋の明かりが消えたのであった。



3日目、午前0時。☆


妙な音にりょうが目を覚ました。


りょう「あれ?こんなとこに目覚まし時計があったけかな?」


りょうは周りを見回した。となりの部屋の大きなテーブルに湯飲みが見えた。

りょうは隣の部屋に移動し、まずはお茶を1杯入れて飲んだ。


りょう「ん?」


眠い目をこすりながら、少しして綾香がいないのに気が付いた。


りょう「どうしたんだろう、こんな時間に・・・」


りょうは部屋のトイレに向かった。するとそこに血の跡が何ヶ所か点在していた。


りょう「え!何・・・?」


りょうは驚いて回りを探し始めた。特に変わった様子はなかった。

ただ、その血の跡が部屋の外に向かっているのに気が付いた。

彼女はその跡を追うようにして部屋から出た。


りょう「いったい何が起こったんだろう・・・?」


とにかくりょうは血の跡を追った。

その血の跡は旅館の端から非常階段に続いていた。

そしてそこからは外に出て螺旋階段につながっていたのであった。


りょう「あーだめだ。こんな夜中に外は・・・。そうだ!」


りょうは急いで部屋に戻った。


りょう「みんなで探せばいいんだ。」


りょうは部屋に到着し、部屋の扉を開けようとしたが、


りょう「し、しまった・・・部屋の鍵・・・あわててしまった・・・」


りょうは部屋から出る時に鍵を持って出なかったのだ。そのため内側からロックされた扉を開けることができなかったのである。


りょう「あー、何て馬鹿なんだろう私・・・」


りょうはため息をつきながら、


りょう「こうなったら旅館のフロントだわ。」


今度は旅館のフロントに行くことにした。フロントに行けば予備キーがあって開けることができるからである。まずは1階まで降りることにしたのだが・・・


ところがエレベーターが点検中で使えなかった。


りょう「え!点検中?・・・こんな時に・・・。仕方ない階段で降りるか・・・」


りょうは旅館の中央にある階段へ向かった。その途中だった。急に遠くから綾香の声が聞こえた。


りょう「え!、まさか・・・」


りょうはその声が気になって、フロントを過ぎて外へ出た。そして声のする方向に足早に歩いていった。そこは足湯の辺りだった。


りょう「こ、こんな時間に足湯・・・」


そして足湯に到着したりょうは、その東側にある隅のベンチに人が倒れているのを見つけた。


りょう「あ!」


りょうは急いで傍に行った。


りょう「あ、な、なんてこと・・・」


そこには全裸の女性が倒れていた。りょうがうつむきかけて顔を確認しようとしたそのとき、急に頭を殴られたような気がした。


次の瞬間りょうはその場で気を失ってしまった。☆



1時間ほど過ぎただろうか、足湯で人が倒れていると巡回していた従業員から旅館のフロントに連絡があって、マネージャーがあわてて倒れている女性を休ませるためのスペースをロビーの隅に作った。


そして倒れた人がロビーまで運ばれたのである。



翌朝。ここは節子たちの部屋。

りょうが目を覚ました。


りょう「ん・・・ここは?」

節子「私たちの部屋よ。」

りょう「え!私ここで何をしてるの?」

節子「何って、4人で遊びに来たんじゃない。」

りょう「え!でも私・・・」


ここでりょうは頭をかかえる。少し痛みが走った様子だった。


節子「足湯で転んで頭を打って倒れてたって。」

りょう「え、誰?綾香?」

節子「何言ってるのよ、りょうじゃん!」

りょう「え?ち、違うわよ綾香が・・・」

節子「綾香と晴海は今2人で大浴場に行ってるわよ。」

りょう「そ、そんな・・・」


りょうにはまったく理解ができなかった。

自分のとった行動がまるで夢の中に閉じ込められたようだった。事実節子もそう思った。


節子「急に部屋から出て行ったからって綾香が探しに行ったんだよ。そうしたら足湯で女性が倒れてるって連絡があって、綾香が背負って部屋まで連れてきてくれたの。」

りょう「え・・・・・」


りょうは益々わけがわからなくなってしまった。


節子「少し休んでいたらいいよ。どこも怪我はしていないみたいだし。」

りょう「そ、そうね・・・」


りょうはこのとき真実に気づいていなかった。

実際の経過は後で分かるのである。彼女はうつらうつらしながら寝てしまった。



それから少し時間が経って、りょうは再び目覚めた。

部屋には誰もいなかった。

りょうはむくっと起き上がって窓の外を見ていた。そこにはたくさんの旅行客が皆楽しそうに過ごしているのがパノラマのように映されたのである。


りょう「よし、私ももう一度散策しよう。」


りょうは部屋を出ることにした。

エレベーターは正常だった。

1階のフロントに部屋のキーを預けて、裏の大きな庭に出てみた。

そしてその中央に小さなベンチがあったので少し座ることにした。


りょう「私、何をしてたんだろう?確か・・綾香の声で・・・急いで足湯に行ったと思っていたのに・・・」


りょうは両手で顔全体を覆うようにして、うつむきながら考え込んでいた。


少しして急に横に座る人がいた。

りょうはすぐに振り向いた。


りょう「あ・・・」

綾香「大丈夫?」

りょう「う、うん・・・」

綾香「元気ないよ。」

りょう「私何だか自分に自信がなくなってしまったわ。」


綾香がりょうの右肩に手をあてて、軽く抱きしめた。


りょう「ありがとう。」

綾香「お昼一緒に食べない?」


優しい声で話す綾香だったが、りょうは疲れている様子で、


りょう「ん・・・、私部屋にいるわ。」

綾香「あっそう。わかった、みんなに言っておくよ。」


こうして綾香は旅館のレストランへ向かったのである。

一方のりょうは何故か足湯の場所にたどり着いていた。


りょう「私、どうしちゃったんだろう。気がつくといつもここにいる。」


りょうは周りの景色をゆっくりと眺めていた。すると旅館の建物の横の庭にカップルらしき2人が歩いている様子が目に入った。


りょう「ん?・・・」


りょうは目をこすりながら、じっとその2人を見ていた。


りょう「あれは・・・もしかして晴海さん・・・?」



一方ここは旅館の庭。


晴海「久しぶりね。」

男「本当だね。」


晴海は驚きながら、


晴海「まさかこんなところで会うとは思いもしなかったわ。」

男「確かに、でも会えてよかったよ。」


男は落ち着いた口調で言った。


晴海「そうね。で、やっぱり仕事は医者なの?」


男がややうなずきながら、


男「まあ、そのつもりだけど・・・」

晴海「あまり嬉しくなさそうね。」

男「そりゃそうさ。親父が無理矢理に医学部へ入れさせたんだ。」

晴海「そう言えばそうだったわね。」


晴海はタバコを出して、


男「好きなんだな。」

晴海「しょうがないよ。」

男「オレのせいか?」

晴海「違う。・・・」


男は急に晴海を抱き寄せた。晴海は抵抗する気もなく彼に従った。



そしてこちらは足湯。


りょう「え・・・何?・・・誰?あの男?」


りょうは確かに晴海と男が話をしているのを見とどけたのだった。



りょうが旅館に戻ったのはそれからおよそ3、40分後だった。


りょう「ちょっとおなか空いちゃったなぁ。」


りょうはレストランへ行った。

そこにはメンバー3人の姿があった。


節子「あっりょう!こっちこっち!」


節子はすぐにりょうを見つけるや手招きして呼んだ。

それを見たりょうは3人のテーブルに歩み寄った。


りょう「みんなに心配かけちゃって・・・」

節子「何、りょうが元気になったらいいんだよ、それで調子はどう?」

りょう「うん、大丈夫。だいぶ良くなった。何か食べようと思って・・・」

節子「それなら大丈夫だね。今さ皆でデザート食べてるんだ。」


確かにテーブルにはケーキやらプリンやら、さらにドーナツ、ピザもあった。


晴海「よく食べるよね、節子は。」

節子「そりゃないでしょ。バイキングだからさ。」


3人は笑った。

りょうも注文をして席に着いた。


晴海「やっと4人揃ったね。」

節子「夕食は一緒にしようね。」

晴海「そうだね。」


こうして4人は午後のひとときを過ごしていた。



しゃべり続けていた4人はやがて夕方になってバラバラに、それぞれの思うままの行動をとることにした。



こちらは旅館の庭。

綾香と男が2人散歩していた。


綾香「ダメじゃない。」

男「すまない。ちょっとしくじった。」

綾香「今度はうまくやってね。」

男「ああ、わかったよ。」


わずか数分のことで2人は別れたのである。



ここは足湯。

りょうが1人でぼうっとしていた。

するとそこへ1人の男がやってきて、りょうの横に座った。


りょう「え!ま、まさか・・・」

男「や、久しぶりだね。」

りょう「ど、どうしてここに?」

男「いやまったくの偶然だね。オレもびっくりしたよ。」

りょう「え?本当なの。本当に偶然?」


男「どうしたんだよ。様子が変だよ。」

りょう「だ、だって私・・・。だって私ここに来てから自分の様子が変なのよ。」

男「診てやろうか?」

りょう「順くん、医者になるんだったよね。」

男「ま、まあね。」


2人の目が合った次の瞬間、男はりょうにキスをした。この後2人は男の泊まっている部屋に向かったのである。



ここは男の部屋。


りょう「私シャワー浴びる。」


少しして男も浴室に入ってきた。


りょう「も、もう・・・昔とちっとも変わんないね。」


男は含み笑いをしながら、りょうを背後から抱きしめた。☆



さらに1時間くらい経った頃、こちらはレストラン。

3人が席に座っていた。


節子「りょう遅いねぇ。ここで待ち合わせしているのに。」

晴海「私探してこようか?」

綾香「私も。」


こうして晴海と綾香の2人がりょうを探しにまわったのである。



綾香は男の泊まっている部屋に行った。


男「やあ。」


綾香は中に入った。

綾香「どう?うまくいった。」

男「大丈夫さ。」

綾香「そう。じゃまたあとでね。」


綾香は急いでレストランに戻ることにした。

このとき綾香が部屋から出るのを晴海が目撃してしまった。


晴海「ここかあ。やっぱりね。」


トントン。


男「やあ。」


晴海は彼の部屋に入った。


晴海「今綾香を見たよ。」

男「そ、そうか。」

晴海「誤魔化してもダメよ。付き合っていた事くらい知ってんだから。」

男「ははは・・・」


男は大げさに笑った。


晴海「後でここに来るからね。」

男「え!」

晴海「あら??どうしたのさ、顔色悪いわよ。」



こうしてレストランでは3人の食事が始まった。


節子「困ったなぁ、りょうはどこへ行っちゃったんだろう?」

晴海「また食べたらさ、みんなで探そうよ。」

綾香「そうね。」


やがて食事が終わった3人はそれぞれ別れてりょうを探しに回ることにした。

綾香は庭の奥の方へ1人で歩いていった。

するとその突き当たりに小さな小屋のようなものがあった。その小屋の扉は開いたままになっていた。


綾香はその中へ入って、


綾香「よし。」


そこにはりょうが横たわっていたのだ。

綾香は急いでそこから離れた。



一方こちらは男の部屋。

晴海と男が2人で何やら楽しげに話をしていた。


男「もう遅いからさ。」

晴海「何言ってんのよ、夜はこれからよ。」


男はとにかく晴海を早く部屋の外に出したかったようだ。

そこへ綾香が部屋にやって来た。


晴海「あら、誰か来たわよ。」

男「お、おい。ちょっと待ってくれ。」


男は慌てて晴海を止めようとしたが彼女はそれを振り切ってドアに向かっていった。


晴海「あらぁ、綾香じゃん。」

綾香「晴海・・・」


晴海は綾香を部屋の中に押し入れた。


晴海「いいねえ。3人で遊べるよ。」


男は呆れていた。綾香も悩んでいた。

しかしどうしようとか考えている場合ではなかった。


こうして男の部屋は夜遅くまでドンチャン騒ぎとなったのである。



こちらは4人の部屋。節子が窓の外のあちこちに輝く灯を見ていた。


節子「ん・・・何だか今回の旅行は妙に喉につかえるものがあるなぁ・・・」


節子はしばらく考え込んだ。そしてやたらりょうに何か問題があるように思えた。


節子「こうして1人でいてもつまんないや。」


節子は思い立ったように、部屋から出ることにした。

そして旅館の庭に出たのである。


庭の少し奥に入ったところでりょうに出会った。


節子「りょ、りょうじゃない!」


節子は急いでそばに寄った。


りょう「あ、せ、節子さん・・・」

節子「どうしたんだよう・・・大丈夫なの?」

りょう「な、なんとか・・・」


節子はりょうを抱きかかえるようにして近くのベンチに座った。

そしてりょうを膝元で横にして休ませた。


りょう「あ、ありがとう・・・」

節子「いいのよ。それより何かあったんじゃないかって・・・」

りょう「ん・・・」

節子「話せないこと?」

りょう「節子さん・・・」


しばらく沈黙が続いた。


ちょうどそこへ晴海がやって来た。


節子「あ、晴海・・・」

晴海「フロントの人がここだって教えてくれたんだ。」

節子「だって行き先言わないと心配するでしょ。」


晴海「りょうじゃない。」

節子「今眠っているの。」

晴海「節子、大変なことになったよ。」

節子「どうしたのよ。」

晴海「詳しいことはわからないけど、綾香がりょうをいじめてるの。」

節子「ほ、ほんとに!」

晴海「私もびっくりしたんだけど、これは事実よ。」


節子「じゃあ今回の旅行っていったい・・・」

晴海「綾香が一番喜んでいたんだっけ?」

節子「で、どうして綾香がいじめているってわかったの?」

晴海「うん。」


このさき詳しいことは省略する。☆


節子「そうだったの・・・」


そこにりょうが目覚めた。


節子「りょう。」

りょう「あ、晴海さん。」

晴海「大丈夫?」

りょう「だいぶ良くなった。」


節子「りょう、何か悩んでいない?」

晴海「もう大丈夫だからさ。元気出して。」


りょう「あ、ん・・・みんなに心配かけさせて・・・」

晴海「そんなことはいいのよ。」

節子「それより、綾香との仲が問題よ。」

りょう「あやか・・・」


りょうはしばらく考え込んでいた。


りょう「わかった。話す。」


こうしてりょうは高校時代に綾香と男の取り合いをしたことを話したのである。☆



晴海「やっぱそうだったんだ。」


晴海はややショックになったが、それよりはこれからどうするかが大事だということに気づいた。


節子「これは大変なことになったわね。」

晴海「こうなったら綾香を騙すしかないわよ。」

節子「ん・・・私は賛成できないけど、きっと今の心境は2人ともそうなのね。」


りょうは少し涙ぐんでいた。


節子「よし、りょうのためにも仕方ないか。」


こうして3人で作戦が立てられたのであった。



りょうは結局部屋には戻らなかった。

仕方なく3人が帰宅準備をしてロビーに集まっていた。


節子「どうしよう?警察に連絡する?」

晴海「そうね。そうしよう。」


1時間後に旅館にパトカーが到着した。

警官が2人降りてきて、ロビーに入ってきた。

それを見つけた節子が警官のところに急ぎ足で歩み寄って、


節子「どうもありがとうございました。」

警官「いえいえ、無事お届けしましたよ。」


節子は丁寧にお辞儀をして御礼を言った。

5分も経たないうちに警官は帰っていった。


綾香「あれ? もういいの?」

節子「うん、説明しておいたから。」

晴海「それじゃ、バスの時間だから早く出よう。」



こうして4人、いや3人の旅行は終わったのであった。


そしてその後のみんなの消息ははっきりしなかったが、ある日のこと、綾香が思い出したようにもう一度3人が集まろうと計画した。

そしてようやく節子と晴海の居場所を見つけて、ファミレス「リトル・キッチン」で会うことになったのであった。



綾香「り、りょう・・・???・・・久しぶり。」

晴海「ほんとだね。」

節子「何年ぶりかな?」



―  完  ―





第2部


PART1 ☆3日め、午前0時。りょうが目覚める前の出来事。


ここは4人が泊まっている部屋。


誰も起きていない事を確認し綾香がむくっと起きた。

そして自分のハンドバッグから薬らしきものを出して湯飲みに入れた。


その後部屋を出て足湯に向かった。

そこには男が銜えタバコをしながら立って待っていた。


男「どうだった?」


男はかなり気になっていた。


綾香「大丈夫よ、うまくいくわ。」


自信ありげの綾香だった。


男「よし、じゃあここで待機するか。」

綾香「テープ持ってきた?」

男「ここにあるよ。」


男はB5サイズほどのハンディオーディオコンポのようなものを持っていた。


綾香「タイミングに合わせて流して頂戴ね。私が合図するから、ワンギリで。」

男「わかった。」


そして綾香がどこかへ消えてしまった。

男はタバコをくわえながら、何か考え事をするかのようだった。


こちらは綾香。

旅館に戻り、そしてエレベーターで泊まっている階に来た。

そしてエレベーターからでるなり、抱えていたA4サイズくらいのパネルをそこに置いた。


“点検中”


綾香「これでよし。」


そして綾香はどこかへ消えてしまった。




PART2 ☆りょうが気を失ってからの出来事。


ここは露天風呂の奥にある足湯。


男が現れて、


男「ここでいいのかな?」

綾香「そうね。」


2人でりょうを足場の隅に寝かせた。

すると誰かがそこに向かっている様子だった。


綾香「安心して、きっと従業員よ。」

男「そ、そうか・・・」


綾香が行ったとおり従業員が見回りをしていたのであった。

2人は隠れることにした。


従業員「ん?」


従業員は誰かがいるような気配を感じたのだが、


従業員「気のせいか・・・」


そして足場の隅に人が倒れているのを見つけた。


従業員「わ!誰かいる・・・」


彼は急いでその傍に行った。そして倒れている女性を見て、


従業員「こ、これは大変だ。」


彼は急いで戻ろうとしたそのときである。2人が現れて、


男「どうしました。」

従業員「あ、そこに女性が倒れているので・・・」


男が従業員の指差す方を見て、


男「ほんとだ。」


男は急いで傍に行った。そして脈を診て、


男「大丈夫ですよ。気を失っているだけです。私は医者なので。」

従業員「そうでしたか、助かりました。早速旅館に戻って運ぶ準備をします。」

男「大丈夫ですよ。私が背負って旅館まで行きますので。」


親切な男の行為をそのまま受けて、従業員は戻って行った。


その後綾香も現れて、2人でりょうを抱えてロビー近くまで運んだ。


男「ここから先はオレ1人で大丈夫だ。」

綾香「わかったわ。」


そして綾香はどこかへ消えてしまった。



PART3 ☆ここは男の部屋。


りょう「私シャワー浴びる。」


少しして男も浴室に入ってきた。


りょう「も、もう・・・昔とちっとも変わんないね。」


男は含み笑いをしながら、りょうを背後から抱きしめた。


りょう「昔を思い出すわ。」

男「オレもだ。」


その後2人は小さなテーブルで乾杯をした。

まさかりょうはグラスに薬が入っているとは気づかなかったのであった。


すぐに倒れてしまったりょうを抱きかかえて、男は部屋を出て行った。


そして庭の奥に向かったのである。



PART4 ☆晴海の話。


晴海の説明の前に晴海と男との出会いを説明しておこう。


ここは晴海のスナック。

晴海の母が経営しているが店を手伝うのに娘の晴海だけを使っていた。


そんなある日、1人の男がスナックに入ってきた。


ママ「いやっしゃい。」


ママは初めての客とわかるとすぐに晴海を付けた。晴海はカウンターに座った男の前に行って、


晴海「いやっしゃい。あれ?」

男「あれ?」

晴海「順くん・・・?」

男「?」

晴海「どうしたのよ?もしかして高校生でしょ。」

男「じゃ、内緒で。」

晴海「わかった。で、何を飲むの?」

男「ブランデー。」

晴海「げ・・・」


晴海は男が誰であれお客さんなのでボトルを出してきた。

そして男はタバコを吸い始めた。


晴海「ちょ、ちょっとお・・・」

男「だから内緒で・・・」


2人の出会いはこんな感じだった。

男は高脇順次。父は高脇病院の医者であった。

そして高校ではテニス部。かなりのスポーツ万能タイプで、地区大会のシングルで3位になったことがあり、校内では有名だった。


お店が終わる頃、順次が帰ろうとした。


ママ「晴海店の外まで送ってあげてね。」


晴海はママの言うとおり、順次を店の外まで送っていった。


順次「あ、ありがとう。」

晴海「いいえ。」


と、会話した矢先に順次が晴海を抱きしめて、


順次「好きだよ。」

晴海「そ、そうやって何人騙してきたの?」

順次「おいおい、オレは本気だ。」

晴海「へえー・・・」


こうして晴海はきっと彼はもう店には来ないだろうと考えてたのだが、毎週通うようになったのである。


そして晴海と彼との交際も始まったのだった。



では旅館での話しに戻ろう。ベンチに座った節子と横たわるりょう。

そこに晴海がやってきて節子との会話が始まった。


節子「で、どうして綾香がいじめているってわかったの?」

晴海「うん。」


晴海がすぐ隣のベンチに座った。


晴海「偶然なんだけど、ここの旅館で高校の同級生に会ったのよ。

男なんだけど。でさ、その彼が綾香と組んでりょうをいじめている事を話してくれたの。

詳しいことはまたいつか話すね。」

節子「そうだったの・・・」



PART5 ☆りょうの話。


第3部にて詳しく取り上げた。





第3部


時代はかなり遡る。


りょうと綾香は(すでにご承知だろうが)同じ高校で、高校時代に男の取り合いをしたことがある。


ここは公立の中野高校。

入学式の日からすでに注目を集める1人の男子がいた。

名前は高脇順次。彼は高脇病院の御曹司であったが、あまりにも勉強が嫌いで中学時代には成績がビリッケツというある意味ですごい奴だった。

さらにスポーツもさほど上手ではなく、これといって取り柄もない、存在感も無いはずだったが、中学3年の秋、高校受験間近となって面接を受けるためにバサバサ頭を綺麗にカットして整え、スッキリした髪型に変えてから周囲の女子の注目を浴びるようになった。


私学受験するも、あまりの成績で不合格。結局偏差値の低い公立に決まったのであった。

中野高校は中野地区では有名な定員割れ校で、この地域の公立高校の中でも偏差値最下位にあり、生徒たちの非行問題がいつも町中のニュースになっていたほどである。


入学式の終了とともに多くの親子が校門を出て行くが、門のすぐ横にあるクラブの部室裏にはたくさんの落書きボードや空のペットボトル、空き缶、ゴミの袋などがそのままで点在していた。



高校1年の春。

りょうのクラスに高脇順次がいたのが運命の始まりだった。


クラスの女子は皆何かにつけて彼の話題をするので、りょうにも毎日のようにそれが耳に入るのだった。


りょう「もう・・・うるさい・・・」


りょうは毎日そう思いながら休み時間中教室の窓の外ばかりを眺めていた。


運動クラブのテニス部に入ったりょうはクラブで隣のクラスの綾香と知り合い、徐々に2人は一緒に行動することが多くなった。そして部活の日は毎回一緒に下校していたのだが、4月下旬に綾香が体調を崩して学校を2日ばか休んだのである。


1人で下校するはずだったりょうは、校門を出るときに偶然彼に出くわした。

が、りょうは気にせず帰りかけた。


順次「りょうさん。」


彼が急にりょうを呼び止めた。

びっくりしたりょうは少々不機嫌な表情で振り返った。


順次「スカートのファスナーが開いてます。」


りょうはすかさずファスナーに手を当ててすぐにそれを閉めた。

そしてそのまま帰って行った。


りょうは途中にある公園のトイレで中途半端に閉めかけたファスナーをちゃんと直して、


りょう「ふう・・・」


大きくため息をついた。

そしてこれまで意識していなかった彼が、この日から頭の中で行ったり来たりするようになったのである。


りょうは教室では多くの女子が彼にかまったりするので、まったくそれを無視してはいた。

が、心の中では毎日葛藤が起こるようになっていった。


5月になったGW。

りょうはたまたま母親に頼まれて1人スーパー「ゲキヤス」に買い物に来ていた。


そこで彼に出会ったのであった。


りょう「高脇くん・・・」

順次「やあ。」

りょう「こんにちは。」


彼は1人かと思ったら男友達が4、5人いた。りょうは構わず買い物をすることにした。


やがて買い物が終わってスーパーから出ようとした時、再び彼に出会った。


順次「やあ。」

りょう「よ、よく会うわね・・・」


りょうはあまり嬉しくない口調で話した。


順次「そうだね。」


りょうは気にせずその場から離れようと店の外へ出ようとしたときだった。

スーパーの買い物袋が柔かったのか、急に破れてしまい、買った商品がことごとくそこら一面に散らかってしまった。

それを見た彼はすぐに散らかった商品を集めて、


順次「はい、もう大丈夫です。」

りょう「あ、ありがとう・・・」


呆然となって立ち尽くしていたりょうがお礼を言った。

この時ばかりはりょうはとても救われた気持ちになった。

周りの人々の注目の的、さながら映画のワンシーンみたいな光景だった。

何人かの人はこの2人がカップルだと思い込んでいた。


「すごいわねぇ。」

「うちのダンナには無理だわ。」


と、おばさんたちは色々言いたいことを話していた。


彼はすぐに別のしっかりしたペーパーバックを持ってきて、


順次「これに入れるといいよ。」


りょうにそのバックを渡すと、さっさとその場から消えたのである。



帰宅したりょうは母親に事情が言えず、とにかく自分でペーパーバックを買った事にしておいたのであった。


その日からりょうは何かとペーパーバックを使うようになった。


GW明けの授業で、りょうは彼の座っている席に行き、


りょう「高脇くん、この前はありがとう。あの袋のお金・・・」

順次「いらないよ、そんなに高い物じゃないから。」


彼はそう言ったが、りょうはしっかりスーパーでペーパーバックの値段を調べていた。

そしてそのお金を机の前に置いたのであった。彼は納得したのか、そのお金をポケットに入れた。


順次「はい、確かに。」


りょうは彼の席から離れて行ったのだが、この2人の会話を周りが注目しないはずはなかった。



この日からクラスの女子たちには、この2人の噂が毎日流れていった。


次の日。

ここはテニス部の部室。

りょうと綾香がいつも通りに着替えて校門に向かった。


綾香「ねえ、りょう。高脇君と何かあった?」

りょう「何かって?」

綾香「うちのクラスの女子がいろんな噂をしているの。」

りょう「何でもないよ。」

綾香「そうう・・・」

りょう「別にほっておけばいいよ。」

綾香「気になるなぁ・・・」

りょう「何もないって。」


そして運命の日がやってきたのである。

5月11日。

順次はテニス部に入った。彼はそれほどスポーツに興味を示す様子はなかったのだが・・・


こうしていろんな憶測の噂が益々広まって、翌日テニス部の部室。。


綾香「りょう・・・」

りょう「もう・・・また高脇くんの事・・・」

綾香「だって過激な話ばかり入ってくるんだもん。妊娠してるとか・・・」

りょう「あ、あのねぇ・・・」


りょうはまったく聞きたくないような表情を見せながら強い口調で言った。

綾香はそれでも気になって仕方がなかった。


りょう「私ね、高脇くんの手も握ったことないのよ。」

綾香「ひゃー、それはそれで凄いことだ。」

りょう「何喜んでるのよ。私の身にもなってよ。」

綾香「ごめんね。うちのクラスの女子が聞いてきてって強引に言うからさ。」

りょう「適当に回答して。」

綾香「そ、そうよねぇ・・・」


気になっている綾香はりょうが羨ましかった。


「私と何が違うの?私の方が・・・」


いつもそう思う綾香だった。



ところでテニスをやったことがない彼は、急に興味を持ち始めたのか、それとも目覚めたのか・・・とんでもないことになっていった。

初日は普通の練習だったが、日を重ねるごとにその隠れた才能が突然現れた。


入部してわずか1週間。練習試合があった。

彼は相手の高校の副キャプテンと互角に戦っていた。当然周りの男子はびっくりして、この新入生は試合の2日後副キャプテンなったのであった。


そして部活の途中で、りょうと彼がすれ違う場面があった。


りょう「高脇くん、すごいね。」

順次「ん?」

りょう「この間の試合。」

順次「あ、あれ。まぐれだよ。」


カッコつけちゃった彼がまたキュートなのだ。


りょう「あ、あそう・・・」


こうしてりょうはだんだん彼の事を想うようになった。



2日後。綾香が休んだことがチャンスだった。

部活の帰りに偶然彼と一緒になったりょうは彼にアタック。


りょう「高脇くん。」

順次「ん?」

りょう「一緒にカラオケに行かない?」

順次「ああいいよ。」


ーーーーー> 「ラッキーーーーー!!!!!」


こんな感じでりょうのハートがドキドキしてしまった。



こうしてりょうと彼との交際がスタートしたのであった。


その後2人は同棲するようになる。

ところが彼、かなりの浮気性で、りょうと付き合って半年も経たないのに別の女性と付き合うようになる。


りょう「ねえ、私とじゃ駄目なの?」

順次「そんなことないさ。」

りょう「じゃあ、彼女と付き合うのはやめてよ。」

順次「わかった。」


あっさり彼が返事したとおり、しばらく二股はなかったが、やがてまた別の女性を好きになった。

それが綾香であった。

彼女はクラスが違っていたが、クラブはりょうと同じだったので、彼と接する機会はあった。


しかし綾香と彼との交際は、6月後半になるまでりょうは気づかなかった。

あまりにも近くだったこと。そして綾香は親友だったことが原因だった。



ある日の日曜日。


りょうと綾香が2人でファミレスに入った時だった。


りょう「どうしたの急に?」

綾香「うん・・・」

りょう「何だか顔色が悪いわよ。大丈夫?」

綾香「心配してくれてありがとう。でも・・・」

りょう「相談にのるからさ。」

綾香「・・・・・」


綾香は言葉に困ってしまった。とてもじゃないが彼の子供を産むとは言えなかったのである。


「どうしよう。やっぱりこのまま黙っていた方がいいのかな。」


綾香はそんな複雑な気持ちが毎日続いた。



翌日。綾香は彼に子供のことを話した。


順次「ほんとにオレの子供か?」

綾香「な、なによその言い方。なんで私が疑われなくちゃいけないのよ。」

順次「産んでみないと誰の子かわかんないからな。」

綾香「もういい、どうなっても知らないから。」


彼はそれでもまったく動じることもなく、自然体で言った。


順次「勝手にしろ。」



そして夏休みに綾香はこっそり彼の子供を産んだ。


どうしよう、この赤ちゃん。育てるなんて・・・自信ない・・・


綾香はどうしようもなかった。

産婦人科の先生が事情を把握し、先生の知り合いにあずかってもらうことになった。


彼のほうはりょうばかりと付き合っていた。

綾香にはそれがたまらなく鬱陶しかった。

最初は彼を恨んでいたが、それが今度はりょうに目が向いた。


りょうを恨む日々が続く。


学校では綾香はこっそりりょうにいやがらせをし始めた。

下駄箱の中に蛙の死体。


だが、りょうは強かった。


りょう「ふん。これぐらいで・・・」


さっさと蛙をつまんでトイレに捨てていた。

それを影で見ていた綾香は、


綾香「す、すごい・・・半端じゃないわ・・・」


しかしまた次の手を考えていた。

りょうの机の中を赤絵の具でビショビショにした。


りょう「わ!」


りょうが机の中に手を入れたので、出した瞬間驚いてしまった。


りょう「うーん、まあ赤ならいいか。青とかだったらいやだけどね。」


机の中にあった教科書も全部真っ赤だった。


りょう「字が読めればいいや。」


りょうはとても強かった。

この後も綾香の嫌がらせは続いたのだが、1度たりとも落ち込んだことはなかったのである。


綾香「もううううう・・・どうなってるの。」


苛立つ綾香だった。

いろいろ考えた末に、ターゲットを彼に向けることにした。


綾香が順次のまわりをウロウロしながら、


綾香「ねえ、りょうとうまくいってる?」

順次「当たり前じゃないか。」

綾香「へえー、そうなんだぁ・・・」


綾香のツッケンドンな言い方は彼は嫌いだった。

綾香はしっかりと彼の弱点を知っていたからである。


順次「やめてくれないかな、そういうの。」

綾香「どうよ、何が悪いのかな?私は何も悪いことはしていませんよ。私の心を無茶苦茶にしたあなたの方が悪いんじゃないの。」

順次「知らんなぁそんなこと。」

綾香「そんなこと・・・」


綾香は興奮して、


綾香「呪ってやるわ。」

順次「勝手にしろ。」


彼はさっさと帰ってしまった。



この日から、綾香はやたら彼に近づいた。

何があっても彼の前をわざわざ通り、存在をアピールしていた。


順次「うざいぞ、綾香。」

綾香「名前を覚えてくれていてありがとう。」

順次「早く消えろ!」

綾香「それはこっちの台詞。」


こんな感じの日々が続いた。



そしてついに彼に変化がでてきたのだ。

彼は夢で綾香を見ることが増えた。


順次「わ!」


急にベッドから起きて、


順次「なんだ夢か・・・」


夢と現実が交錯し始めた。

綾香の悪戯がしょっちゅう日常茶飯事のようになっていく。


順次「くそー、また夢か・・・」


そしていよいよ綾香に殺される夢を見てしまった。



こうした毎日が、ついには彼をノイローゼにしていった。

そしてそんな彼の変化にりょうも気づいて、


りょう「どうしたの?」


りょうが心配そうに話した。


順次「何でもない。」


順次はまったく気にしていない素振りをした。


りょう「顔色悪いじゃん。」

順次「気にすんな。」


りょうは彼のことが気になって仕方がなかった。


ある日、彼と一緒に過ごした夜のこと。


順次「ううう・・・あやか・・・か。」

りょう「はっ・・・」


りょうは彼のうめき声に目が覚めてしまった。


りょう「い、今、綾香って・・・」

順次「ううう・・・、あや・・・か」


順次の表情は真っ青だった。


りょう「確かに綾香って言ってる。」


りょうは不思議に思った。


りょう「どうしてなんだろう・・。これは調べてみなきゃ・・・」


こうしてりょうは知り合いの探偵に頼んで調べてもらうことにしたのであった。



数日後、探偵とりょうが喫茶「309」で会った。


探偵「大変です。彼に子供がいて・・・」


りょうはびっくりしながら、


りょう「もしかして綾香の?」

探偵「はいそうです。」

りょう「そうだったのか・・・」


ため息をつくりょう。


探偵「それで彼に嫌がらせをしているようです。」

りょう「付き合わないからか、それとも子供の面倒見ないからかよねきっと。」

探偵「あなたにも嫌がらせをしていたようです。」

りょう「ええ、最初そうだったわ。やっぱり綾香だったのね。」


探偵はコーヒーを飲んでいた。

りょうはレモンティーのカップをスプーンで数回かき混ぜながら、


りょう「わかったわ。ありがとう。こうなったら何とか彼と綾香を引き離す方法を考えないと・・・」



数日後、ここは綾香の子供を預かった老夫婦の家。


ばあ「はーい、ごはんでちゅよー・・・」


おばあさんが赤ちゃんにミルクを飲ませていた。

おじいさんは庭で植木の手入れをしていた。


そしてここにりょうがやって来た。


りょう「ここか。」


探偵に調べてもらったメモと地図ですぐに子供の居場所を見つけることができたのである。

しばらく中の様子を木陰越しに観察していた。


そして考え込んだ。


りょう「こうなったら、彼をいじめた日に、子供に悪戯してやる。」


こうして綾香が彼に嫌がらせをする日に限って、りょうは赤ちゃんのいる老夫婦の家に飛んでもないものを送り届けるのであった。


じい「ん? 何か届いている。」


おじいさんが玄関に置かれていた小包を見て、


じい「赤ちゃん用・・・か」


おじいさんは小包の横に『赤ちゃん用』と印刷されていたのを見たのだ。

そして家の中に入っておばあさんに渡した。


ばあ「ん。見てみるわ。」


おばあさんがやや考え込みながら小包を開けると、中にはたくさんのカエルが・・・


ばあ「ぎゃー!!」


その悲鳴を聞いたおじいさんがすぐにやって来て、泡を吹きそうになってひっくり返っているおばあさんを見て、そしてカエルを見て、


じい「な、なんてこったい。」



こうして半年が過ぎた。

冬が近くなった頃、綾香が老夫婦宅を訪問した。


綾香「こんにちは。」

ばあ「ああ、お母さん。」


おばあさんは喜んで綾香をへ入れた。


綾香「いつもありがとうございます。」

ばあ「いいのよぉ、私たち身よりもないから、面倒見るのが毎日楽しみなのよぉ。」


綾香は再度、


綾香「本当にありがとうございます。」


深くお辞儀をしたのである。


部屋の中では数枚の写真がバラバラにちらかっていた。


ばあ「ああ、ごめんよ。今写真の整理をしていたんだよ。」


綾香はその写真の1枚を見て、


綾香「あれ?」

ばあ「どうしたんだい?」

綾香「これって東中野商店街の・・・」

ばあ「ああ、そうだよ。商店街で食堂をやっていたんだよ。」

綾香「そうだったんですか。」


急に赤ちゃんが泣き出して、


ばあ「あやや、ミルクだよ。」


慌てておばあさんがミルクを準備した。

そして、赤ちゃんにミルクを飲ませながら、


ばあ「本当にいいんだよぉ、それより勉強がんばってね。」

綾香「ありがとうございます。」


綾香はしばらく赤ん坊を眺めていたが、


綾香「またお正月に来ますので。」

ばあ「はい、いつでも大丈夫だからね。」


こうして綾香は再度正月に訪問することにしたのであった。



翌年の元旦。

綾香は再び老夫婦宅を訪れた。

門を開けて中へ入ろうとしたところ、玄関に小包が届けられていた。


綾香「おや?」


その小包は『赤ちゃん用おむつ』と箱の横にシールが貼られていた。

綾香はきっとおばあさんが買ってくれたのだと思い、その小包を小脇に抱えながら、


綾香「こんにちは。」


しばらくしておばあさんが出てきた。


ばあ「おや、お母さん。」


実は、老夫婦に預けられた時には綾香の名前は伏せてあったのだった。

おばあさんは小包を抱えた綾香を中へ入れた。


ばあ「今日は何か持ってきたのかい?」

綾香「いえ、玄関にこの箱が置いてあったから。」

ばあ「へえー?」


おばあさんは変に思ってその小包をじっと観察した。


ばあ「こ、これは違うよ。」

綾香「え?どうかしたのですか?」

ばあ「中は見なくていいから、外へ出しておいてね。」


綾香はおばあさんが話す意味がわからなかった。

不思議に思ったがしかし、おばあさんの言うとおり玄関の横の物置の前においた。

そして、


綾香「ん・・・?」


綾香は気になるのかしばらくその小包を眺めていた。

が、やっぱり我慢し切れなかったのか、中身を見ることにした。


綾香「げー!!」


中にはネズミの死体が2匹入っていた。

綾香の声を聞いたおばあさんがやって来て、


ばあ「だから外へ出しておいてって言ったんだよ。」

綾香「おばあさん、もしかして何回も小包が届いてるの?」

ばあ「あ、ああ、実はそうなんだよ。あまり話したくはなかったけどねぇ。」

綾香「そ、そうだったの・・・」


綾香は少し落ち込んでしまった。おばあさんはそんな彼女を気にして、


ばあ「気にしないでいいよ。」

綾香「でもあんまりだわ。」


綾香はこの時はまだりょうの悪戯とは考えていなかった。



高校2年になった綾香は、久しぶりにまた老夫婦宅を訪問した。

玄関横の物置にはまた3つの小包が置かれていた。

それを見た綾香は、


綾香「おかしいな?」


あまりに変だったので、綾香は高校近くにある探偵事務所へ行き、調査の依頼をしたのであった。

だがこの担当した探偵は、実はりょうの知り合いだった。

探偵はすぐにりょうに連絡した。


りょう「いいわ、適当にウソを伝えておいてね。」


こうして探偵はウソの情報を綾香に報告したのであった。


綾香「そうだったのか・・・」



こうしてまた時が流れる。

そして決定的な日が訪れたのである。


ある日東中野を散歩していた綾香は、りょうと探偵の2人が喫茶店から出てくるのを目撃した。


綾香「り、りょう・・・。確かにりょうだわ。そしてあの探偵・・・」


りょうと探偵は仲良く楽しそうに腕を組みながら歩いていた。

綾香はその様子をまざまざと観察していた。


綾香「もしかしてあの2人・・・」


気になった綾香はりょうの行動を調べることにした。


まずは彼が1人になった時を狙って、やたら噛み付いた。


綾香「どう?元気?」


順次「な、何だよ急に現れて・・・」

綾香「急に現れたらまずいの?」

順次「し、知らん。」

綾香「あれ~、首に痣があるよー。」

順次「な、何・・・」

彼は慌てて首を触って、確かめるため近くの鏡のところに行った。

順次「な、何だよ、何もないじゃないか。」

男が振り返った時には綾香はいなかった。


こうして数週間綾香はやたら彼に噛み付き、いろんな作戦で彼を苦しめた。



6月下旬。ここは喫茶「309」。

綾香がモーニングをしていた。


綾香「おかしいな。最近何も起こらない。」


綾香は彼への憎しみがさらに増し、新たな作戦を考え込んでいた。


ある日の夜。

りょうが盲腸の手術をすることを知った綾香は、チャンスとばかり彼の住む家に行った。


順次「やあ。」

綾香「どうしたの?」

順次「いや、別に・・・」


彼は綾香の格好がやたら大人っぽいのを見て、部屋の中へ入れた。


綾香「今日は1人なの?」

順次「あ、ああ・・・」


綾香は彼の膝を軽く撫でた。ゆっくりとゆっくりと・・・

すると急に彼は綾香を抱きしめた。

綾香はニヤっと笑った。



こうして2、3日綾香は彼の家に通ったのであった。


綾香「ウフフ・・・これで大丈夫だわ。」



2ヵ月後、綾香は病院に行って妊娠した事を確認した。

2人目の子供が産まれる。その喜びは最高だった。



一方彼の方は2人の女が頭の中で右往左往して落ち着かない日々が続いた。

そして学校に行くことすらいやになってしまい、休む日が増えてきた。



そんな頃、ふと通りかかったあるスナックになんとなく飛び込んだのであった。


1度目の様子はすでにご存知なので、2度目から続けます。


ママ「いらっしゃいませ。」


店の中は意外と明るかった。彼は隅にある小さなテーブルを選んだ。


ママ「2回目ですね。」


ママは落ち着いた様子でグラスとおしぼりを持ってきた。


順次「ビ、ビールを下さい。」


ママは彼がまだ未成年かもしれないと思ったのだが、なにか事情があるんだと思い、


ママ「はい。」


すぐに用意して持ってきた。

店が開いてまだ時間が早かったのか客は他にはいなかった。


少しして店の扉が開いて、


晴海「ただいま。」

ママ「ああ、今日はお手伝いの日だったわね。」

晴海「うん。」


晴海はこの店のママの娘だった。晴海はさっそく彼のテーブルに着いた。


晴海「いらっしゃい。」

順次「こんちは。」

晴海「あれ?あんまり飲まないの?」

順次「ええ、まあ・・・」


彼はじっと晴海の様子を見ていた。


晴海「何かお話しましょ。」

順次「え、ん・・・」

晴海「はい、乾杯!」


晴海もビールを入れて、乾杯したのだった。


彼はようやく慣れてきたのか、


順次「また来てもいいですか?」


ママにそう言うと、トイレに向かった。


ママ「いいですよ。」


しばらくして彼がトイレから出てきて、


順次「ではまた来ます。」


そう言うと、店から出て行った。


ママ「晴海送ってあげて。」

晴海「はい。」


晴海は彼を送りだした。


順次「え、いいんですか?」


2人は階段をゆっくり降りながら、


晴海「どこかで見たことがあると思ったら、もしかして順君。」

順次「げ、何で知ってるんですか?」

晴海「私、同じ高校だから。」

順次「え、高校?」

晴海「そうだよ。」


順次「クラスは?」

晴海「私は2クラ。」

順次「そうか、知らなかった。」

晴海「順君は1クラで有名だからね。」

順次「そ、そうかな・・・」


そして通りまで出て2人は別れた。



こうして彼はしばらくこのスナックに通う日々が続いた。

当然晴海と仲良くなって、


晴海「いらっしゃいませ。」

順次「やあ。」

晴海「今日は何を飲む?」


晴海は少しずつお酒を勧めるようになった。


順次「チューハイで。」


彼も少しずつお酒に慣れてきた。


やがて、いつものこと晴海が通りまで送る。


晴海「今日はこのまま別れるのいやだな。」


そのささやきが彼にしっかりと聞こえたのか、


順次「え、じゃオレんちに来る?」

晴海「いやーん、別の所がいい。」


晴海が甘えた声で言った。

彼は晴海の肩を寄せて、


順次「わかった。」


こうして2人はホテル街へ向かって行った。



彼と晴海の交際は意外と短かった。

それはりょうが病院から帰ってきてようやく元気に復帰したからである。

ただ、時々りょうと彼は喧嘩することもあり、そんな時は彼はスナックに行くのであった。


ママ「あらーひさしぶりね。」


ママは携帯で晴海にメールをした。

数分して晴海が店にやって来た。

そして隅のテーブルに2人が座ることになった。


晴海「久しぶりだね。」

順次「そうだね。」

晴海「あー、元気ない・・・」


晴海はちょっとすねたような表情で話した。


順次「まあね。」

晴海「明日は日曜日。今日は一緒にいたい・・・」


晴海が彼の耳元でささやいた。

この日は店にいる時間は短かった。

2人は店を出て行った。



ここはホテルの1室。


晴海「どうしたの?」

順次「ちょっと喧嘩して・・・」

晴海「何だあそんなことかあ・・・」


晴海はニコニコしながら言った。



翌日。

彼はまだベッドで眠っていた。

晴海はむくっと起き上がり、ソファーに座って、バッグからタバコを取り出した。


そしてシャワーをかかっていた。その水の音が聞こえたのか、彼も目が覚めて、ソファーに座る。


順次「あれ?タバコ・・・」


彼は晴海がタバコを吸っていることを知らなかった。


少しして晴海が出てきた。


晴海「あ、おはよう。」

順次「晴海、タバコ吸うのか?」

晴海「ん、最近ね。」

順次「何かあったのか?」


晴海「ちょっと、寂しいことがあったの。」

順次「そうか・・・」


晴海は彼が好きだったのだが、彼女がいることを知ってショックを受けていたのであった。

しかし、勿論彼の前では言えなかった。


晴海「今日どっかに行きたい。」

順次「ん・・・、うん。行こう。」


こうして最初で最後のデートが始まったのだった。



翌日以降彼はスナックに行くこともなくなった。

短い交際期間だった。



さて綾香は、相変わらず彼に迫っていた。


綾香「えへへ・・・あはは」

順次「こら、前をウロチョロするなよ。」

綾香「あれー、私何も悪いことはしてないよーだ。」

順次「ええい、ウザイぞ!」

綾香「もう忘れたのかなぁー。一緒に夢見たでしょ。」


順次「な、何のことだ?」

綾香「あれーとぼけちゃって。」

順次「オレは知らん。」

綾香「いいんですよーだ、私がしっかり育てるからね。」


順次「育てる?」

綾香「2人もいるのよー。」

順次「2人?」


綾香は赤ちゃんの写真を2枚彼に見せた。彼はそれを見て、


順次「何だよいったい?」

綾香「あら、自分の子供じゃん。」

順次「・・・」

綾香「知らないとは言わせないわ。」


彼はちょっと焦りだした。


順次「ど、どうして産む前に言わなかったんだよ。」

綾香「言ったらおろせって言うでしょ。」

順次「当たり前じゃないか。」

綾香「ふん。女は怖いのよ。これりょうに見せようっと。」

順次「あ、それは止めてくれ。お願いだ。」

綾香「あれー?急にどうしたのかなー?」


こうして彼はしつこく迫る綾香の言いなりになっていったのであった。



ところで老夫婦の家では綾香が産んだ2人の子供を楽しそうに育てていた。

そしてりょうの悪戯の小包は物置に山と積まれていたのであった。



やがて高校3年も終わりに近づき、綾香が老夫婦の玄関で小包の山をじっと眺めながら、


綾香「こうなったら、もっと思い知らせてやる。」


そう言って、クラブの女子会を4人で行う計画をしたのであった。

節子だけは学年が上なので、実際4人が一緒に会うのは2年以上前以来のことになるのである。



その後月日が流れその女子会の日取りは結局卒業後になってしまったのであった。







第4部 キラキラヒカル関連情報


晴海は卒業後、そのまま母親と一緒に店で働くことになった。

そして彼女が20歳を超えると、店を任される日が増え、やがては母親と入れ替わって店のママになったのである。


節子が23歳のとき、彼女は晴海の店に何度も通っていた。

そして時には晴海の店を手伝うこともあった。そしてこの頃彦左衛門と出会うのである。




<< 音楽 >>

主題歌 イッツ・オンリーラヴ(ビートルズ)



小説にもいろいろな書き方があると思いますが、あえてこのような構造(1~3部)にしたのも、これからの推理小説のタイプのひとつになるかと考えました。


なお、登場するメインキャストはすべて「キラキラヒカル」の人物と同じです。こちらも読んでいただくと、きっと面白さが増すと思っています。


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