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14話 俺の狂気

「バ、バケモノ。く、来るな!来るな、来るな、来るな、お、俺にちかよるなぁぁぁぁ……」


 ジークに『何かを』された正義感()は気を失った。

 ついでに、おっさんも。


「うるさいよ、まったく。ユート、彼らはどうする気だい?あの報告書はかなり酷い。訴えればどんな罰でも与えられるよ。それにたった今、明確な『戦闘行為』を行った。殺したいなら殺しても……聞いているかいユート?」

「あ、あぁ、とりあえず、俺も報告書見てから決めるな」

「そうだね……特に最初のページは酷い」


 正直それどころではないです。

 なんなんだお前の異能の数は?☆とか★は一体何?

 あと、焔って何だよ?

 それに今は何をしたんだ?

 マジで視線だけで相手をビビらせちゃったの?

 あー集中できん。


 報告書、もとい、リズ姉さんの近くに到着。……あんたら二人は俺に何か恨みでもあんのか?

 いつまでも睨んでんなよクソ騎士。文句があるなら言えよ。

 あと、何でお前ら二人だけは騎士みたいな恰好なんだよ?

 ミルか。


<クソ、なんでリズがしゃべったんだ?俺がしゃべらせるはずだったのに。俺がリズに気に入られてフロード家の実権を握る計画が、このガキのせいで台無しだ。今回と同じことをやってももう遅い。このガキ……、殺してやりたい。セラード家に書かせた虚偽の報告書もバレた。これでセラード家の人間が罪をかぶる形になったが、どうにかしないと俺達も……>

<台無しだ。俺がフロード家のトップになるはずだった計画が……わざわざ、あのハゲジジイを使って間接的に邪魔なハーディアを殺す計画が、このガキが居たせいで……>


「あぁ、そういうことだったのか……死ねよお前ら」


 俺は、念力眼を使う。

 昨日よりいい感じに魔力が通る。

 ……殺してやる。


「は?何を言ってるんだ君は……痛っ?え?なんで?俺の腕がえ?あ、あれ?俺の腕……」

「反応が鈍いな、、もう一本いっとくか?」

「おい、どうしたん……うぁぁぁあああああああ!?俺の、俺の足があああああああ!!」

「え?お前、その足……」

「……なるべく痛いようにしてやったつもりなんだが、1人は無痛症かなにかかよ?しようがない特別だ、ただただ不快なだけだから先に殺してやる」

「俺の腕が…………あ、ぁああぁぁあああああああああ!!……嫌だ、いやだいやだぁああああああ、あ――」

「なんだ?ちゃんと痛かったのか?もっと早く教えろよ。そうすれば、まだ(・・)死なずに済んだのに」

「このクソガキ、よくも――」

「『俺がフロード家のトップになるはずだった計画を邪魔しやがって』か?目を見開いてないで答えろよ?言っておくけどお前は簡単には殺さねぇからな?……なんだ?足だけじゃ足りないのか?しょうがねぇなぁ、そんなに物足りないって顔されたら、期待には応えねぇとな?隣の奴とお揃いにしてやんよ」

「おい。待て、何を言ってるんだ!俺は何もやってない、っ!…止めろ、止めてくれ、わ、わかった、話す。ちゃんと話すだから、これ以上は」

「馬鹿なお前の『計画』のせいで死んだ人の事を考えたら、俺が止める理由がないよな?ほら、もっと……」

「ああああぁぁぁぁ!、腕、俺の腕がぁあああああ!」

「おいおい、お揃いにしてやるって言っただろ?まだもう一本、腕が残ってんぞ?……我慢強かった隣の仲間に感謝しろよ?おかげでもう一本の腕も痛くなるようにしてやるからな」

「ま、待たんか!ユート殿、そこまでじゃ!それ以上やったら、そ奴も死んでしまう!ならんぞ、死なせてはならん!」


 ……もっと痛めつけたかったんだがな。

 どうせ、こんなんじゃ死なないって。


 もう一人が死んだのは『邪眼』を一瞬だけ、使ったからだ。

 たった一瞬の発動で、人を殺せるとか半端ないな。

 昨日のはやっぱ、ベルフが凄かっただけだな。

 すっげー便利。血も出ないしな。

 これからも使おう。一瞬だけなら意識も平気みたいだ。


「で?止めたからには何か言いたいことでもあんのか爺さん?」

「……その者の身柄をこちらに渡して欲しい。ワシが情報を引き出す」

<その為にも今、死なせるわけにはいかん。誰とつながりがあるかわからん以上、ワシ一人でやるしかあるまい。しかし、まさかフロード家の兵士が今回の……>


 爺さんは、コイツを匿うつもりは無いようだな。

 誰かに身柄を渡すわけでもないようだ。

 だがな。


「断る。俺はこいつを許せねぇ。俺が、殺す」


 こいつの、こいつらのせいでっ――。


「ふむ、ユート殿、こちらには『実力行使』という手段があるのじゃぞ?出来れば平和的に解決……」

「はぁ?俺がお前らに負けるとでも思ってんのか?調子乗んなよおっさん。邪魔をするなら全員殺し……はしないが痛い思いはしてもらうぞ?むしろお前はこれから俺を手伝ってこいつの拷問に参加しろよ。このクソ野郎があんたの知りたい情報を吐いた後は俺が殺す。それが俺の妥協案だ。嫌ならこいつは連れて帰る。苦しませながら殺してやりたいからな」


 ……邪眼使った後はダメだな。

 過激な発言が目立つ――。

 あれ?なんで俺は邪眼を使ってんだ?

 もう一生、使う気はなかったはずなんだがな。

 それに、邪眼を使う前に「殺す」って決めてた気が……。


 もしかして、これは、俺の本性ってやつなのか?


「……ジーク、命令じゃ。ユート殿を拘束しろ。どうも、今の彼は怒りで我を忘れておる。殺さなくてもよい、気絶させるだけで良い。そうすれば少しは冷静になってくれるじゃろ」


 あぁ、そういえばジークが居たな。

 俺はこいつに勝てんのか?

 こいつとも後できちんと話をしねぇと。

 異能について色々聞きたい。


「お断りします」


 断るのか。良かった。

 これで、このクソ野郎を痛めつける作業に集中出来る。


「……なぜじゃ?ジーク」

「僕とあなたの関係は『変異種の欠片』の脅威を取り除くまでの協力関係だ。もう、僕はあなたの命令に従う理由がない。それにパウロさん。あなたこそ冷静になるべきだ。彼はやると言ったらやる男だ。ここで僕が手を出せば彼は必ず、ここに居る全員を痛めつけてからこの場から姿を消しますよ?むしろ『協力して拷問に参加しろ』と言われたのだから協力すべきです。あなたがその男を回収したがったのは、ユートの言った言葉を信じているからなのでしょう?そこの……フロード家の兵士が『今回の首謀者』だと、あなたにはわかった……違いますか?それに、ユートが居なければあなたはもう死んでいたんだ。もう少し敬意を払ったらどうですか?」


 ここでまた俺に対する謎の信頼が発動するのか。

 やると言ったらやる男か、正直ただの勢いでの発言だけどな。


「そう、じゃな。ユート殿が居なければ、情報を得る機会すらなかったのじゃ。……ユート殿すまなかった、ワシも拷問に参加させてくれるかの?」

「あぁ、俺も少しは落ち着いたよ。悪かったな『おっさん』とか言って」

「いや、実際おっさんじゃからのぅ。今年で74じゃ。それで、何故その二人が首謀者だと分かったのじゃ?」


 お前みたいな74歳が居てたまるか。

 え、歩くのおっそ!

 マジで74歳なの?……マジだった。

 そんでもって魔眼は「成否の魔眼」だけか。


「ブラフとハッタリと後は……この二人の反応ですかね」


 魔眼の事は言わない。


「ふむ、外れたらどうする気だったんじゃ?」

「外しませんよ。行動に移した、ということはユートはどこかで確信を得たんですよ。そうだろ?ユート」

「当然だろ、流石に無実かもしれない人間にここまでは出来ねぇよ」


 俺は、自分が殺そうとした二人を見る。

 1人は方足と片腕がグシャグシャになっている男。

 もう一人は両腕が捻じれ切れ、死んでいる男。


 うーん、やり過ぎた感あるよねこれは。

 あ、やべ、今更だけどこんな事したらセラード家にめっちゃ嫌われて――。


「それでも、こんなのは……酷いです。それに、殺さなくても……」


 似非ロリは声までロリロリでした。

 ……似非ロリだよね?魔眼でミル。

<リタ・フロード/性別:女/種族:人族/魔法適正:風/年齢:14歳/職業:当主/異能:『特殊防壁』>


 あぁ、この子がリタさんですか。

 この街の安全の為にこれからも頑張って結界張っといてくれ。

 そんでもって、14歳、俺の予想より2歳若かったな。

 うん、後は特に驚く事も無いな。

 リタって人がこんな似非ロリだとは思わなかったけど。



 そして、案の定嫌われたな。

 べ、別に見た目が幼女の娘に嫌われたって罪悪感なんてねーし?

 この娘は幼女じゃないんだから平気だし!


 ……あぁそういえば今日は一日中、幼女に会ってないな。

 瀬里ちゃんに会いてぇ。

 四歳児の、世界一可愛い幼女の、俺の妹の、瀬里ちゃんに会いてぇ。

 毎日あんな可愛い幼女を見られていた幸せを今になってやっと実感してきた。


「そう?自業自得じゃない?わかってんのリタ?こいつらのせいでこの街は、大変なことになってたかもしれないのよ?当主としての自覚あるのあんた?」

「こんなのが家にいたなんてセラード家の恥。むしろ殺すべき」


 姉さんズはそういう反応か。

 ハーディア様に嫌われなくて良かったよ。

 この人の雰囲気、春に似てるんだよね。

 妹に嫌われたみたいになるのはごめんだ。


「で、でも……」

「でもじゃないよリタ。こんなことをした人間を生かしておいたら、今夜にでも君たちは死んでいたのかもしれないんだよ?……それに、もしかしたら暗殺者を手配しているかもしれない。しばらくは、身を隠すべきじゃないかな?リタ、いつまでもそんなんじゃダメなんだよ?君はフロード家の当主なんだからしっかりしないと」

「そうよリタ。昨日、ユートがあの場に居なければ、私は死んでたのよ?それとも、この馬鹿二人の方が私より大事なの?」

「そんなことは!……ないです、けど」

「リタ、けどじゃない」


 幼女(偽)が大人三人に虐められてる!


 けど、俺が止めるのは無理だよな。原因を作ったの俺だし。

 それにこの子は認識が甘すぎんだろ。もっと叱られてろ。

 その馬鹿二人のせいで三人も死んでんだぞ。

 お前は反省しろ、似非ロリ。


 おい、ジジイ、ヨタヨタ歩いてないでさっさとこっち来いよ。

 この場を収められるのはあんたしかいないんだぞ?


 とりあえずジーク、お前はちょっと責め過ぎだぞ。

 お前のが発言するたびにリタがビクンビクンしてるじゃねぇか。

 流石に見た目幼女が怯えた姿を見るのは……そうだ!


「なぁジーク、瞬間移動のやり方教えてくれよ」

「……ユート、一瞬で移動する技の事を言ってるのかい?」

「あぁ、それだ。結構便利そうだからな」

「なるほど、『縮地』のやり方か……」


 お?そんな名前なの?

 ……なんか、聞いたことがあるような、ないような。


「教えるのはかまわないけど、その前にダートに聞いた方が良いよ。僕もダートに教えて貰って身に着けた技術なんだ。彼の方が理解が深いはずだ。もっとも、本人は出来ないみたいだけどね」


 え?マジ?

 あの子はマジで物知り博士か何かなの?

 物知りだけど自分は出来ないとか、ラーズ可愛すぎか?


「ほう?ワシも知りたいのうそれは」

「……今まさに一瞬でここまで来た爺さんが何を言ってる。それに早く動けたんならさっさと来いよ」


 おせぇよジジイ!

 ほら、さっさとあの二人を止めろよ。

 俺が減らせたのはジーク1人分だけだ。

 あ、似非ロリが半泣きになってる。


「そう睨むでない、色々考える時間か欲しかったのじゃ。……して、どうすれば良いのじゃ?ここで拷問するか、それとも場所を変えるか。他には何かあるかの?」

「『この部屋から出さずに、そいつをここで殺す』それが条件だな。他はどうでも良い」

「ふむ、殺すのは絶対じゃと?」

「絶対だ。あ、あと今日中で頼むな。今日は絶対に早く帰りたい」


 そんでもってラーズに「おかえり」って言ってもらうんだ!

 うわっ、夫婦かよ。……夫婦になりたい。


「それは、難しいのではないかのぅ?」


 え?俺、ラーズと夫婦になれないの?そんなぁ……。

 いや、なれるよ?俺はラーズと夫婦になれるよな?

 というかなるよ?なってやるぜ!

 うおおぉぉぉやってやんぜええええぇぇぇぇ!


 で、何が難しいんだ爺さん。

 まったく、発言のタイミングが良すぎて動揺しちまったじゃねーか。


「何が難しいんだ?」

「いや、拷問するにしてもすぐにしゃべるとは限らんからのう。今日一日というのは……」


 俺みたいにミエなければそうだよな。

 けどな、爺さん


「俺が手伝うから大丈夫だ。さっさと終わりにするぞ。何が聞きたい?」


 概ねどういう計画だったのかはミテわかっている。

 特別な強力者もいないようだ。コイツと向こうに居る正義感()とその親を殺せばとりあえずは終わりだ。

 まったく、貴族の権力争いをする奴は馬鹿しかいないのか?……いないんだろうな。


 こいつらはきっと「自分以外の人間」に価値を見出していない。

 だから簡単に「反逆罪だぜヒャッハー」って言えるし、一般人が巻き込まれることを何とも思って無いんだ。

 あぁ、ぶっ殺したい。

 貴族とか死ねばいいのに。


「ふむ?そんなことが出来るのか?いや、そうじゃの、では――」

「その前に、関係ない者は部屋の外に出すべき。あまり聞かせるべきではない」


 せやなリズ姉さん。

 さすがに同僚の悲鳴なんて護衛達に聞かせらんないよね。


 ダメだな。どうもキレてるとそんな事にすら気が付かねぇ。

 そして、護衛が完全に怯えきってやがる。

 俺がそんなに怖いか。……怖いよな。

 俺が「殺す」って言った途端、実際に1人死んでるもんな。直接何かしたわけでもないのに。

 周りから見てたらそりゃ、怖いよ。うん。

 俺の反感を買ったら、次は自分たちが殺されるんじゃないかって思うよな。

 俺、かなり危険な人物じゃね?


 ……本当にどうして俺は、この世界に来てからはこんなに短気なのかね?

 すぐにキレるし、すぐ殺そうとする。考えが危険すぎる。

 ストレス社会に生きる日本人として、一定以上の忍耐力は持ってる自覚があったんだがな。

 ……ただの高校生だったけどさ。多少はあったよ?……あったかな?

 あれ?俺に何かしてきた奴には報復してた記憶しかねぇ!?


 これが俺の人間性だったか……。いや、でも殺しは今日が初めてだ。

 そこに転がってる死体が初めて。俺の殺した人間だ。

 昨日は、いや、これまでの人生でも誰も殺してないはず。

 そういえば、昨日の強盗はあの後、ラーズが殺しちゃったのかな?



 力があると、人を殺したくなるのか?そういう意味では、ラーズも貴族と同じなのか?

 ……どうなんだろうな。少なくともラーズは一般人の殺人はしてないよな?

 帰ったら聞こうかな……。


「そうだね、護衛の人達は、僕と一緒に部屋の外に行こうか」

「待つのじゃジーク。これから、お前には手伝ってもらうことになるかもしれん。お前も聞いてゆけ」

「そうね、協力者を殺していかないとだもの。聞いていきなさいよ。今度は私もちゃんと手伝うわ」

「……一度、首を突っ込んだ出来事だしね。そういうことなら僕も手伝うよディア。あ、勝手に決めちゃったけど僕も聞いていて良いのかいユート?」

「『この部屋から出さずに、そいつをここで殺す』ことと『今日中に終わらす』ことが出来るなら何でも良いさ。それと、殺さなきゃいけないのはこいつと、向こうで気絶してるセラード家?の二人ぐらいだと思うぞ?……あの二人も起こして拷問しないとな何か知ってるかもしれん」


 協力者を殺していかないと、か……。この世界の常識はどうなってんのよ。

 マジで力こそがパワーの世界かよ。

 そんでもって「ディア」ってのはハーディア様の愛称か。……安直過ぎない?わかりやすくていいけど。


「では、護衛達は全員外に出て貰うかの。ユート殿、確認しておきたいのじゃが、こ奴らの中には首謀者が居たりはしないのかの?」


 おい、爺さん。そんなこと言ったら護衛が泣いちゃうだろ?

 ほ~ら、みんな俺から視線を逸らすじゃないか。確認はしといてやるけどよ。

 ……よし、全員俺を怖がってるだけだな!悲しいけど自業自得だな!

 はぁ、日本では基本的に嫌われ者だったから、こっちではそうならないようにしたかったんだがな……。

 結局「どんな環境でも嫌われ者になる性格の男」ってことだよな俺。


 セラード家の護衛はジークの方が俺よりも怖いみたいだけどな。

 俺もかなり怖がられてるみたいだ……。


「大丈夫だ、こいつらの中に内通者とか首謀者だったりする奴はいねーよ。……なぁ、ここであったことを黙っててくれんだったら、俺はあんたらに何もしねーからそんなに怯えないでくれよ」


 無言で「首がとんでくんじゃないか?」と心配になる程、勢いよくうなずく護衛達。

 ……安心させるはずだったんだけど逆効果だったか。

 おとといの幼女の時も失敗してるしな、俺には人を安心させる才能がねぇみたいだ。


 人に嫌われる才能にステータス極振りしてんのかよ俺は……。半分は俺の性格と人間性のせいか。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「では、始めるかの」


 セラード家の護衛が、一歩も動けないぐらいビビってたので運び出すのに時間がかかった。

 今は、やっと尋問(俺が喋るだけ)が始まるところだ。

 ちなみに、リタが部屋の外に出ていこうとして、少し揉めたりもした。

 ……当主の自覚あんのかよ、この似非ロリは。


「そうだな。とりあえず、こいつらがやらかした今回の計画を話す」

「?これから拷問をして、どんな計画だったのかを話させるのではないのか?」

「早く帰りたいって言ったろ?細かい事は気にすんなよ。ちゃんと俺にも成否の魔眼が聞くようにしてやるからさ、爺さんは俺がウソついているかの確認だけしてれば良い。質問は後でまとめてな」


 言いながら「邪眼封じの指輪」を外す。


「わかった、では話してもらえるか」

「あぁ、事の発端は……」




 まとめると、今回の騒動の原因は「リタという似非ロリ当主がきちんとしていなかったから」だと、俺は判断した。


 さっき俺が殺したの男と、リズ姉さんに治療をしてもらってから、今も反抗的な目をしているこの男は この街を治めていたセラード家(・・・・・・・・・・)の人間だった。

 この二人だけは重装備だった理由は「実際に偉い人間」だったからみたいだ。

 そして、この街でいずれ当主になるはずだった男達でもある。


 そこに現れたのが国から派遣された『魔物を寄せ付けない結界』を張れる似非ロリとその姉妹の貴族。

 当然、魔物の脅威にさらされるこの世界ではとても重宝される能力だ。

 リタは国王に命じられ『フロード家』の人間として、この街で当主になった。

 ……当時、この土地で当主をしていたゴルドフを「当主の座」から引きずり降ろして。

 ここまでなら、対したことではない。時々聞くような話だからな。

 それに、俺の居た世界よりも力がすべての世の中だ。

 理不尽だが、仕方ないさ、力のなかったゴルドフ達が悪い。


 ただ、こっからが面倒だ。――主に似非ロリのせいで。


 国王はその後、辺境の土地ではあるが、セラード家に当主をさせるつもりだった。

 それを「その話はなかったことにしてください」と似非ロリが言い、国王はそれを受け入れた。

 完全にアホである。ここまででもう察しがついてしまう。

 そんなの、反乱起こしまくりだろ。

 『力』を手にしたら。


「ここまでで、俺が確認したいんだけど、何で『セラード家』を引き止めた訳?」


 若干イライラしながら似非ロリに訊ねる。

 あぁ、リアルでの「アホの子」はただただ、腹が立つだけなんだな。

 おかげで1つ賢くなった。

 やっぱり、二次元とラーズは最高だったか。


 似非ロリは答える。


「辺境の土地では生きていくのは大変です。魔物に街ごと襲われることもあるそうです。それなら、当主になれなくてもこの街で貴族として生きていけば……」


 うん、優しさからくるアホみたいな答え。

 「アホの子」属性がそこそこに好きな俺でもぶん殴りたくなるアホな回答である。

 馬鹿かこの似非ロリは?思考までロリってんのかよ。


「どう思うあんた?俺は同じ立場だったら間違いなく惨めな気分になるし、惨めな思いをたくさんすると思うんだが、実際はどうだったんだ?」


 俺は痛めつけた男に尋ねる。

 ぎりぎりと歯をならしながら、男は答える。

 そうだよな、悔しいはずだ。


「お前の言う通りだ……俺たちは惨めな思いをした。いっそ、辺境の地にとばされた方が何倍もマシだった。……出会って一日もしないお前が分かるのに……そんなこともわからない、そこの、そこに居る馬鹿な小娘が!安い同情でこの街に縛りつけたせいで!俺は!セラード家は!貴族の意地も誇りも全部奪われた!」

「え……そんな…私は、そんなつもりは……」

「その態度だ!何で自分のやらかしたことがわかってないんだ!このお飾り当主が!俺たちを蹴落としておいて何でお前みたいな馬鹿が……」

「俺が説明してやるから、その辺にしておけ。じゃないと姉様方に殺されるぞ」


 言って俺は、姉二人を止める。

 手を出そうとするな姉二人。

 これは、似非ロリが悪い。

 そして、似非ロリが今まで馬鹿でいられた「原因」のあんたたちも悪い。

 まぁ、妹が可愛いって気持ちはわかる。俺も瀬里ちゃんを超甘やかしてたからな。

 けど、あんたたちはそれではダメだった。その妹は甘やかしちゃいけなかった。

 その似非ロリは「当主」だ。偉い人間にはそれ相応の態度が必要なんだ。


「そいつら二人もだ……お前らが居るからこんな馬鹿な小娘が……」


 そうだな、お前の気持ちはわかるさ。


 この姉二人はすごく「貴族」だ。

 特にハーディア様が。


 リズ姉?無口な貴族の娘ってゲームとかで時々いるよね?

 金持ちの家でそこそこ偉くて、心を閉ざしてる無口系ヒロインとして。

 結構好きなんだけどアレ。……リアルはどうなんかね?


 まぁ、とにかくこの姉二人が優秀過ぎた。

 だから、当主の似非ロリは「馬鹿な小娘」のままでいられた。

 今日見た感じだと、ほとんどハーディア様が「貴族」してた。

 リズ姉は普段喋んないみたいだし、実質的当主はハーディア様だったんだろう。


 うん、これは腹が立つよね。

 男のプライド的な意味で。

 「あの馬鹿な小娘より自分たちの方が当主にふさわしい」って思っちゃうよね。


 自分たちが当主になる可能性は限りなくゼロになった。

 それなのに、今の当主の娘は明らかに「能力だけ」が、評価されている小娘。

 しかも「同情」されて、ただの貴族になった。

 今まではこの街でトップの位置にいた男達だ。

 「いずれ当主になる」という教育を受けた男達なんだ。

 とても耐えられるようなものじゃない。


 今までは、自分たちより下だった貴族たちと同列……凄く居難い。

 昨日までは、下に見てたやつらと同じ立場……。

 そんなの、新天地で一番偉い立場で居られた方が何倍もマシだったはずだ。

 たとえ、どんなに危険な土地でも。死ぬようなことになっても……。


 そりゃ『力』があったら逆らうし、その当主の座を奪おうと思うよな。

 この世界は『力』がすべてなんだから。


 その『力』はゴルドフが色々と無理をして、冒険者ギルドのトップになった時、タイミング良く手元に現れた。『変異種の欠片』だった。

 突然変異を起こした魔物が2つセットで落とすそれを、『魔物の討伐隊』と仲が良かったゴルドフは手に入れた。……元、当主だからな。そういう事もある。

 『変異種の欠片』の効果は、二つ使うと魔物になれる、というシンプルかつ分かりやすいものだった。

 物知りラーズに教えて貰ったよ。

 どんな魔物になるかはランダムらしいけどな。どんなギャンブルだよ。


 とにかく、その気になったら街1つぶっ壊せるような力が手に入ったゴルドフは「セラード家」の人間に連絡して、色々と準備を始めた。


 国から派遣されていたお偉いさんであるパウロを冒険者ギルドのギルドマスターとして「魔物が来たから倒して来い」と言い、暗殺者達に殺すように依頼。……ジークが居たせいで失敗。

 金に物を言わせて様々なスクロールの回収。

 数日中に行動を起こすつもりだったが、殺したはずのパウロが戻って来た。

 そのまま、殺そうとしたら、ジークと俺が邪魔をしたせいで失敗。


 色々と突っ込みたいところが多いけどそういう事らしい。


 まず、パウロを殺そうとしたってのがわからん。

 ついでに命令がわからん。この世界のギルドマスターってどのくらい偉いんだ?

 それに昨日、ゴルドフがハーディア様のこと知らなかったのは何でかね?

 知ってたんなら「小娘」って呼んでた理由もあるし納得できるんだが。

 あの時の反応だとマジで初対面って感じだった。少なくとも成否の魔眼ではホントだった。

 ……報復する対象の顔を知らないいってどういう事だよ?

 急に冒険者ギルドのトップになろうとしたってのもな……。

 あと、欠片とスクロールの回収って都合よすぎるだろ。

 『上級の毒のスクロール』ってのは単純に作れる人が少ないので、かなり貴重らしい。

 俺がわかるだけで二枚も使ってたぞ?……三枚なのかな。最後の一枚は何のスクロールだったのかね?


 色々とおかしい気がするが、俺がミテわかったことだ。

 ウソとかはつけないし、少なくともこの男はここまでしか知らない。


「で?聞きたい事ある人はいんの?」


 誰も喋る気配がない。

 パウロは俺がウソをついてないから納得顔なのは理解できる。

 でもなジーク、何でお前も納得顔なんだ。

 お前はもう少し俺に対する信頼の仕方を考え直せ。

 俺が悪人だったらどうすんのよ?

 姉妹三人は多少ショックみたいだな。


 特に似非ロリは顔が真っ青だ


 まぁ、聞くことはないみたいだ。


 よし、それじゃぁ――。

 俺は男の方を向いて、


「あの、本当に殺すのですか?私のせいだと言うのなら――」


 なんだ?似非ロリ?

 流石に怒るぞ。

 見た目が幼女だろうが容赦しない。

 これ以上この男を生かしてどうなるんだよ?


 幼女に立場を奪われ、同情で威厳とプライドをズタズタにされ、今回の失敗で全てを失ったこの男を――。


 ここでまだ同情?

 こいつの頭には脳ミソ入ってんのか?


 ……話の通じないアホは嫌いだ。


「殺すに決まってんだろ?お前は馬鹿なのか?この似非ロリ野郎――。お前もそれで良いんだろ?」

「嫌だと言っても殺すだろう?」

「当然だろ。『この世は力がすべて』だろ?結界の1つも満足に張れなかった自分たちと親を恨んで死ね」

「……あぁ、そうだな――」

「そんな!待ってください!まだ……」


 俺は、邪眼でその男を殺してやった。



 残ったのは、二つの死体と俺の狂気だけだった。

主人公がみんな厨二知識に明るい訳ないだろ!いい加減にしろ!


ということで『縮地』を端的に説明すると「死角から素早く近寄る」っていう『技術』の1つです。実際に瞬間移動してはいませんが、主観で考えると「視界から消えた人」が急に近くに来たら『瞬間移動』したように見える。って感じですかね。


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