第二章 再会
第二章 再会
桃「やっぱり来てない…」
魔樹「だね…ところで安道さんってどんな人なんだろう」
桃「わかんない、こーちゃんに特徴聞いておくんだったよ」
マクドナルドの店内を見回しながら魔樹と桃は想定内の孝治の遅刻に苦笑してシェイクを飲みながら
フライドポテトをつまんでいた
その時、肩下までの長い黒髪を細めのチェーンで束ねた背の高いスレンダーな面長の男性が店の
入り口から入ってきた
男は魔樹を見つけるとにっこり微笑みながらテーブルへと近づいてくる
安道と名乗るアンディールが…
安道「はじめまして。安道です」
突然声をかけられ魔樹は頭が痛くなる
魔樹「なんかクラクラ…す…る」
抗えぬ目眩に襲われ意識が遠のいていった
桃「ちょ、どうしたの魔樹!顔真っ青…魔樹!!!」
倒れこむ魔樹をアンディールは抱きとめると時が止まったかのように切なげに見つめて涙を流した
安道「やっと逢えた…」
桃「えっ……??」
やっと逢えたって…この人いったい…
わけのわからない安道の言動に戸惑う桃の視界に遅れてやってきた孝治が飛び込んだ
孝治「わりぃ、遅れちまったぜ…って…大丈夫かよ!!!おいっ、魔樹!!」
安道「家は…近くですか?」
桃「あ、あの、はいっ…すぐそこですけど救急車呼ばなくて大丈夫なんですか?」
意味不明な予期せぬ状況に桃はパニックに陥り今にも泣きだしそうだ
孝治「おい!医者に連れてかなくていいのかよ?」
魔樹を抱き上げた安道の瞳が一瞬、紅色に染まると孝治は金縛りにでもあったように動
けなくなる
大丈夫だよ、心配しないで…
おろおろする自分に優しく言葉をかけた安道を見あげると桃は何故か安心した
数分後…自宅に運ばれベッドに寝かされた魔樹は静かに目を覚ました
「ん…」
桃「魔樹!!魔樹!!聞こえる?」
魔樹「おねえちゃん?…何で私、寝てるの?マックにいったんじゃなかったっけ…」
桃「何言ってんのよ、あなた、安道さんが来るなり突然倒れて意識を失って…
もう!びっくりしたんだから! 安道さんが抱き上げて家まで連れてきてくれたのよっ」
魔樹「え、そうなの…ごめんなさい…迷惑かけて…」
ぼんやりする記憶のなか優しい腕に抱きしめられていた感覚がふと頭をかすめ胸がキリリと
締め付けられる
安道「何か水分をとったほうがいい」
桃「私、持ってきます!」
慌ててつんのめりながらキッチンにミネラルを取りに行った桃を孝治が追いかける
孝治「おいおい、転ぶなよ」
部屋に残された2人は何も言わずにただ互いに見つめ合った
魔樹の瞳から涙がぽろぽろと溢れて止まらない
「やだ、ごめんなさい、どうしたんだろう…私…」
安道「マキーシャ……」
苦しそうに呟く安道の呼びかけに魔樹の肩がピクリと反応する
バタン!
孝治「でぇじょぶかよ!水持って来たぜ…おいっ、何で泣いてんだよ?安道、おめぇ!
なんかしたんじゃねぇだろうな」
普段は穏やかな孝治が狼のように瞳を光らせ安道の胸倉を掴みかかる
魔樹「違うよ、こーちゃん!ちょっと頭痛くってしんどかっただけ」
孝治「ほんとかよ?」
魔樹はコクリと頷いた
孝治「悪かったな、安道、つい誤解しちまって…」
きまり悪そうに頭をポリポリかく孝治を見て安道はニヤリと口の端をあげた
安道「ビックマックとシェークとポテトで許してやるよ」
孝治「そんなんでいいのかよ?おう、食いに行くか、あ、お前らも腹へってるよな」
桃「冷凍庫に炒飯と満州の餃子があるから大丈夫、今度奢ってよ」
微笑みながら桃にそう言われた孝治と安道は魔樹たちの自宅である本城家を後にした
桃「ねえ、ほんとに大丈夫なの?」
心配そうに顔を覗き込む桃を見て魔樹は微笑みながら手を握った
魔樹「平気だよん、なんか…お腹空かない?」
桃「空いたよ~よかった~なんともなくて…さっきどうしちゃったの?」
魔樹「わかんない…安道さんがお店に現れてテーブルに近づいてきたら頭がぼぉーっと
して…」
桃「やだ、まさかかっこよくてノックダウンされちゃったの?」
魔樹「おねぇちゃんじゃないんだから」ケラケラ笑いながら否定する魔樹を見て桃は安心したように
腰を抜かした
魔樹「ちょっと!大丈夫?」
桃「安心したの!もお~寿命が百年は縮んだよ」
魔樹「Vampireじゃないんだから」
2人は笑いながら冷凍庫の炒飯と餃子を温め空腹を満たすと疲れたように眠りについた
マクドナルドの店内でビックマックに食いつく安道を見て孝治が口火を切った
孝治「本当に好きなんだな…」
安道「え…」
孝治「マック!」
安道「ああ、これで水に流すんだから有難く思えよ…それよりお前…魔樹が好きなのか?」
孝治「はぁ?」
何言ってんだ、おめぇは…そう言い返そうとして孝治は動きが止まった
応えを待つ安道の瞳孔が蛇のようにキュっと縮まり殺気に満ちて今にも噛みついてきそうだ
孝治「お前さ…焦んなよ…まだ早えだろ」
安道「知ってたのか…コージュ…」
孝治「おっと…ここでは孝治で頼むぜ、な?アンディール」
安道「俺に命令するな…ダブチも追加な…」
孝治「よく食うなぁw…まあ、何はともあれ…再会に乾杯…!」
「いや…乾杯にはまだ早い…」
安道は苦笑いしながら外に目を向けると燃え立つ炎を鎮めるように冷えたコーラを飲み干した
to be continued