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18.親子

 さて、ドタバタしたけど、少し落ち着いてクレアの方を見る。

 

 歳は見た感じ十歳いかないくらいだろうか。森の中を彷徨っていたからか、整った顔と青い瞳には疲労の色が濃く出ている。金色の背中までありそうな長い髪もボサボサになっている。服は白い厚手のワンピースだが、高級そうな服だけに余計ボロボロになっていることが目立つ。


 どうして森の中にいるのだろうと俺が思っていると。


「クレアはここで何してるの?」


 リルがクレアに質問を投げかける。

 クレアが返答するためか口を開こうとした瞬間、リルが警戒した様子で後方に視線を向けた。


 何かが近づいて来ている。

 魔物かと警戒していたところで、木々の間から男が一人現れた。歳は三十台くらいだろうか、剣を構えてこちらを警戒している。男は服の上からでも一目で鍛えられているのが分かり、「熟練の冒険者」というのがラノベ脳な俺の率直な感想だ。

 ただ、着ている服が派手ではないのだが、山にいるにしては生地と仕立ての感じが良すぎる気がする。


「パパ!」


クレアが男に向かって声をかけた。


「クレア、大丈夫か!」


「待って、パパ! この人達は大丈夫だから!」


 クレア自身の安否に対する問いだったが、クレアは場を落ち着かせることを優先したようだ。

 話がこじれないので有り難い。


「君は?」


 リルに対する質問だ。俺はペットくらいに認識されてるのだろう。リルは一瞬だけこちらに視線を向けて、すぐに男の方へ視線を戻す。


「私はリルと言います。シュ……このワイルドキャットと一緒に私達(・・)はこの山で暮らしています」


 いつもより丁寧な感じの言葉遣いだ。『私達』を強調したように感じて嬉しくなる。


「剣を向けてすまなかった。私の名はアルフレッドという。君……達と話がしたい」


 アルフレッドが剣を鞘に収めて謝ってくる。ただ完全に警戒を解いてはいないように感じる。山賊とかいそうな世界だし当然のことだ。下手な油断は死に繋がりかねないだろう。


「分かりました。場所を移動しましょう。水や食べ物を用意します」


 リルは見るからに疲労の色が出ているニ人を見て、休息が必要だと判断したようだ。リルは俺を持ち上げ肩に乗せ、その様子を見ていたクレアが微笑ましそうに微笑した。


「クレア、歩けるか?」


「結構休んだし大丈夫よ」


 どうやら木に寄り掛かっていたのは、休憩していたところだったようだ。魔物がいるこの森では休憩も結構危ないのだが、すぐ駆けつけることができるところに父親がいたということだろうか。


「ついて来てください、途中で歩けなくなったら言ってくださいね」

 

 リルが親子に声をかける。いつもより丁寧な口調のリルが少し大人びて見えた。

 山が似合わないこの親子にはどんな事情があるのだろうか。


 俺達はいつもの住み処へと歩み始めた。


 

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