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8/9

元世界ランク1位 8話

重厚な隔壁が軋みを上げて開いた瞬間、網膜を焼くほどの眩さに視界が塗りつぶされる

「…これは」

そこに広がっていたのは、機関室ではない

幾千ものプリズムが重なり合ったようなその結晶の森

排出され損ねた膨大なエネルギーが浸食し、増殖した、純白と蒼焔の結晶体

NELでも高額なリアルマネーで取引されることから課金石とも呼ばれたそれ

狂おしいほどに美しい

エンジンの鼓動はすでに絶え、ただ高純度なエネルギーが放つ「キィィィン」という耳鳴りのような高周波だけが、真空を伝わって俺の魂を震わせる

その凍てつくような冷たさを放つ光に惹かれ手を伸ばす


バギィィィィィイイン!


稲妻のような光の筋が脈動し、手をはじく

「お宝キタァァァァァァアアアア!」

『警告、酸素濃度低下、直ちに帰還してください』

やべ、帰り道分かんねぇ!!


さてどうしたものか

「コアの帰還を確認、同期開始します…エネルギー資源1%、バッテリー量1%、第2種エネルギー資源10スペクター…バッテリー量の回復を申請」

「許諾」

「第2種エネルギーを電力に変換します」

コアの触手から光る粒子が血脈を通して自機に送られていく

栄養バーを齧りながら呆然とノアの報告を聞く

「バッテリー量、急速回復。10分後にフルチャージされます」

復活するホログラム

左手でヘルメットを操作し口元にストローをもってくる

「俺はあれを持っていくぞ!」

「あれとは何ですか?」

ストローから勢いよく水を吸い込んだ

「あれだよあれ!」

コックピットの上で仁王立ちになり指さした、壁の向こうにあるであろう蒼焔の結晶体を

「無理です」

「無理じゃない!やるんだよ!」

「はぁ…」

「そんなかわいそうな目で見るな!」

ここで逃したらもう二度相まみれないかもしれない。それほど貴重なのである

「ですが方法がありません」

「ある!周りの要らない装甲を削って、あれにエンジンを取り付ければほら完成!ね、簡単でしょ?」

「だれがやるんですか?」

「ん?ノアだよ」

「だから、誰がやるんですか!」

「だから、ノアだってば」

なぜだろう、ため息をつかれる幻聴が聞こえる


「一旦落ち着いて状況を整理しましょう」

「うむ、そうだな」

「まず我々の最優先目標は何ですか?」

「もちろん、生存だ。無人機に見つからない様にエンジンの燃料を集め、再起動させる」

「ですね。次点の目標は何ですか?」

「うむ、そうだな。まずは物質変換装置を作りたい」

物質変換装置、名前は禍々しいがようはコアのパワーアップ装置である

これがあれば素材をばらしたり、装備を自機に装備することができるようになる

NELの醍醐味であり、いろいろなパーツ、素材を集めることでコアを守る旗艦を強くしていくのだ

「作る船の方向性はどうします?」

だが問題はここからどうするかである。NELではいろんなプレイスタイルを試したが一番しっくり来たのが突撃してトリガーハッピーになることだった。我ながらイカれているな…

だが今更プレイスタイルを変えるつもりはない。下手に慣れていないことをすればそれこそ蜂の巣待ったなしである


「ここでの死は文字通り死を意味します。慎重に遠距離からのチクチク攻撃をされてはいかがですか?」

チクチク攻撃か…一番嫌いで鬱陶しいやつだな

「やるとするならば長射程を持った狙撃艦、機雷や罠を利用する。または電子戦特化のミサイル艦か」

「距離が離れすぎますと散乱、重力の影響で威力、命中率ともに終わります。電子戦艦ですが私と同等のスペックのAIをつんだ艦隊に囲まれれば終わりです」

「いや、これノアの提案なんですけど」

「極端が過ぎますよ、HAC戦とは違います。私が言いたいのは重巡洋艦や戦艦となり、攻守共に優れた船で十分な安全マージンを取りましょうということです」

「戦艦か…」


ニヤリといやらしい笑みが浮かぶ

思い出すな!戦艦で潜伏し敵艦隊を2人で内側から食い破っていた日々を…あれは最高だった!あれから熱心なファンから何通もの”ラブレター”が届いたものだ

「いいね!」

「前言撤回、やっぱりよくないです」

「おいおいなんでだよ、せっかく面白くなりそうだっていうのに」

「あれはシオリ様がいて初めて成立します」

言われてみればそうだな。彼女は電子戦艦として互いに支えあった。だからこそあそこまで暴れられたのだろう


「そうか、澪がいないということは電子防御がないということか」

まずいな、今度はあの理不尽を受ける側に回るということか…。目を失い、徐々に手足の感覚がなくなっていくあの感覚、想像しただけで鳥肌が立つ

「電子防御は必須だな」

「マスター、私がいますよ!」

そんな自慢気な顔をされても…ホログラムにチョップを入れたくなる

「おまえなー、もし相手にシオリと同格の敵がいたらどうするんだ」

「死にます」

なにをあっけらかんと言っているんだこいつは…駄メイドに降格だなこりゃ


「電子防御に必要な装置は?」

溜息を飲み込み、俺は話を進めた

「はい、電子防御と言いますが、攻撃が最大の防御です。攻撃を受けた場合物理的に切り離す以外なすすべはありませんからね。ですので電子戦艦に搭載される武器が必要になります。例えばステレス装甲、多種類の強力なレーダーや検出器、高出力ジャミングユニットそしてすべての装備を最大に生かせる体力のある船です」

「可能か?」

「でしたら電子戦艦という一芸に特化した船はありません」

それもそうか。それができるならば皆そうするよな…


「取捨選択をしよう」

「ですね、そうしましょう。マスターの得意な”戦闘モード”との互換性を重用視し、フェーズドアレイレーダーと重力変数検出器に絞って生産しましょう」

「フェーズドアレイレーダーか…なんか聞き覚えあるんだよな」

「はい地球歴2000年ごろから幅広く軍用艦に使われていたのでどこかで聞いたのかもしれませんね」

「装甲は?」

「そこらへんに転がっているAST-X合金でいいでしょう。バイタルパート用にAST-X/SC特殊合金がほしいですね。そういえばさっきのところにありませんでしたか?」

AST-X(Autonomous Shape Memory)合金はNEL中では広く使われていた資源を使うことで自己修復できるナノマシンの集合体である


そっとコアの方に指さす

なに?といわんげにポーズをとるタコ

「食べた」

「おい!」

「だって、だって、そんな貴重なものだと思わなかったんだもん…」

「慎重に剥がせば使える部分はきっとまだまだありますよ!ですが、これで合金中のナノマシンとの親和性は上がりましたのでよしとしましょう」

しょんぼりしていると慌てて慰めてくれた

親和性なんていう要素があったんだ…知らなかったな


「話を戻しますが、武装の方向性をどうしますか?」

「いつも通り、敵の中に突っ込んで俺TUEEEEしたいんだけど、だめ?」

「なんなんですか?この死にたがりは!!」

「おーい、口に出ているよ」

「失礼」

「えーでも、急に変なことしても。生かせる自信、僕ちんないな~」

ノアが大きくため息をつきながらこめかみを押さえる

君本当にAIだよね?

「わかりました。折衷案です、装甲マシマシ、加速度マシマシならいいでしょう」

何そのごってりとしたラーメンは?たぶん、ていうか絶対明日ニンニク臭くなる奴やん


「装甲マシマシだと重くなって加速できなくない?」

「そこでこれですよレイ!テッテレーシールド発生装置~」

うん、いつのまに猫型ロボットになったのだ?

船体を強い衝撃が揺らす

慌ててハッチを掴む

危うく振り落とされるところだた

「どこでそんなもの見つけてきたの⁉」

「ふふん」

頬っぺたつねってやろうか。まぁさわれないんだけれども


「だからあんなに電力が減っていたのか」

そこには自機より大きい、20mほどの先端に球体が付いた棒があった

「なにこれ?」

「巡洋艦のシールド発生装置の部品の一つです」

これで部品に過ぎないのか。本体がどれくらいでかいのか想像がつかない

「それで、こんなのどうするの⁉元あった場所に戻してきなさい!」

「えー!」

ブーブー言われても困る。というかこれをどう持っていくというのだ?

先ほどまで自分が40m四方の立方体をもっていこうと騒いだのをとっくに忘れているレイ


「これ一つで船のシールドを賄えるのですよ!」

「わかった、わかったから」

「さー今度こそ本題に入りましょう。武装はどうしますか?」

「うーん、普通に初期装備でいいんじゃないかな?製造コストも低いし、エネルギーゲインが十分じゃないからね」

「V-GNN A1(Variable-Gunnery Attack 1)ですね。わかりました」

V-GNNは一般的な初期装備であり2つのモードを使い分けて戦う主砲である。片方は短射程、速射式の豆鉄砲であり、もう片方はチャージ式の中射程で低威力のただの的である。というのも速射モードでは拡散が激しく、チャージ中は動けないからである。ただの産廃であるが初期装備というのはだいたいそういうものである


「サブウェポンはいかがなさいますか?」

「無難にアンカーにしようか」

「わかりました」

「それじゃ、製造を開始してくれ」

「え?無理ですよ」

「え?」

え?…


「製造ユニットのレベルが足りません」

「ねー、あの僕ちん、トイレに行きたいな…」

「ありませんよ、トイレ」

「え?」

……キュ、ゥ……

お腹の奥底が確かな主張を始めた

これは、大きいぞ!

俺は耐えられるのか?この便意に!

ラブレター:スラングでDMで罵詈雑言を送り付けること

ちなみに突っ込まれそうなので一言、ノアは公私をしっかり区別できるAIです。公の時はマスター、私の時はレイ、独り言の時は君と呼び方が分かれます

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