2話 美人と同じ
ダリスは確信があるらしい。
というより、経験があるらしい。
シェリーさんと同じ。うん、字だけ見ると超良い気分になるな!
美人と一緒!
ともかく、確信を持っている人間を騙す、なんて高等話術は俺にない。
次会ったら、説明不足のシグマを殴ろう。というか、金貨の価値かなり高いみたいだ。銀貨も入れとけよ。
「あぁ、教えてくれ。ダリスさん」
名前を呼ぶ。どうせ果物の名前が言えた時点で、眼の説明は逃れられない。
<魔眼持ちか――、ますますシェリーと同じだな……>
どうやら、シェリーさんも魔眼を持っているらしい。俺の超ハイスペックな魔眼――、とは違うだろうが……。
というか、魔眼持ちってカッコイイな。やったぜ!
「よし、まず兄ちゃんの名前教えろ」
「ユートだ」
名前を教える。
<名前は覚えてる。シェリーよりはマシか>
俺は、シェーリーさんよりマシな状態らしい。
「よし、ユートとりあえず貨幣の価値を教えてやる……」
言って、ダリスが貨幣を並べだす。
<金貨、赤銀貨、銀貨、青銅貨、銅貨>
と並んだ。
「まず、一般的に一番価値の低い貨幣は、銅貨だ。10ダルの価値がある。次に青銅貨100ダルだ。次は銀貨で1000ダルといった具合で、1つ前の貨幣の10枚分金額が上がってく……。ここまでで質問あるか?」
見た目は「脳は筋肉でできてます」って感じなのに割とわかりやすい説明だった……。
商売してるんだし、当たり前か。
整理する。
◇◇銅貨10ダル。
◇青銅貨100ダル。
◇◇銀貨1000ダル。
◇赤銀貨10000ダル。
◇◇金貨100000ダル。
……
「黒金貨と白金貨はどっちが上なんだ?」
訊ねる。最初に入っていた枚数――。黒金貨15枚、、白金貨30枚、金貨45枚から、黒>白と予想はできるが一応確認。
慢心ダメ、ゼッタイ。
「金貨の次は白金貨、その次が黒金貨だ。金持ちでも黒金貨なんて、普通は見る機会すらないものだから説明しなかったんだが……」
<コイツ、黒金貨も持ってんのか……ヤバイな>
俺は、ヤバイらしい。
ともかく教えて貰い、再度整理する。
◇◇銅貨10ダル。
◇青銅貨100ダル。
◇◇銀貨1000ダル。
◇赤銀貨10000ダル。
◇◇金貨100000ダル。
◇白金貨1000000ダル。
◇黒金貨10000000ダル。
……よくわからんな、パスット換算してみる。
店にあったパスットは1つ30ダル。俺は最初に白金貨で3万3千近くパスットを買える貨幣を出し、次に出した金貨も3千3百近買うことが出来る貨幣だったと……。
金貨超高いな。数多すぎてわかんねぇけど。
日本人の金銭感覚では判断しかねるので円換算してみる。
いつだったか300円ぐらいでリンゴを1個、買った気がするので10ダル=100円とする。
金貨は銅貨の1000倍……つまり百万円だ…と……。
落ち着け――、もう一度整理だ。今度は円換算で。
◇◇銅貨、百円。
◇青銅貨、千円。
◇◇銀貨、一万円。
◇赤銀貨、十万円。
◇◇金貨、百万円。
◇白金貨、一千万円。
◇黒金貨、一億円。
あぁ、マジヤバイな俺。
つまり現在の所持金は15億7500万円か。
マジ、ヤバイな、俺。頭を抱える。
「大丈夫か?」
「いや、自分がとんでもねぇ大金を持ってることは理解した。けど、額面が高すぎて落ち着かねぇ。大丈夫じゃねぇ」
どう考えてもヤバイ、換金所探さねぇとまともに買い物すらできない。
というか、この大金全部使ったら、この町の経済大丈夫か?
俺が黒金貨持ってるのがバレた時は?この町の治安は?
15億だぞ。下手したら殺されちまう。
――落ち着け。
金の心配をしなくて済むんだ。プラスに考えよう。
こんだけ大金があれば、一生遊んで暮らせるぜ!
<黒金貨まで持ってんなら、換金作業も楽じゃねぇ。どうするか……>
どういう意味だろう。
というか、さっき黒金貨持ってるって、ダリスに言ったようなもんなんだよな俺。
ダリスに殺されたりしねぇだろうな……俺。
――落ち着け。そもそもダリスは多分、裕福。
白金貨を一目でわかった――。つまり見たことがあるんだ。一千万貨幣を。
それに、釣りを渡す為に出した貨幣と、別に金貨も出してる。
ダリスは、200万近くの大金をポンっとすぐ出せるぐらいに蓄えがある。
少なくとも、金に苦労して人を殺す必要はない。
妻と、娘がいる男だ。家庭を持った男なんだ。馬鹿な真似はしない。
大丈夫だ。ダリスは良いおっさんだ。落ち着け、俺。
だから、今の換金が楽じゃないってのは、俺が換金するときに苦労するって意味だ。
俺から金を奪って、換金すんのが楽じゃないって意味じゃない。落ち着け――。大丈夫だ。
「落ち着け、大丈夫だ。俺は金に苦労してない。突然襲い掛かったしもしない。だから、落ち着け、ユート。大丈夫だ!」
言われて自分が震えていたことと、いやな汗を大量にかいていたことに気が付く。
「だ、大丈、夫だ、お、俺は、落ち、つ、着い、てる。超、クールだ。」
「声震えまくってんぞ。……ちょっと待ってろ」
言ってダリスが立ち上がる。
ビクッ、と俺の体は反応する。俺より背が高い――。多分190はあるこの大男にビビりまくる。
殺 さ れ る。
「はぁー、シェリーの時は貨幣の価値の説明に苦労したもんだ。何回説明してもわかってくれなくてな。今でも少しぬけてる所はあるし、そこがまた良いんだが」
言ってダリスは、壁にかかっている絵を外してる。凶器でも出す気なのか――。
さらっと嫁自慢もされる。どうやらシェリーさんは天然入ってるらしい。
金庫があった。
やっぱ、そういうとこに隠し金庫があるんだな。
「ユートは逆に頭がキレるみてぇだな。自分が大金を持っている意味がわかった途端、あからさまに警戒しやがって。俺だってそんなに怯えられたら傷つくぞ」
言って金庫を開けて、中に入っていた袋を持って戻ってきた。
そして、俺が怯えてる理由も察しているようだ、ダリスが脳筋じゃないことを確信する。
ダリスがもっているのは綺麗な袋だった、ガンマに貰った袋に似てる。おかげで少し落ち着いた。
「すまん」
ダリスに謝る。
と同時にあの袋の中身を察する――。
「いや、大金を持っているって意味をすぐにわかったお前はかしこいよ。ほれ、これが俺がお前に襲い掛からない証明だ」
言いつつ、ダリスが袋を直接俺に渡そうとして――、テーブルに置いた。
多分、俺が怯えてるもんだから配慮してくれたんだと思う。
紳士か――。紳士だったな。
ダリスの持ってきた袋を、開ける。
<白金貨13枚、金貨17枚>
と出た。
「それは俺とシェリーが初めて会った時にシェリーが持ってた袋だ」
確信する。
シェリーは俺と同じ、転移者なんだと――。




