デートインザパロディ
「デートインザストーリー」シリーズのキャラクター、シーン、台詞を謎パロディにした、謎ストーリーです。
登場人物とかは本編を読まないと分からないと思うので、まずは本編を読んでもらえると理解しやすいと思います。
……どう考えても真咲イヴさん用の話だよなぁ。
【デートインザファーストコンタクト1】
高校の校舎、その屋上は冬の冷たい風が吹き、せっかく太陽が温めた地面の熱を奪い去る。
金網に囲まれた冷たい閉鎖空間。そこに、田上健二は呼び出されてた。
しばらくすると、呼び出した本人である、佐藤有子がやってきた。
「突然呼び出してごめんなさい。あの、いきなりなんですけど、田上君は、好きな人とか、付き合っている人とかいますか?」
有子は少し恥ずかしそうに、健二に尋ねる。
「うん、いるよ」
「え?」
知っていた情報とは裏腹な回答に、有子は戸惑う。
「小さい頃見てたコロッケ伝説のコロッケ姫、あの子かわいかったよなぁ。今でも好きなんだよなぁ」
「……あの、できれば二次元じゃなくて三次元のほうを話してもらいたいんだけど……」
【デートインザファーストコンタクト2】
「あの、私と付き合ってください!」
とりあえず好きな人はいないという前提で、有子は健二に告白した。
「え?」
健二はその言葉に、驚いた表情を見せる。
「……ダメですか?」
有子は心の奥底にある黒い心を抑えながらダメを推す。
「うーん、ダメじゃないんだけどね。なんていうか、女の子と付き合うって言うのが面倒なんだよね。大体休日にはデート行かないといけないし、他の女の子と話してると浮気だの何だの言われるし、友達と遊ぶ時間減るし、だから彼女とかはまだ……」
健二があーだこーだ言っている間、有子は徐々に頭に血が昇り、気が付けば健二にコブラツイストを決めていた。
「だぁっ! 『俺でよければ』くらい言いなさいよ! 話が進まないでしょ!」
「ひぃっ、ギブ! ギブアップ!」
【デートインザファーストコンタクト3】
ようやくコブラツイストから解放された健二は、「ひどい目にあった」と心の中で思っていた。
とりあえず付き合うことになったのだから、よろしくの一言くらいは言った方がいいだろう。
「えっと、じゃあ、これからよろしくね、佐藤さん」
「あ、あの、私のことは有子って呼んでくれませんか? 田上君のことは……」
急に恥ずかしそうに口ごもる有子。そんなに恥ずかしいことなのだろうか。
「……ホルメッツ二世って呼びたいから」
「え、ホルメ……何?(しかも二世って、一世は誰なんだ?)」
【デートインザフロントオブエントランス1】
健二は気が付くと、動物園の北口についていた。
「あれ、おかしいな」
あたりを見回すと、日曜日だというのに人一人いない。待ち合わせの花壇に向かうと、有子ではなく、別の女性が立っていた。
ひとまず、健二はその花壇の前で待つことにした。が、突然その女性が口を開く。
「ホルメッツ一世は来ませんよ。彼女はもう死んでますから」
「いやだからホルメッツって誰だよ(しかも彼女ってことは……女?)」
【デートインザモーニングタイム1】
「……夢……か?」
奇妙な夢だった。変な女が、いきなり彼女は死んだから来ないだとか言い出すなんて。
時刻は朝八時。ゆっくりとデートの準備と着替えが出来る時間だ。
とりあえず準備が済んだら朝食だ。母は早起きで、既に朝食のフランス料理フルコースが並んでいた。
「あ、健二、おはよう。母さん、今日妙に早く起きちゃって、頑張っちゃった(てへっ」
「……日本のどこに朝からフランス料理のフルコースを作る母親がいるのだ」
【デートインザフロントオブエントランス2】
「もう、健二君ひどいね。朝連絡くれるって言ったのにくれなかったでしょ?」
「あ、そういえば……」
どうやら昨夜見た夢の中で電話したのを、現実で電話したことと思い込んでしまっていたようだ。
「ごめんごめん、でもよく待ち合わせ場所がわかったね?」
そうなると、やはり有子が待ち合わせ場所を知っていたことが不思議である。時間はともかく、3箇所もある入園口のどこで待ち合わせるかなんて分からないだろう。
「えっとね、近くにいたストーカーさんに、健二君がどこで待ち合わせるのか調べてもらったの」
「ストーカー!? 一体誰の!? そしてそのストーカーは何故俺の行動が分かるのだ?」
【デートインザランチタイム1】
レストランに向かう途中、健二はふと行く手の前にいる女性に目が留まり、おもわず足が止まった。
冬の季節に似合わない、白いワンピースに白い帽子、風になびく茶色のロングヘア。どこか遠くを見ている姿。同い年くらいだろうか。あの女性は……
「……どうしたの?」
有子に声を掛けられ、はっとして振り向く。
「あ、いや何でも……」
再び女性がいた方向に目を向けたが、そこには小さい女の子がたくさんいるだけだった。
突如、有子の冷たい視線が突き刺さる。
「健二君、もしかして、ロリコン?」
「……何故そうなる?」
【デートインザランチタイム2】
健二たちが洋食店の前に着くと、既に長い列ができていた。
「あら、早めに来たのに、結構混んでるね」
たどり着いた洋食屋には、既に数組の客が入店待ちをしていた。
「ああ、このくらいだったら、多分ちょっと話をしていればすぐ入れるよ」
そういって、健二と有子は世間話をしはじめた。
――十分後――
一向に列は動かない。
「今日は忙しいのかな?」
「いや、それでも遅いような……」
――二十分後――
全く列が動かない。
ふと、有子が洋食店の前の看板を見つける。
「健二君、あそこ、定休日って書いてあるよ?」
「何で定休日の店に列ができてるんだよ(しかも稼ぎ時に定休日って……)」
【デートアフターザランチタイム】
昼食が終わり、まだ回ってないところを見ようと、午前中と同じようなテンションで有子は先に進む。
やれやれ、と口に出しながらも、有子の嬉しそうな顔に思わず頬が緩む。
「あ、あれ、健二君に似てない?」
猿山の一匹の猿を指差しながら有子が言えば、
「じゃあ、あれは有子かな」
と、健二は隣の猿を指差す。
「ウキ?」
突然、健二の隣から猿の鳴き声がした。思わず隣を見ると、先ほどまで有子がいたところに猿がいる。
「な……有子が猿になった!?」
「ねえ健二君、やっぱりこの猿、健二君にそっくりだよ」
猿山から何故か有子の声が聞こえる。猿山を見ると、有子が猿の餌付けをしてる。
「何で入れ替わってるんだよ!」
【デートインザフロントオブエントランス3】
楽しかった時間を惜しむように、これでもかというほどゆっくりと歩く。が、それでもあっという間に入園口に来てしまった。ここを通り過ぎれば、後はもう帰るだけ。
「楽しかったね」
「そうだね。じゃあ、また明日」
入園口北口を通過し、別れの言葉を交わすと、彼女は手を振りながら家路に向かっていった。
――と思うと、急に振り返り、健二に向かって話し始めた。
「健二君、また奢ってね」
そう言って有子はルンルンとスキップをしながら帰っていった。
(え、奢……って、たしかに今日は全額だしたけどさ、もう少しデート楽しかったとか、またデートしようねとか、そういうのはないのかなぁ……)
【デートインザラストコンタクト1】
「健二君、もしあの時、私以外の人から告白されてても、きっと断ってなかったよね。知ってるよ。健二君は、好きな女の子と付き合いたいんじゃなくて、ただ女の子と付き合いたいだけだって」
そういわれ、健二は確かにそうだと思った。本当に好きな人と付き合いたいのではなく、彼女がいるということだけにあこがれていたのだ。
「加藤さん、いや、有子、俺はそうは思ってないよ。俺にだって好みはあるんだ」
健二の話を、有子は静かに聴く。
「有子みたいに、ちょっと小柄で、いや別に背が高い女の子が嫌いってことじゃなくて、少しやせている方が好きだし、あ、でもぽっちゃりな子はそれはそれで魅力的かな。胸は大きいほうがすきだよ、あ、でも小さいと自分で育てるって夢があるからどっちもありかな。あと活発な女の子は好きだけど、おとなしい子もちょっと守ってあげたいって思うかな。運動が好きな子は魅力的だし、できない子はそれはそれでいっしょに向上心を上げることができるし……」
「……要するに、女の子なら誰でもいいわけね」
【デートインザラストコンタクト2】
「俺は、有子が罪を償うまで、『加藤有子の彼氏』として待っているから。だから、自首してくれ」
健二はゆっくりと加藤有子の前に歩いていく。そして、加藤有子の目の前まで近づいた。
「友達のプリンを食べたことを!」
有子は真顔で健二を見つめ、はぁ、とため息をつく。
「だめよ。あのことは、墓まで持っていくんだから」
「いや、それはきちんと話そうよ。食べられた友達、悲しんでるよきっと」
その頃、二年三組の教室。
「あ、千香ちゃん、さっきプリンって聞こえたよ?」
「成美、あんたまた食べ物のこと考えてたの?」
【デートインザラストコンタクト3】
「もう遅いよ、健二君。健二君は、本当のことを全部知っちゃったんだから。だから――」
ふと、健二の後ろから、殴られたような衝撃が走る。そして、目の前が真っ暗になる。
「さようなら、健二君。大好きだよ」
彼女の声を遠く、薄れ行く意識の中で健二は思った。
(……まさかプリンを食べた口封じをされるとは……)
【デートインザヘヴンズフィールド1】
気が付くと、健二は体育の合同授業のときにいたグラウンドの真ん中にいた。
ふと前を見ると、白いワンピースに白い帽子、風になびく茶色のロングヘアの少女がいた。何度も夢で見た、あの女性だ。
「佐藤有子は来ませんよ。この前の殺人事件で死にましたから」
彼女が言い終わるのが早いか、健二は彼女に向かって歩き出した。
「いやいや、あんたが佐藤有子さんでしょ。もうここにいるじゃないか」
「そうですか。でも佐藤有子は来ませんよ」
「佐藤さん、いい加減にしてくれないかな。君はそこにいるじゃないか」
「私の名前は佐藤優子。佐藤有子とは別人です」
「な、何だって!?」
【デートインザヘヴンズフィールド2】
夢だと思っていた健二は、いっそのことこの事態を割り切ることにした。今までいろんなことが頭にめぐり、考えるのに疲れていたのもある。
「バチが当たったのかな。初恋だった人がいるのに、特に好きじゃなかった人と付き合ったから」
「初恋の人……ですか」
「うん」
佐藤有子から視線をはずし、遠くを見る健二。
「夏の体育の合同授業のとき、一生懸命走っていた彼女を見て、なんだかどきどきして。それが、多分、初恋」
そこまで言って、健二は再び佐藤有子の方をみた。
「……いや、初恋は小さい頃にみたコロッケ伝説のコロッケ姫だから、ということは……」
突然、健二は佐藤有子をびしっと指差した。
「君の正体は、コロッケ姫だったんだね!」
「……誰です?」
【デートインザヘヴンズフィールド3】
「田上君、一つお願いがあります」
涙声になりながら、佐藤有子はかねてからの願いを告げる。
「田上君のこと、ホルメッツ三世って呼んでいいですか?私のことは……」
「うん、もちろんだよ。これからもよろしくね、ホルメッツ四世」
「ありがとう、ホルメッツ三世……」
そういうと、ホルメッツ三世とホルメッツ四世は体を抱き合った。それは、本当の意味で謎の怪電波を発する物同士が共鳴しあった瞬間だった。
【デートインザベッド】
布団に入ると、今日あった出来事、そして、過去の思い出が、少女の頭の中で蘇った。
その中で最後に思い出したのは、もうこの世にはいない、彼とのあの約束。
「健二君の嘘つき。またデート行こうねって言ったのに」
そう思った瞬間、突然少女の携帯電話が鳴り響いた。
少女は驚いて携帯電話を取る。
「あ、俺、健二。今度のデートのことなんだけど……」
「ひぃっ! アンタ誰!?」
【デートインザオーサーワールド】
謎の画家Kが、黒猫の絵を書いていた。それを見て、Fは訪ねる。
「Kさん、それは何の絵ですか?」
「ああ、君の作品に猫とか出したらどうかなって。ほら、有子とか猫かってそうじゃない?名前は『イヴ』で」
「何故その名前なんですか?」
「いや、だって逆お気に入り登録で、そういう人いたでしょ?」
「あ、たしかに。しかし……」
Fはすこし口ごもって言った。
「あの方、ハンドルネーム変えましたよ?」
「え、あ、本当だ。黒猫使えないじゃん!」
画力があれば四コマ漫画とか書きたいんですけどねぇ。
黒猫のイヴは登場するかもしれません。しないかもしれません。