初めに
時代は大正の終わりから昭和のはじめの頃
私(筆者)の祖母が、大正11年生まれですから十四歳くらいのことです。
まだ石炭が主な燃料でしたから、全国で石炭採掘が全盛期でした。
祖母の生まれ育ったのは九州の福岡県。大きな炭坑がいくつもある全国でも栄えた都市です。
祖母の母(筆者の曾祖母)の名前はハルエ。
近所では「櫛巻きのハルしゃん」と呼ばれ、知らない者のない有名人でした。
いつも浴衣にタスキ掛け、前掛け下げて、えり化粧、髪は櫛巻き。
櫛巻きとは髪のまとめ方の一つで後ろに髪をとかし、後頭部に櫛(時代劇で見るようなやつ)を平行にさし、そこに髪を8の字に巻いていき、最後は端を櫛の歯に挟んでとめる。
いつもその髪型だったそうです。
元は呉服屋の娘で気が強く、真面目で働き者。
炭坑夫相手にうどん屋と煙草屋両方していました。
商売上手でかなり儲かっていたらしいです。
祖母は学校に通いつつ店の手伝い、弟、妹の子守りです。
小さい頃から芸事が好きで芝居を見にいったり、自分で着物をぬったりしていました。
子供の頃は結構裕福なお嬢様で、蝶よ花よと育てられたとは本人の談。
そんな二人の周りで起きた様々なことを紹介していきます。