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元世界ランク1位 2話

レバーを握る手が震える

高速に流れていくコメント、ちらりと配信画面を覗くと同時接続数が5000人に迫る勢いだ

私がここまでこれたのは純粋に運があったとしか言いようがないだろう

SNSのフォロワー数もあまり伸びず、そろそろやめようかと思ったその時だった、スターライトのオファーが来たのは。どうやら自社ブランド兵器の宣伝をしてほしいらしい。正直怪しい、でも乗るしかなかった

私は片田舎で終わる器ではないのだから!

『セレナねえさん?』

「大丈夫よルナ!私たちならいけるわ!そうでしょ皆さん!」


・ルナちゃんかわいい!

・ボコボコにしちまえ!

・努力を金の力で押しつぶせ!

・これで、レイの奴もおとなしくなるかな

・これでシオリは俺のものだ

・¥2000勝利おめでとう!


「スパーチャットありがとうございます!だめですよ、まだ始まってないんですから。まぁ結果は明らかですけどね」


・セレナちゃんさすが!

・かっこいい!


ぽつぽつと対戦相手の名前も挙がってくる。やはりタイトル保持者はタイトル保持者だろう。私の踏み台になるのにちょうどいい

装備状況を確認するだけでもニヤニヤが止まらない。圧倒的シールド量に自動追尾方の高出力型レーザービット6基、ジェネレーター直結型中性子ビーム砲これらが機体の動き含めすべて自動で攻撃してくれる。私は必死に戦う演技をすればいい簡単なお仕事。うん、最高!

ちなみに完全にチート行為でBAN対象であることを彼女は気が付いていない

モニターの左側を見てみるとルナの機体がカタパルトに接続された

その姿形は正しく聖騎士。私の機体より小さめだが電子戦機であるため当然と言えば当然である。大量のミサイルを内蔵するほか、天使のような翼が強力なジャミング効果を与える。そして何よりその手に握られる新兵器、装甲を無視して中の基盤やプレイヤーに直接攻撃をする。うん、最高!負け方を教えてほしいくらいだわ

「オッホッホッホ」

『急に高笑いしないで、怖い』

「大丈夫ですわ、ただの発作です」

『だから怖い』


モニターのカウントダウンが0を表示する

カタパルトが火花を散らしながら機体を前に押し出す

慣性でシートに強く押し付けられるがすぐに緩和される

景色がガラッと満面の星空に変わる

マップはアステロイドベルトの端、大量の岩石が点在する危険地帯


適当な岩にピンを指し、張り付く

後ろを見るとルナの機体が追従してくる

「さて、相手の出方を伺いますか」

ルナが敵を見つけるまで待てばいい、そしたらあとは焼くなり煮るなりすきにすればいい



『だめね、岩石のせいでうまく見つけられないみたい』

「少し前に出ましょ」

画面に代わり映えがないせいで視聴者が飽き始めている

一つ前の岩石にピンを立て、ブースターを吹かす

『まって、セレナねえさん、ミサイル反応5、3時下』

えーとルナから見て3時だからこっちの方かな

こっちのレーダーでは全く捉えれてないな、さすが電子戦機


『迎撃ミサイル10、発射』

ルナの左肩が開き中から小型ミサイルが放たれる

「どう?場所分かりそう?」

『うーん、どうだろう?ミサイルだからね』

ふーん、まー直進しないしそう簡単に分からないか


『な!迎撃失敗、なおも接近中』

「私のレーダーも捉えた」

ビットが自動で選択され周囲に展開する

射撃

青きレーザーが放たれ、モニターの一部を青白く染める

遠くの方で爆発が見える

「やったか?」

『迎撃1、ちがう、この動きミサイルじゃない!』

おいおい、レーザーを避けるってなんだよ。光速で進んでいるんだぞ…


機体が急加速する

シートに押し付けられ、呻き声を上げそうになった

後ろを見るとルナの機体が遮蔽に隠れながら下がっていくのが見えた

さすがに憶病じゃないのか?AIにも臆病とかあるんだな

レーダーを見ると敵ミサイルとの距離が一気に縮むのを感じる


一斉射撃


6発のレーザーが囲み、ビームが仕留める

レーダーを確認する

「あと、ひとつ」

唐突にスピーカーから爆音が流れる

オープン通信か

腹に伝わる振動、気持ち悪い

『やぁ、嬢ちゃん散歩ちゅうかい?』


岩石の後ろから急に機体が飛び出し、ドアップでツインアイが映る

ビットが相手を囲もうと敵に迫る

『おっと』

可憐に体を翻し囲いを抜けたと思えば敵の火器がビットを爆散させる

「どうして!ジャミングは?」

執拗に追跡するビット

だが相手の方が上手だ

また一基補足される


撃墜


だが急に変なダンスを踊る敵

ルナのミサイル20発が通過する

『あっぶね~』

『なんで!なんで当たらないの!?』

なぜあれが見える?後ろにも目が付いているのか⁉

敵が急速に離脱していく

助かった

ほっと一息吐こうとして思い出す。まずい、あそこにはルナが!

援護に向かおうと姿勢制御する


「がはっ……!」

肺の空気がすべて抜けるような衝撃

エアバックが起動

あたり一面白い布で覆われる

後ろから蹴られたのか⁉

鼻が痛い

布が邪魔で息ができない

だが機体はお構いなしに動く

ビームサーベルを抜き背後を切りつける


ただ空を切る


『素直でちゅね~』

耳がキーンとしていて聞き取れない。だが煽られたことだけは分かる

「よくも私の大事な顔に…!」


ピー!


警告音

シールドのオバーヒートを知らせる

不快な音楽が遠のいていく

「なっ!どこへ行く!」

後ろで爆発音が疑似効果音で聞こえる


ピピ!


ビット残機1

無慈悲に現状を伝えてくる

無我夢中でレバーのボタンを押し込む

頭部バルカンを無造作に撃ちまくる

「どこにいる!出てこい卑怯者!」

中性子ビーム砲の冷却は完了している

大丈夫、この子のオートエイムなら墜とせる


『ここだよん~!』

「……っ、が……あ……」

ガツンッ、と頭に直接響く鈍い音がした

視界の端で火花が散る

頭が熱い

ドロリとした液体が視界にたれてくる

バイオセンサーにぶつかったか


ピィッ、ボォォォォン!


片腕になろうとも機体は諦めることを知らない

頭がクラクラする、鉛のように重い、機体からの振動が気持ち悪さを加速させる

仁王立ちする敵機、その手にはビームサーベルが展開される

急接近

それは正しく死を誘う者


ビーム砲を紙を切るかのごとくサーベルが撫でる

キィィィィィィン!

一拍おいて疑似効果音というよりももはや悲鳴が鳴り響く

真っ赤に加熱された断面が浮き上がり、その内側を見せる

「ごめんなんさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

発射間際だった次弾が、行き場を失ったエネルギーが臨界に達し青白い光の球へと膨れ上がる

「ゆるして…」


ズ、グガァァァァァァンッ!!


内臓を揺さぶる鈍い衝撃

機体各所にエラーランプが灯る

シートベルトが肩に食い込む

衝撃吸収ダンパーが限界を超え、コックピット全体が激しくのたうち回る

焦げ付いた回路の異臭が鼻を突く

一瞬敵が離れた


軽く息を吐く

終わったのか?


胸をなでおろそうとした瞬間、網膜を焼くような極彩色の火花がモニターを埋め尽くす

敵機のビームサーベルが吸い込まれるようにメインカメラのレンズへと突き立てられた

強化ガラスが粉砕される乾いた破裂音が、全方位スピーカーから脳髄を直接叩く

モニターの映像が、狂ったように上下へ引き裂かれ、ノイズが走り、色彩が反転する

完全な漆黒へ墜ちた


静寂


完全な静寂があたりを包む

自動的にサブカメラに切り替わる

ノイズが走る中かろうじで外の様子を拾い上げる


ピッピッピッピピピピピィィィ!


コックピットに狂ったようなミサイル接近警報が鳴り響く

大量のミサイルとともに接近してくるルナの姿を拾う

私ごと行くつもりか…さすがAIの考えることは違うな

敵機が私を掴み、旋回する

私を盾にする

ノイズの向こう側、自分を組み伏せている敵機のツインアイが、冷酷な光を放ってこちらを覗き込んでいる

装甲越しに、パイロットの卑劣な、歪んだ笑みが透けて見えるような錯覚に襲われる

直後、背面モニターが膨大な光に覆われた


ビシィィィィィィィィンッ!!


音を置き去りにした衝撃が、ルナの胸部装甲をバターのように易々と貫通する

一瞬の静寂

これは2対2だったことを今思い出す

コックピットの正面、かつてコンソールがあった場所には、直径一メートル近い巨大な穴が穿たれている

縁は赤熱してドロリと融解し、火花が狂ったように散る。そこから見えるのは、宇宙の深淵と、必死に手を伸ばしてくる妹機の姿


数拍


機体深部の核融合炉が、臨界の限界を超える

内部から競り上がる重低音が、機体フレームを内側から粉砕していく


轟沈


彼女の置き土産のミサイルが私を包む

なんかもう疲れた

真っ白い光に包まれながら最期そう思った


・は? 盾にされて誤射とかクソゲーかよ。機体性能活かせてねーじゃん

・ルナのコックピット貫通シーン、絶望顔のカットイン最高かよ

・推しの断末魔が聞ける神回

・はい、BAN確定。運営仕事しろ

・今のレーザーの貫通力見た? どこのメーカーの試作型だよこれ……

・スカートの隙間から火花見えてるの、えっちすぎて草

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