第四章
お久しぶりです、……といっても、応えてくれるような方がいらっしゃる訳ではないのですが。
まぁ、ご縁のある読者様との出会いを信じて、書かせて頂きます。
静かな夜だった―
黒髪の青年が楽しげに空を見上げる。
綺麗な蒼い瞳に怪しげな欲望を湛えて、ただ空を見つめていた。
「………いい加減、その気色悪い表情を止めなさい」
ふわりと青年の隣に降り立った少女が静かに命じる。
暗赤色の長い髪に紫玉色の瞳―白い肌に整い過ぎた容姿は美しい陶器の人形にも勝っている。
「……あぁ、すまない」
くつくつと笑いながら、青年は不機嫌な少女に謝る。
その様子を見て、ますます不快そうに少女は顔を顰めた。
「……そろそろ時間よ。分かってるわね?」
「あぁ」
「ならいいわ」
必要事項を確認した少女は青年に背を向け、歩みを進める。
「あ、そうだ」
ふと、思い出したかのように青年が声を上げた。
「なに?」
呼び止められた少女は、怪訝そうな表情を浮かべ、青年を見つめる。
「僕はどう行動すればいいかな?
君に要望があるなら、その通りにさせてもらうけど?」
遠くを見据え、大きく伸びをしながら、少女に尋ねる。
青年の質問があまりに馬鹿馬鹿しかったのか、少女は呆れたように溜息をつくと、
「………好きにすれば?」
そう短く、至極面倒臭そうに少女は答えた。
その答えを予期していたように、青年は声なく笑った。
しかし、少女は既にその場を立ち去り、後には厚かましい程の沈黙が居座っているばかり。
「……『好きにすれば?』か…
……全く、君らしいよ」
青年は、少女の言葉を愛おしそうに反芻し、いつも通りの不機嫌な態度を思い出し、目を細めた。
そして徐に立ち上がり、大地を覆う闇を一瞥する。
夕刻の藍色の空の向こう―
淡い一筋の白光が水底を照らすように空から降り注いでいた。
「……それじゃあ、始めよう。
歪んだ快楽と死の旋律に満ちた『殺戮祭』を」
無表情に見つめ、青年はそう呟く。
美しく儚い光は、変えられぬ運命を残し、闇に溶けていった。
~1~
夢を見ていた。
それは、とてもとても遠い昔の事だったように思う。
青く晴れ渡った大空に似つかわない程、薄暗くじめじめした空間―
何かが腐っているような臭いがした。
床には黒いシミが広がり、バラバラになった人形が転がっている。
私の瞳に映ったのはそれだけ。特に何も感じなかった。
恐怖も不快感も……何もなく、ただ空っぽだった。
背後で誰かの笑い声がする。何も分からないまま振り向いて……
「………」
目が覚めると既に日が沈んでいた。
夕刻の薄暗い空が広がっている。
「……っいたた」
徐に起き上がるが、硬い地面に寝そべっていた所為か全身を重く感じるほどの気だるさが包んでいた。
(……なんか…変な夢を見た気がする)
まだ頭がぼんやりしている。
落下した時に何処かに強くぶつけてしまったのかもしれない。
「……とにかく、早く帰ろう」
軽く制服の汚れを払って、正門に向かって乃風は歩みを進めた―
つもりだった。
「………え?」
目の前の風景を見て乃風は愕然とする。
「どう……なってるの?」
乃風が驚くのも無理はなかった。
本来そこにあるはずである正門はおろか見慣れた景色は変わり果て、
ただ鬱蒼と草の生い茂る草原があった。
呆然と佇む乃風―
薄暗い草原に生暖かい風が通り抜けてゆく。
もう何が何だか分からないですね…はい。
この話どうなるんだろうと、自分でも思います。
粗筋らしいものを一切練ってません、すみません。
行き辺りばったりな物語ですが、宜しければ今後とも宜しくお願いします<m(__)m>