表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祖母の昔話  作者: 鳥肉
5/11

風呂上がり幽霊

祖母の家の近くに

「古賀よしたろう」

という人が住んでいました。


みんなは「古賀のおいさん」と、呼んでいたそうです。


歳は五十代、優しい人でした。


さて、祖母の楽しみの一つは、古賀のおいさんが風呂に入る事です。


と、言っても一緒に入る訳ではありません。


祖母は、おいさんが風呂に入る事を聞くとはるしゃんに尋ねます。


「ねえねえ、母ちゃん。おいさんに見せてもらってきてよかろう」


はるしゃんが答えます。「あんた、おいさんがいいよて言ったとね。……そうね、ならよかけどあんまり騒がんとよ。行ってきない。すぐ戻らなやきね」


祖母は友達と一緒においさんの家に行きます。


「おいちゃんどげぇ」


「おっ、今あがるぞ」


祖母達が縁側で待っていると、風呂上がりのおいさんがふんどしいっちょうで来ます。


そして縁側で祖母達に背中を向け、あぐらをかいて座ります。


「そ~ら、見れ」


おいさんの背中一面に、見事な彫り物が。


垂れ下がる柳に火の玉が飛び、この世の全てを怨むような表情をした女の幽霊が、たたずんでいます。


さらに祖母が風呂上がりに見たがる理由が一つあります。


風呂からあがってすぐのおいさんの彫り物、


その火の玉と幽霊の顔が薄赤くに染まるのです。


これが祖母が楽しみにしている事でした。


おそらく火の玉と幽霊の顔には墨が入っていないのでしょう。


お風呂に入り温もる事で血液の循環が良くなり、墨の入っていない部分の肌が薄赤くなるのだと思います。


若い頃はもっと真っ赤に染まっていたそうです。


彫り物を肌にいれる……


昔ですから現代のように機械彫りではなく手彫りでしょう。


痛みもかなりのものだったろうと想像できます。


それに耐えてまで彫り物をいれた古賀のおいさん。


そうまでして、なぜ入れたのか。


決意。


決別。


または他の何か……


おいさんが彫り物にこめた想い。私にわかるはずもなく。


知っていたのはおいさんと、背中の幽霊だけなのかもしれません…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ