まずこの国について
この回は主人公未登場です。
―数年前までマベロは世界で最も強かった。
先代皇帝は常に武力で他国を制圧することを考え、実行してきた。
国の予算の半分を軍事費に注ぎ込み、何度も軍事改革をした。
産業も常に発展し、ますます軍資金は増える一方であった。
先代皇帝には一人の娘がいた。
名は、ルーカ・ナシア・アリステフという。
頭脳明晰、容姿端麗というまさに完璧という言葉を擬人化したかのようだった。
その事は他国にも広まった。
他国の権力者達は、マベロの姫に求婚をしたそうだ。
目的はマベロと同盟を組むことと、姫の美貌を我が物にするため。
先代皇帝は自分の愛娘に求婚してきた者にこう言ったという。
「我が国に勝ったら認めてやろう!どうせ無理だがな。アッハッハッハ!」
求婚してきた者達のほとんどが諦めたらしい。
マベロには敵わないから…。
そう宣言してからおよそ一年後、先代皇帝は不治の病を患った。
日に日に体は弱っていき、あれだけ高笑いをしていたはずが今はもう立って歩く事さえ困難になった。
それから半年後、喋れなくなった。
先代皇帝は、命の灯火が消えそうなのを察知し、遺言書があるという事を側近に告げた。
声も出せなかったため口を動かし、それを読心術で側近は理解したらしい。
―病を患って数日後に書いたと遺言書には載っていた。
「私は今、字を書くのも困難なゆえ、余計な文は書かない事にする。私は近いうちにこの世を去るだろう。だからこれは最後の命令だ。
軍事力を上げるのは勿論、優秀な人材を作る教育にも同等の力を入れよ。
最後に、我が娘を守ってくれ。」
遺言書が見つかった後、先代皇帝は息を引き取ったという。
その後すぐに精鋭部隊と育成学校ができた。
先代皇帝の死は、国民に大きな影響を与えた。
国民はとても慕っており、戦争ばっかだがやることはきちんとやってくれると評判はとても良かった。
産業を経済的にも精神的にも支えてくれた彼が死んだ事は、産業衰退に大きく関わった。
産業が衰退し始めると、国の収入も減っていき軍事力増加に使う費用も減っていった。
それぐらい先代皇帝は国に貢献していた。
他国はこの事をきっかけに力をつけていった。
一番の邪魔者が死に、これでようやく姫が手に入ると。
そして何度も姫を賭けて戦争が始まった。
マベロは常に勝っていたが、軍事力も衰退していき、以前よりも差が縮まっていった。