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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ホラー

白いーーーをみたら、おしまいなんだよ

作者: のどあめ

見ていただきありがとうございます。

初投稿です。拙い文ですが少しでも暇つぶしに楽しんでいただけたら嬉しいです。


地下鉄の出口を抜けると襲いかかるむっとした熱気と照りつける夕陽。しばらく立ち止まり、立ち眩みをやり過ごす。


暑いな~。夕方でもまだ暑いんだ。体がアイスクリームみたいに溶けてしまいそう。下校する学生たちの波に逆らうように私は家路につく。


日がでている時間に帰るのはいつぶりだろう? こんなに暑いのならもう少し遅い時間に帰ればよかったか、と一瞬思うがいやいやと否定する。


職業柄、夜型の人間が多い。夕方を過ぎれば、ちょうど時間があるからと呼び出されて打ち合わせ、七時から会議になり、九時を過ぎたら残務処理、十一時前に上司によばれてまた打ち合わせ。こんな生活が何ヵ月も続いている。


上司は決して悪い人ではない。少し他人より真面目でタフな人なのだ。部下としてはついていくのが大変。あんなに遅くまで働いて自宅では育児疲れの奥さんの代わりに赤ちゃんの面倒みているなんて凄すぎる。こちらが文句を言いにくい分たちがわ、いやいや要領が悪い私もいけない。でも申し訳ない、もうへとへとです!


で、今日こそはと定時で帰ってきたのだ。


家に帰ってビールでも飲んで早く寝てしまいたい。そんな想いで角を曲がり坂道へ向う。 ゆるやかな坂道を上った先に我が家がある。眺望を気に入って選んだ部屋だけど今日みたいな日はいつもより遠く感じる。


ふっとすれ違った女子高生の話が耳をかすめた。


「白いーーーを見たらおしまいなんだって」


ーーーの所はよく聞き取れなかった。そういえば、一緒にお昼食べていた山中ちゃんもそんな事を言ってたな。山中ちゃん、どうしたんだろう?最近、休みが続いているのに連絡もつかないって鈴木さんが困ってたな。あんなに元気で明るい子なのにらしくない。大丈夫かしら?


帰りの電車の中でも若い子達が話していたっけ。都市伝説ではやってるのかしら。そもそも白い何?動物?白い物とかたくさんあるし、白色自体も200種類以上あるっていうじゃない。そんなことを思いながらなだらかな坂をのろのろと歩く。


そこへ

「キキッ」

と愛らしい声が聞こえた。

左側の奥に祠がある細い道。

小さなふわっふわの毛並みをした生き物が黒い瞳をくりくりしながらこちらを見つめていた。


うわ~可愛い!長いシッポをふりふりしてちょこちょこ飛び跳ねて可愛いがすぎる!

猿かな?

どこかから逃げてきたのかな?

毛がモフモフしていてさわってみたい、近くにきてくれないかしら?


そうこうするうちに猿とおぼしき生き物の姿は祠の向こうに消えてしまった。


あ~あ、いっちゃった。でも可愛いものが見られたから今日は早く帰ってきてよかった。白い生き物は神様のお使いと言うから、良いことがあるかも。ほっこりしたわ~。


さあ、家まであと少し。頑張りましょうか。元気をもらった気がして改めてなだらかな坂を歩きだす。


が。足がなかなか進まない。息切れもしてきて体が重たくてたまらない。


やっぱり疲れてるのかな。疲れてるんだよ。日頃から鍛えておけばこんなことにならないのに。


「ポツッ」


嫌だな、これから夕立?降られる前に帰らなきゃ。


地面に落ちた雨粒は黒く赤みを帯びていた。


え?誰かの血?そういえば、変な病気が流行っているとかニュースで言ってた?

そもそも飲食店の前で血痕とか衛生面で問題じゃないかしら。


早く、早く。焦れば焦るほど足が縺れるようになって上手く動かない。


「ボタッ」「ボタッ」


まだ坂道の中程。だるい身体を無理矢理動かす。


「バシャッ、バシャバシャ」


水音はますます大きくなり、気がついたら私は膝立ちをするように歩いていた。私の膝の先は。膝の先は。考えたくない。


「ボシャッ、ボシャ、ボシャ、ボシャ」


ようやく気がついた。聞こえてくる水音は私から出ていると。信じられない。信じたくない。


早く。家に帰りたい。家はもう目の前だ。あと少し。坂を登りきれば!


私は力を振り絞り這うように進む。右側に男女が数人。なぜか道端に座り込んでにやにやと笑いながら私の様子を見ている。


「グシャ」「ガシャーン」「ガシャガシャ、ガシャ」


とうとう倒れ込んでしまった。足も腕も骨ごと何もかもぐずぐずに体が溶けて崩れていく。


そういえば。

私は白い猿を見た。見てしまった。

だから、もうおしまいなんだ。


でも。


おしまいなら。


せめて


家に


帰りたかった!



悲鳴のような想いを最後に。私の視界は暗くなっていき遂に真っ暗になった。


それから。想いが強すぎたのか。

体をなくした私は。気がつけば声だけの存在になって坂道にいる。


今日も道行く人のそばによって囁く。そう、気がついて私のようにならなければよし。もし気がつかずに私のようになれば、ずっと私の側にいてくれるかもしれない。


「白いーーーを見たらおしまいなんだよ」

実際に見た夢が強烈だったので書いてみました。

禍は避けられない災害という意味を持つそうで。気がついた時にはどうにもならない事が多い気がします。


追記 7/6 まさかのホラーランキングに入りました。閲覧された方、ポイント入れて頂いた方、本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 空白部分が長いからもっと何かおっきいモノとか妄想してての「猿」 いいですねぇ。 記憶に残る夢はなるべく紙に書いて棄てろって親戚の誰かに言われたのをふと思い出しました。 これもうわさ? …
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