元世界ランク1位 9話
ごめんなさい!5分遅れました!これでいったんストック切れます!
第2種エネルギー資源が十分にあるからあとは資源さえ集めればいい
……キュ、ゥ……
胃の腑のさらに奥底で、小さな、だが確かな主張がもう一度押し寄せる
とにかく今は手を動かそう。さっきコアが捕食した装甲じゃ足りなかったのか?
『あれはナノマシンの塊なため使えません』
なら全部駄目じゃないか!通路の壁だってすべてナノマシンで構成されている。なにか…なにかないのか?
そうだ!エンジンだ、エンジンはさすがにナノマシンじゃ作れないだろうって、エネルギー結晶に取り込まれているから使えないんだった!
『乗組員の私物です!私物!あれならばいろいろな変換できます!』
そうか、しぶつか!デブリに交じっていろいろな箱があったなあれか!
『はいそれです!』
「って!心を読むな!」
『いえ、すべて顔に書かれています』
「俺の顔はキャンパスかなにかか⁉」
『あのー、変なこと言っていて大丈夫なんですか?』
グゥゥゥゥ、リリッ!!
鋭い痛みが表情を歪ませる、内臓を雑巾のように絞り上げる。宇宙服のタイトな感触が、今はただの拷問器具でしかない
コアが出て来て触手をゆらして応援してくる
「おまえも…てつだえ…っつうの!」
なに?って表情をするタコ
顔も口すらなにのに、こんなにありありと感情が伝わってくるのすごーい!癒される~!じゃないんだよ!
睨みつけたらブルルと震えて飛び出していった
無尽蔵に放たれた触手がまるで蜘蛛の巣のようにデブリを絡みとっては取りついていく
取りつかれては消えていくデブリ、まるで初めから世界に存在しなかったかの如く
すこしデブリが哀れになった
……ズズッ、キュゥゥ……
だがそんなセンチメンタルな気持ちも便意に流される
「はや、く…いそい、で…」
コアが慌てて所定の位置に戻る
「同期確認中…製造ユニットレベルアップ可能、実行し…」
「実行」
「了解」
コアからさっきとは違う色々な色をした光の粒が機体に流れていく
強めの振動が機体を揺るし、腹にダイレクトアタックを仕掛けてくる
「スキップ!演出スキップ!」
「できませんよ、ゲームじゃありませんし」
ヘンな人っていう顔をしながら覗き込んでくる
まじであとで覚えておけよな
拳を握る手に力が入り、腕が震える
「レベルアップ完了、排泄物再処理システムを構築可能実行しま…」
「実行!」
「エラー、資源が僅かに足りません」
「うるさい!」
思いっきり台バンというか壁バンをしてしまった
手が痺れる
「緊急生産を実行、第2種エネルギー資源を変換します。実行しますか?」
「もういい!オートモードだ!すべて自動でやってくれ!」
「了解しました、オートモードに移行します」
コアが怯えてしまったが構うものか
ゴロゴロゴロ……ッ!!
もう無理!
「できました!」
シートの背部のパッチが開いて中から弾性のあるビニール製のホースが出てくる。それを前後に気を付けながら股で挟む
プアァァァァアン(天使がラッパを吹く音)
絶頂
スーツの同期もぎりぎり間に合ったようだ
だがなんだか人間として大事なものを失った気がする
「もう、疲れた…」
これ、どうやってお尻を拭くのだろうと思いながらシートにうなだれて行った
*
あれから丸一日がたった
何個かのデブリ群を回りながら順調に改造を進めてきた
文明の利器ってすごい!
あれだけ自分を苦しめた酸素だって電気があればいくらでも分解できるし、飲み水だって精製できる
ただ食糧だけはどうしようもない
できるだけ持たせようとちびちび食べているが一方的に減っていく
いつ補給できるかわからないのは不安感だけを募のらせていく
そういえば、この前引っ張り出したあれはすごいものだったらしい。カシミールがなんだ、零点エネルギーがなんだとノアが騒いでいたのがなつかしい
そういえばカシミールカレーを食べてみたいと思っていたんだったな、あれおいしいのかな?
「カシミール効果ですよ、簡単に言えば無限のエネルギーを抽出できる機器です」
「最強じゃん」
「この話、前もしましたよね?やりすぎると真空崩壊が起きるのでAI用の補助バッテリーみたいな扱いだと」
「そうだっけ?」
「そうですよ、しっかりしてください」
美少女のホログラムがぬっと近づいてくる
頭をなでようと手を伸ばすが所詮ホログラムである、手が空を切るだけである
なんか、寂しいな
ノアがいる手前、口には出せないがそろそろ人に会いたい
「まぁいいさ、おかげでここまでこれたのだからな」
感慨深い気持ちになりながら体を伸ばす
床から天井を貫くほどに巨大な、円筒形のガラスカプセル
その周囲には、血管を思わせる無数の黒い配線がのたうち回り、床一面を埋め尽くしす
その中、淡緑の培養液に浸されているのはコアである
ドクッ……、ドク……ッ
液中に浮かぶ桃色の肉は、ここでも不規則に拍動している
ズゥゥゥゥゥン……ゥゥゥゥン……
部屋全体を支配しているのは、壁際を埋め尽くす巨大なサーバー群と地を這うような排熱音だ
時折、冷却ファンが乾いた高音を立てては、再び重い唸りの中へと沈んでいく
ノアの外部演算装置だ
船を動かすには至らないが、これくらいならばたとえ中破していても真空抽出炉で余裕で維持できる
「おはよう、コア」
俺がカプセルに手を触れると、あの子は待ってましたと言わんばかりに、肉の塊をガラスに押し付けた
ぶよぶよとしたピンク色の表皮が、圧迫されて歪な形に潰れる
血管の拍動が手のひらを通じて伝わってくる
それは、獲物を締め上げるような力強さでありながら、同時に慈しむような柔らかさを持っていた
顔も瞳もないはずのその肉の塊が、どこか上目遣いで私を頼っているように感じられる
「もう間もなく次のデブリ群に到着します」
「よし、行くか、コア」
プルルとうれしそうに波打つと上面ハッチを器用に開けて這い出てくる
溶液まみれですこし、いや普通に汚いがまぁいいか
宇宙服のスラスターの扱いも、もうだいぶ慣れてきた
景色を楽しむ余裕すら出てきた
振り返ってみると遠のいていく自機の大きさに驚いた
シールド発生装置を中心にノアとコアが鎮座するアビオニクス・ベイが並列され、その後ろには課金石保管庫、エンジンと直列につながっている
手前にはコックピットと砲台が一基ついている
その性能を知らなければ勇ましく、そして頼ましく思うだろう
『レイ!前!前』
「もぅ!なに?」
なんだよ、前って。今物思いにふけっている最中だというのに…
ドアップで迫るデブリ
慌ててスラスターを吹かす
『もう!何やっているですか!集中!集中!』
コアも心配そうに震えている
かわいい
撫でようかと思ったけど、溶液まみれだったのを思い出す
「外れか…」
ヘルメットの明かりを頼りに奥へ奥へと進んでいく
どれも摩耗が激しく使い物にならなそうだ
かなり粉々に砕けている。どういう沈み方をしたらこうなるのか想像がつかない
持ってきた飲み水をすすりながら探索を続ける
もう一時間くらいたっただろうか?そろそろあきらめて帰ろうかと思ったとき、奥のほうになにか巨大なものが見えた
最後にあれだけ確認するか
漂流する鋼鉄の残骸に足をかけた
表面は熱線に焼かれ、煤と剥き出しの回路が入り混じっている
なんだろう、これ。初めて見るはずなのにどこか見覚えがある…そんな気がする
『レイ!戻って!!!それは…』
直後、足裏から心臓を突き抜けるような、重苦しい駆動音が響く
装甲の奥底、凍てついたレンズの向こう側で、緑色の燐光が頼りなく瞬く
「あ、やべ、これって…」
俺を認識したそのレンズが、ピントを合わせるように不気味な機械音を立てて絞り込まれる
緑の光は沸騰する血のような鮮紅色へと塗りつぶされ、赤の光が私のバイザーを赤々と染め上げた
「ノア!ヘルプゥゥゥゥウウウウ!」
永い沈黙を破り、首関節の駆動モーターが空間を震わせる
それは挨拶ではなく、侵入者を排除するための、機械仕掛けの咆哮だ
情報の補填
真空抽出炉:カシミール効果の原理を応用し、真空のゆらぎから直接零点エネルギー(Zero-Point Energy)を取り出すリアクター
現代の科学において真空崩壊は宇宙が物理法則ごと一瞬で消滅する最大の破滅シナリオとして研究されているぞ☆
ちなみに前話で出てきたAST-X合金装甲の詳細だぞ!
第1層蒸散冷却:プラズマの熱を蒸気として逃がす
第2層光学反射:レーザーを乱反射・鏡面反射する
第3層磁気拘束:電磁誘導でプラズマの粒子を逸らす
第4層自己修復・構造維持:上記の層を常に再構築・資源供給する
でできた複合装甲だぞ☆




