26.絶望の淵から
目を開けると目の前には土の地面……
アレが夢では無かったことを思い知らされる……
『なんで…………』
つい昨日までは、世界は色鮮やかな輝きに満ちてたのに……
優しい声音で溢れてたのに……
視界が……
世界が……灰色に見えるのは……空が曇っているせい?
「――ヒャーッ」
色だけではなく、声も……
『リル……』
リルの得意そうに笑う顔が……すぐそこにあったのに……
リルの幸せそうな寝顔が傍にあったのに……
『どうして……』
あんなに優しいリルを……
『…………』
理不尽だよ、神様…………
『ごめん……リル……』『――ッ!?』
「ごめん」で楽になるのは俺だけだ。謝る気持ちで少しでも……ほんのわずかにでも楽になりそうになった自分が気持ち悪い。
リルは俺を助けてくれたのに……
俺は何もできなかった……
俺はどこか甘く見てた……この世界を……
猫に自分の魂ということで、自分が特別な何かだと勘違いしてた……
どうせ最後には何とかなるだろうって……根拠も無いのに楽観的に考えてた…………
自分が主人公だと思い上がってた……主人公なら最後は上手くいくと勘違いしてた…………
『何がチートだよ…………何が異世界だよ…………』
俺の慢心がリルを…………リルを理不尽に晒したんだ…………
「ニャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
理不尽なこの世界が許せない…………
「ウナーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
何もできない自分が許せない………………
体が動かない……動いても何もできないことを、心が認めてしまってるのだろう……
一パーセント……〇.一パーセントでいいから……救える可能性を…………
自分はどうなってもいいから、リルを助けて……助けたい…………
土の上に横倒しになってる体が動かない。
涙でぼやけた視界に映るのは、か細い手。誰も助けることができない俺の手だ。
『――?』
手を見てたからか、「自己鑑定」が発動した。
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名前:シュン
種族:ワイルドキャット
レベル:7
体力:10
魔力:9
スキル:「自動翻訳」「自己鑑定」「毒耐性(小)」
称号:「シャスティの加護」
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ああ……なんて非力で無力なのだろう。
『!?』
何か分からないけど、見逃してはいけないモノがある気がする。
――「毒耐性(小)」――
頭が混乱してて考えがまとまらない。
俺は「何時」「どうやって」このスキルを得た?
毒を取り込んでしまった時に、わずかな時間で耐性ができたはずだ。
――「シャスティの加護」――
おそらくこのスキルのおかげで。
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「シャスティの加護」――――尋常ならざる適応力を手に入れる。異世界でも生きていける。
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まだ仮説と呼ぶには粗すぎるが……可能性がわずかにでもあるなら俺はソレに賭けたい。
わずかな可能性という光が……さっきまで動かなかった俺の体を起こしてくれる。
全身に血が巡っていくのを感じる。
奴等は三人を奴隷にするって言っていた。アルフレッドによれば、奴隷にするには七日七晩の儀式が必要とのことだ。移動速度さえ何とかできれば、数日間の猶予があるはずだ。
侯爵領の場所はアルフレッドの話から、およその位置は分かっている。
現段階ではほんのわずか、微かな可能性だと思う。
だけど……何とかする。リルに降りかかる理不尽は、俺が払い除け消し飛ばすと誓った。
俺が今やるべきこと……行くべき場所は「蠱毒の洞穴」――――




