第5話 異常な視力
弓を手に入れた私は一年間矢を放ちまくった。だけど、相変わらずこれが何の訓練なのかわからなかった。
最近視力上がった気がする。なんというか……。的がデカく見える?
というか自分の目の前に的があるようで、ちょっと困ってる。
お父様は非常に親バカみたいで、百発百中になり始めている私をべた褒めしてくるし……。
そもそも、この家庭なにか隠してる気がしてきたんだよね。私の家、二階建てなんだけど、階段の下に書斎があるし。
お姉ちゃんの様子も最近おかしい。忙しいのか、家にいないことが多くなっていた。やっぱり、どこかに謎が……。
「ミカエラはすごいなぁ。今日も十発中十発。全部中心だ。さすがは、未来の最強射手だな。すごいぞー。もっとやれもっとやれ!」
「お父様……。それは、褒めすぎです……。私だって、好きでやってるわけでは……」
「それでも、君はすごい。レイラもすごいが、ミカエラの未来はきっと美しいものになるだろう。先が晴れやかな、そうだ、あの雲ひとつない大空のように!」
お父様が空を見上げたので、私も見るんだけど――たしかに、空は青かった――太陽で目が焼けてしまいそう……。
細めるわけには……。そうだ。下を向けばいいんだ。
「ミカエラ。なぜ下を見る。大空を見るのは気持ちいいことなのに、真下を向けば気持ちが沈んでしまうであろうこと……」
「そ、その……。太陽が目と鼻の先にあるようで……。空を見るのが難しいんです……」
私は、自分が今抱いている違和感を、お父様に伝えた。
「太陽が目と鼻の先? あんなにも遠く広いところを照らしているではないか」
「はい。それはその通りです。ですが……。私には、とてもじゃないほど大きく見えてしまうのです……」
なんか、涙が出てきた……。基本お父様の前では敬語なのに、どこか声震えてない? 気のせい……なのかな?
そのあとも、弓の練習したけど、思った通りにいかない。目がまだチカチカしていて、当たったのは二十発中四発……、うん悔しい。
さすがに、これはお父様も失念するよね。
指導係が『目を休めたら?』と言ったので、矢を片付けて家に入った。
「お母様ー!」
「おかえり。ミカエラ」
中ではお母様が料理していて、ブライアント領産の牛肉を焼いていた。今日はステーキだー。やったね。
でも、私って一応貴族だよね。過去に食べたヘビ肉は噛みごたえ抜群で、かつ汚れにくいけど、牛肉のステーキはちょっと……。
テーブルを見ると、どこかで見た事のあるような景色。やっぱり、なんかおかしい。なんで、私はこんなこと知ってるの?
「ミカエラ。そろそろお昼が完成するから、レイラとエルヴィンを呼んできて」
「はい。わかりました。お母様」
私はお父様のいる書斎へ移動。お父様は静かに読書してたので、一旦扉を閉めて、大きめのノック音を送りましょう!
「お父様、お昼の時間です。私はお姉ちゃんに伝えてきます」
「魔法紙の指紋が消えてないか。紙が破れてないかは確認したか?」
「問題ないと思います。では、先に食卓で待っていてください。失礼します」
書斎から出て自室に直行。お姉ちゃん宛の魔法紙を取り出し即連絡。お姉ちゃんに『お昼できたよ』と伝える。
「ミカエラ? 肉が硬くなりますよ?」
「はい。お母様。今すぐ向かいます」
私は様子を見に来たお母様と一緒に、食卓のある一階へ向かった。テーブルには、大きな牛肉のステーキ。
去年食べたヘビ肉のステーキと比べて、倍の大きさはあるだろう。正直、ヘビ肉よりも牛肉の方が好きなんだけど……。
ヘビ肉の最悪なところは、弾力が強すぎて噛みきれないこと。大きさは一口か二口サイズなのに、食べづらいのが困る。
だけど、今回は牛肉だ。小さい時――今も身体は小さい――サイコロステーキだったけど、今日からナイフォーデビュー!
ナイフォー? 内包じゃないよ? ナイフアンドフォークだよ。お父様は何故か新聞を読んでいる。じゃあ、お父様が食べ始める前に食べよう!
右手にナイフ、左手にフォーク! 装備万端。切る時は左端からスタートで、フォークで押さえてナイフギコギコ。
こういうの食べるの何年ぶりだろう? ん? 何年ぶり? 私って生まれて七年目だよね? まあ関係ないか。
とりあえず、一口大にしたのをソースに付けて食べる。甘い肉汁に、程よい硬さ。やっぱり肉は牛に尽きる。
「ミカエラはほんと変わってるな。私が教えてもいないのに、ナイフとフォークの扱いを知っているとは……」
「な、なんとなく……。こうかな? と……」
「そうかそうか。ミカエラは本当に頭が良いんだな。きっとその回転の速さは私に似たのだろう。天職はこれが活かせるものに是非ともして貰いたいものだ」
お父様は、そう言いながらステーキを切って食べる。私の天職。五歳の時から言われていることだけど、どういう意味だろう。
私は、モヤモヤする頭で続きを食べた。しばらくすると、裏手のドアが開く音。お姉ちゃんが帰ってきた!
だけど、この家では食べ終わるまで席を立ってはいけないというルールがある。これがイマイチピンと来ないんだよね……。
毎回お出迎えするのが普通でしょ。どこかで見たような物語みたいにさ。だけど、それができないのが悔しいんだよね……。
「お父様。ただいま戻りました」
お姉ちゃんが食卓の部屋にやってくるのが、背後の空気でわかる。僅かに漂う獣臭。またなにか殺してきたらしい。
どうして動物を殺すのか。それが意味わからなくて、いつも頭を悩ませていた。生態系は弱肉強食のもとにあるっていうのは……。
「ご苦労。フラン。レイラの分のステーキを用意してやってくれ」
「了解! レイラは先に座って待ってて」
「わかりました。失礼します」
お姉ちゃんが席に座る。獣臭が強くなる。それでも、彼女の腹が鳴る。私は思わず顔を見た。
「お姉ちゃん。獣臭凄いけど……」
「いずれミカエラも同じ状況になると思うわ。それだけは覚えておいて」
「わわ、私は動物なんて……。ほら可愛いし……。裏手に馬いるし……」
「そういってると、生き物が食害の原因になる。それを防ぐのも仕事のうちよ」
今では彼女は十二歳で、身長も私の頭一つ分大きい。私が姉だったら、どうしていただろう?
「レイラ。今日の収穫はどうなった?」
「はい。まず増殖中のウサギとイノシシの駆除をしました。森の中心辺りに、熊のフンも見つけましたね。まもなく冬眠から目覚める頃かと」
「そうか。厄介だな……。いくら野菜が豊作とはいえ、魚の数が減ってきている。これは、熊が襲ってくる可能性もなくはないだろう」
お父様とお姉ちゃんの会話。私だけ置いてきぼり。どうやらお姉ちゃんは、沢山動物を殺してきたらしい。
それがなんのためになるのか、イマイチわからないんだけど……。もしかしたら私もいずれ……。
「レイラ。君に重要な依頼がきた。食べ終わったら書斎に来るように」
「了解いたしました。早めに伺わせていただきます」
お姉ちゃんはそう言って、ステーキを食べ始める。口の周りが汚れてない。私は近くにあったナプキンで口元を拭いた。
よく見ると、茶色いソースがついている。私は作法がしっかりしている割には、食べ方が下手らしい……。悔しい……。
「それと、ミカエラ。実はだな……。その依頼主が眼科医をしているんだ。視力検査や精密検査をしてもらうといい」
「あ、ありがとう……ございます……」
そうしているうちに、お姉ちゃんは食べ終わっていた。私はお姉ちゃんと一緒に書斎へ向かう。
だけど、嫌な予感しかしない。どうして、この胸の苦しみの意味がわからないよ……。
激しく脈打つ心臓をどうにか止めようとしながら書斎に着くと、私とお姉ちゃんは部屋のドアをノックした。
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次回、眼科医登場!




