暴れ馬止め
当時の移動手段はほとんど歩き。特別な時だけ馬の曳く車に乗ったそうです。
荷物の多い時は馬の曳く荷車に載せる。
遠くまでの移動は石炭で走る汽車ですね。
大きな馬が曳く大きな荷車。この馬が何かの理由で時々暴走したそうです。
主な理由は大きな音に驚くのだそうで、特に秋になり田んぼに稲が育ち米が実ると、カラスや雀が食べにきます。
この鳥をおどかし追い払うのに使ったのが大きな音をだす「からでっぽう」(空鉄砲でしょうか)で、ものすごい音がします。
この音がすると驚きはしりだします。乗り手も必死にとめますがまったくとまりません。土手の道をどこまでも走って行きます。
広い道を走ってくる暴れ馬。当時の道ですから舗装などはされてなく、穴だらけなので遠くからでもわかるものすごい音が響き渡ります。
この音がすると、
「暴れ馬だ!!」
と皆、道から外れ土手の下ににげます。
そして皆、口々に叫びます。
「岩見さん呼んでこい!」
「もう来よるぜ、お―来た来た」
この岩見さんという人が馬を止める名人だったそうで
とても体格のいい、顔中ヒゲだらけのおっさんで馬が走ってくる音を聞くと自分の家から飛び出します。
そのまま違う道を馬と並んで走り、石屋の角の道からでてきます。
そしてものすごい勢いで走ってくる暴れ馬の前に
両手を広げて立ち塞がります。
そうすると不思議なことに、暴れ馬がピタッと止まったそうです。
これを馬が走ってくるたび繰り返し、失敗はただの一度もなかったそうで
広げた手に馬が驚くのか、また他に技術があるのかは判りませんが、今では見る事のない光景です。
・・・なんだか、カッコイイですね。






