9.そこに山があるから
食後に自分のステータスチェック。
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名前:シュン
種族:ワイルドキャット
レベル:2
体力:4
魔力:4
スキル:「自動翻訳」「自己鑑定」
称号:「シャスティの加護」
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おおー! レベルが一つ上がってる!
体力と魔力も少し上がってるね。
魔物と戦ったからだろうか。
戦ったというか、追いかけて猫パンチしただけだけど……。
兎のトドメは全部リルが刺したから、トドメを刺さなくても、戦闘に参加するだけで経験値的なものが貰えるのだろうか。
それにしても、自分の成長が数字で見えるのは本当に大きいと思う。別世界の記憶だと、努力が成果に繋がるとは限らないことが多い世界だった。
受験勉強や、社会に出てからの仕事の成果。頑張ってもなかなか結果に繋がらず、やる気を無くしてしまう話はそこら中に溢れていた。
ラノベとかでよくある、この成長が数値化されるっていうのは頑張っていくのにプラスになる面が多い。ゲームでラスボスを倒した後も、やり込んじゃう人が多いのもこういうのが影響してると思う。
徐々にレベルが上がりづらくなっていくのかもしれないけど、早く強くなりたい……。
そろそろ寝ようと思ったのか、リルに寝床まで運ばれた。
寝床で向き合う形で横になる。
そう言えば今朝は尻尾をモフモフしたけど……と思って、視線をリルの二つあるあの部分に向ける。
リルは後ろに何かあると思ったのか、寝転んだまま振り返ったけど、何もないことを確認すると、こっちに向き直る。
それでも俺の視線がリルの頭の上にあるのを見て何か気づいたようだ。
「おもちゃじゃないよ……」
リルは困ったような、照れたような顔をして、右手で右耳を抑えた。
自分の尻尾が左右にパタパタと動いているのが分かる。
なぜ獣耳を触りたくなるのか?それはそこに獣耳があるからだ!と気分はアルピニスト。
『触らせてくれないかなあ、ダメかなあ……』とジッと見つめてみる。
リルは何やら葛藤しているようで、目線があっちにいったり、こっちにいったりしている。
それでもジッと見つめていると、思いが通じたのか、抑えてた手をゆっくり放し、頭のてっぺんをこっちに向けてくれた。
ちょっと緊張してるのか肩に力が入ってるのが見える。
「痛くしないでね……パパとママ以外に触らせたこと無いんだからね……」
消え入りそうな声で言われた。
なんだかとてもイケナイことをしようとしてる気分になってきた……
だが……リルは嫌がってる感じはしない、恥ずかしがってるっていうのが近い気がする。
なので、遠慮なくいかせてもらう!
手でゆっくりとリルの耳を触る。
柔らかいっ!? モフモフを手に感じてたら、クニッと曲がった。
「ニャンッ」
リルが猫になった!?
両手を使って両耳をモフモフしてみる。
「うー……」
嫌がってはいないよね?
リルの耳はモフモフしてて温かい。
癒されるなーと、手でモフモフ鼻でスリスリしてたら、急にガバッと抱きしめられた。
「ウニャッ!?」
急に抱きしめられたので変な声が出た。
リルの胸の前で強く抱きしめられてて動けない……
「きょ……今日はここまでっ……」
顔を真っ赤にしてるリルが可愛すぎる……。
『今日は』ってことは嫌がってはいないってことだよね。
とても温かい気持ちになってると、眠気がゆるりとやってきた。
「おやすみ、シュン」
「クルゥニャン」
…………ああ、そう言えば、ニャンコってあまりにも長い時間モフモフしてると、最後は猫パンチされたりするよね…………
「そこに山があるから」は元々挑戦的な意味合いが強かったようです。
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