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転生令嬢は暗殺者となり、異世界勇者を護衛する ~動物すら殺せない公爵令嬢ですが、こんな私でも魔王は倒せますか?  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 第1章 私の新しい家族と天職

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第5話 異常な視力

 弓を手に入れた私は一年間矢を放ちまくった。だけど、相変わらずこれが何の訓練なのかわからなかった。


 最近視力上がった気がする。なんというか……。的がデカく見える?

 というか自分の目の前に的があるようで、ちょっと困ってる。


 お父様は非常に親バカみたいで、百発百中になり始めている私をべた褒めしてくるし……。


 そもそも、この家庭なにか隠してる気がしてきたんだよね。私の家、二階建てなんだけど、階段の下に書斎があるし。


 お姉ちゃんの様子も最近おかしい。忙しいのか、家にいないことが多くなっていた。やっぱり、どこかに謎が……。

 

「ミカエラはすごいなぁ。今日も十発中十発。全部中心だ。さすがは、未来の最強射手だな。すごいぞー。もっとやれもっとやれ!」


「お父様……。それは、褒めすぎです……。私だって、好きでやってるわけでは……」


「それでも、君はすごい。レイラもすごいが、ミカエラの未来はきっと美しいものになるだろう。先が晴れやかな、そうだ、あの雲ひとつない大空のように!」


 お父様が空を見上げたので、私も見るんだけど――たしかに、空は青かった――太陽で目が焼けてしまいそう……。


 細めるわけには……。そうだ。下を向けばいいんだ。


「ミカエラ。なぜ下を見る。大空を見るのは気持ちいいことなのに、真下を向けば気持ちが沈んでしまうであろうこと……」


「そ、その……。太陽が目と鼻の先にあるようで……。空を見るのが難しいんです……」


 私は、自分が今抱いている違和感を、お父様に伝えた。

 

「太陽が目と鼻の先? あんなにも遠く広いところを照らしているではないか」


「はい。それはその通りです。ですが……。私には、とてもじゃないほど大きく見えてしまうのです……」


 なんか、涙が出てきた……。基本お父様の前では敬語なのに、どこか声震えてない? 気のせい……なのかな?


 そのあとも、弓の練習したけど、思った通りにいかない。目がまだチカチカしていて、当たったのは二十発中四発……、うん悔しい。


 さすがに、これはお父様も失念するよね。

 指導係が『目を休めたら?』と言ったので、矢を片付けて家に入った。


「お母様ー!」


「おかえり。ミカエラ」

 

 中ではお母様が料理していて、ブライアント領産の牛肉を焼いていた。今日はステーキだー。やったね。


 でも、私って一応貴族だよね。過去に食べたヘビ肉は噛みごたえ抜群で、かつ汚れにくいけど、牛肉のステーキはちょっと……。

 

 テーブルを見ると、どこかで見た事のあるような景色。やっぱり、なんかおかしい。なんで、私はこんなこと知ってるの?


「ミカエラ。そろそろお昼が完成するから、レイラとエルヴィンを呼んできて」


「はい。わかりました。お母様」


 私はお父様のいる書斎へ移動。お父様は静かに読書してたので、一旦扉を閉めて、大きめのノック音を送りましょう!


「お父様、お昼の時間です。私はお姉ちゃんに伝えてきます」


「魔法紙の指紋が消えてないか。紙が破れてないかは確認したか?」

 

「問題ないと思います。では、先に食卓で待っていてください。失礼します」


 書斎から出て自室に直行。お姉ちゃん宛の魔法紙を取り出し即連絡。お姉ちゃんに『お昼できたよ』と伝える。

 

「ミカエラ? 肉が硬くなりますよ?」


「はい。お母様。今すぐ向かいます」


 私は様子を見に来たお母様と一緒に、食卓のある一階へ向かった。テーブルには、大きな牛肉のステーキ。


 去年食べたヘビ肉のステーキと比べて、倍の大きさはあるだろう。正直、ヘビ肉よりも牛肉の方が好きなんだけど……。


 ヘビ肉の最悪なところは、弾力が強すぎて噛みきれないこと。大きさは一口か二口サイズなのに、食べづらいのが困る。


 だけど、今回は牛肉だ。小さい時――今も身体は小さい――サイコロステーキだったけど、今日からナイフォーデビュー!


 ナイフォー? 内包じゃないよ? ナイフアンドフォークだよ。お父様は何故か新聞を読んでいる。じゃあ、お父様が食べ始める前に食べよう!


 右手にナイフ、左手にフォーク! 装備万端。切る時は左端からスタートで、フォークで押さえてナイフギコギコ。


 こういうの食べるの何年ぶりだろう? ん? 何年ぶり? 私って生まれて七年目だよね? まあ関係ないか。


 とりあえず、一口大にしたのをソースに付けて食べる。甘い肉汁に、程よい硬さ。やっぱり肉は牛に尽きる。


「ミカエラはほんと変わってるな。私が教えてもいないのに、ナイフとフォークの扱いを知っているとは……」


「な、なんとなく……。こうかな? と……」


「そうかそうか。ミカエラは本当に頭が良いんだな。きっとその回転の速さは私に似たのだろう。天職はこれが活かせるものに是非ともして貰いたいものだ」


 お父様は、そう言いながらステーキを切って食べる。私の天職。五歳の時から言われていることだけど、どういう意味だろう。


 私は、モヤモヤする頭で続きを食べた。しばらくすると、裏手のドアが開く音。お姉ちゃんが帰ってきた!


 だけど、この家では食べ終わるまで席を立ってはいけないというルールがある。これがイマイチピンと来ないんだよね……。


 毎回お出迎えするのが普通でしょ。どこかで見たような物語みたいにさ。だけど、それができないのが悔しいんだよね……。


「お父様。ただいま戻りました」


 お姉ちゃんが食卓の部屋にやってくるのが、背後の空気でわかる。僅かに漂う獣臭。またなにか殺してきたらしい。


 どうして動物を殺すのか。それが意味わからなくて、いつも頭を悩ませていた。生態系は弱肉強食のもとにあるっていうのは……。

 

「ご苦労。フラン。レイラの分のステーキを用意してやってくれ」


「了解! レイラは先に座って待ってて」


「わかりました。失礼します」


 お姉ちゃんが席に座る。獣臭が強くなる。それでも、彼女の腹が鳴る。私は思わず顔を見た。

 

「お姉ちゃん。獣臭凄いけど……」

 

「いずれミカエラも同じ状況になると思うわ。それだけは覚えておいて」


「わわ、私は動物なんて……。ほら可愛いし……。裏手に馬いるし……」


「そういってると、生き物が食害の原因になる。それを防ぐのも仕事のうちよ」

  

 今では彼女は十二歳で、身長も私の頭一つ分大きい。私が姉だったら、どうしていただろう?


「レイラ。今日の収穫はどうなった?」


「はい。まず増殖中のウサギとイノシシの駆除をしました。森の中心辺りに、熊のフンも見つけましたね。まもなく冬眠から目覚める頃かと」


「そうか。厄介だな……。いくら野菜が豊作とはいえ、魚の数が減ってきている。これは、熊が襲ってくる可能性もなくはないだろう」


 お父様とお姉ちゃんの会話。私だけ置いてきぼり。どうやらお姉ちゃんは、沢山動物を殺してきたらしい。


 それがなんのためになるのか、イマイチわからないんだけど……。もしかしたら私もいずれ……。


「レイラ。君に重要な依頼がきた。食べ終わったら書斎に来るように」


「了解いたしました。早めに伺わせていただきます」


 お姉ちゃんはそう言って、ステーキを食べ始める。口の周りが汚れてない。私は近くにあったナプキンで口元を拭いた。


 よく見ると、茶色いソースがついている。私は作法がしっかりしている割には、食べ方が下手らしい……。悔しい……。

 

「それと、ミカエラ。実はだな……。その依頼主が眼科医をしているんだ。視力検査や精密検査をしてもらうといい」


「あ、ありがとう……ございます……」


 そうしているうちに、お姉ちゃんは食べ終わっていた。私はお姉ちゃんと一緒に書斎へ向かう。


 だけど、嫌な予感しかしない。どうして、この胸の苦しみの意味がわからないよ……。


 激しく脈打つ心臓をどうにか止めようとしながら書斎に着くと、私とお姉ちゃんは部屋のドアをノックした。

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次回、眼科医登場!

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― 新着の感想 ―
ここまで読ませていただきました。 家族とのやり取りを通して、少しずつ世界観や主人公の立場が見えてくる流れが読みやすかったです。 この先、ミカエラの才能や違和感がどう明らかになっていくのか楽しみにしてい…
・百発百中なのに、本人は困惑している ・視力向上が“才能”なのか“異常”なのか曖昧 ・食卓の何気ない描写に前世の匂いが滲む 派手な展開はないのに、じわじわ怖い。 この“静かな異変”の描き方、とても面…
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